夏の夜の夢
それは夏の夜に見た夢だったと思う。
海へと続く長い坂道を、古びた赤い自転車で駆け下りていく。
何でも出来る気がした。
何にだってなれる気がした。
昼の熱を帯びた夏の風が、夕暮れの優しさと混ざり合って、私の頬と髪をさらっていく。
このままどこへだって行ける気がした。
心に星屑が降り注ぐ。 溢れ出して止まらない。
ゆけ、ゆけ。My little red. そんなもんじゃないはずだ。
明日は、未来は、曇りもなく輝いている。
思いは流れ星
それを信じることしか私は知らない。
私の知らない遠くの場所で、「愛しいあなた」を探している、蝉たちの蝉時雨
ふと振り返って、立ち止まった。
いつの間にかその声は聞こえなくなっていた。
いつかこんな風に思ったことも忘れてしまうんだろうか。
うまく生きることを考えて生きるようになり
海を目指していたことも忘れて
得ては無くす 気づかないうちに手の隙間から砂が零れ落ちていく。
無くしたくなどないのに
そんな時君は現れた。
一番眩しく光る流れ星に乗って
いつまでも君と話していられたらいいのに
二人の目の前に広がる海は星空と繋がった。
そこには夢があった 希望があった
それは僕らそのものだったんだ。
美しくて 切なくて
涙が溢れるほど愛おしい
でもこの景色を二度と見ることがないことは何となく分かっていたんだ。
「ねえ、永遠を願うということは、
永遠が無いということを知っているということだよね。
君もいつかどこかへ行ってしまうんでしょう?」
私は君に尋ねてみた。
すると君は笑ってこう答えた。
「でも今確かにここに、君と僕がいる。それだけは忘れないでいて。」
そして君は私の知らない遠くの場所へ行ってしまったんだ。
一番悲しく光る流れ星に乗って。
それは夏の夜に見た夢だったと思う。
私はいつか君を忘れてしまうだろう。
でも確かにあの時の私は君との永遠を願っていた。
夏の夜の夢
自分の忘れたくないことを、文章にしました。