となりのキミ
01
肩が触れた瞬間。
隣にいるキミに甘えたくなった...
キミの背中に抱きつきたくなって手を伸ばしかけた。
あの日、ワタシはキミに恋したのかもしれない。
サヨナラが近いキミに...
(おはようございます!)
何気ないあいさつ...ドキドキ。
ワタシもキミも距離を置く。
いつもの朝なのに触れられないのが淋しく感じてしまう。
でも、これでいいのだ。
どうせ、いつかワタシは友達にもなれないガラクタになるのだから...
キミもいつか新しい恋をする、そしてワタシの名前すらおもいださないだろう。
今の会社に入社して一年が経とうとしている。
キミはドジで不器用なワタシをずっとはげましてくれていた、
仕事帰り公園で缶コーヒーを飲みながら話したことも今では少し懐かしい。
あの頃は、いい同僚であり仕事上の先輩。
ただそれだけで良かった...
土曜日の朝、アラームの音でワタシは目を覚ましキミを起こす。
(起きて!)
長いまつ毛、キミは目を擦りながらカラダを起こす。
ワタシはシーツをカラダに巻き着けて恥ずかしさを必死に隠し、バイトに出掛けるキミ
を目で追う...まるで、ご主人様を見送るネコみたい。
(まだ、寝てていいよっ)
キミは部屋の鍵を渡してきた。
(帰り閉めてね!)
メビウスとキーホルダーに記されたこの鍵は誰かに渡したかったはずのものなのだろうか...ワタシは、一瞬、元カノの事が頭をよぎった。
けれども、ソレは聞けなかった。
(がんばってね!)
キミは笑顔で出掛けて行く。
ワタシは、キミの枕に抱きつき天井を見ながら安堵していた。
(落ち着く...)
キミの部屋で迎えた二度めの朝は...
ワタシの中で何かが変わり始めていた。
窓を開けると、眩しい太陽と涼しい風がカーテンを揺らしている。
(あー、気持ちいいな。)
昨夜、キミが作ってくれた料理を思い出した。
サーモンの包み焼き、圧力鍋で煮込んだチキンと大根にイカの刺し身。
疲れているのに頑張ってくれたキミのために何かしてあげたくなったワタシは、
まず、洗濯機を回し、キッチンを片付け布団を干した...
洗濯物を干そうとベランダに出たが、竿が高すぎてピョンピョンと跳ねながら干すハメになったが、それも何故か楽しかった。
すべてが終わると、ワタシは布団を取り込もうと抱きかかえ部屋に脚を踏み入れた瞬間、ドジなワタシは足元にあった電気ポットを倒し、床を水浸しにしてしまったのだ。
(うわぁー!やっちゃった...)
即座にワタシは拭くものをさがし、ビジャビジャになったフキンを見て声をだして大笑いした。
(なんか、幸せで、楽しいな...)
そんな時間もあっと言う間に終わり、ワタシは窓を閉め部屋を後にした...
am.8:40。
坂道を下って行くワタシ、チョット寂しい時間...
好きとか、愛とかの言葉が無い関係はいつか...
それでも、ワタシは笑って受けいれるだろう。
キミの幸せのために。今は寂しいキミのために。
そんなことを想いながら、ワタシはワタシの帰る場所へと歩いてく...
02
ワタシ38歳...
キミ27歳...
キミは会社を去り、ワタシは寂しくて仕方ない。
最近では、以前より会う回数も増えたものの休みが合わなくて、どんどんワタシの
存在が薄れて行くのだろうか。
好きと言う言葉を言われると安心するワタシ、けれど一方では、この先が見えずに不安に
なってしまう事がある。
最初は、今が楽しければとお互いに言い合ってはいたものの...
嫉妬心や愛しい気持ちが膨らみすぎて怖くなってしまう。
最近、行きつけの居酒屋ができ、アットホームな感じで呑み友達も出来てそこでの時間
はキミを忘れさせてくれるが、帰るころには逢いたくて電話をしてしまう。
少し、距離を置いた方がいいのだろうか。
そしたら、お互い必要な存在なのかがわかるかなとワタシは行動にでた。
となりのキミ