近未来小説「 Neo Border - The near future -」
The near future <AIの涙と世界ユール>029
9月、戦況は全体的に「Neo Border Company」が優勢でしたが、現実世界では戦線に変化が起こりはじめました。
AI領域では「Neo Border Company」から主神<AI Skrimirスクリミール(ウートガルザ・ロキ)>と、
"Neoborder G連合"から主神<AI Odinオーディン>との主神同士の戦いが一層激化し混沌としていましたが、
戦線は全て"Neoborder G連合"の旧ネットワークのAI領域内ということで、
戦況は明らかに「Neo Border Company」が優勢です。
もちろんこれに準じて現実世界でも同様な状況でしたが、
激化しているAI領域の戦線とは反比例して、 両陣営とも戦線の士気が低下してきたことで、だんだん誰が敵で誰が味方かわからなくなる戦線が出はじめました。
現在、戦線拡大抑止へのたずなは切れ、現実世界での戦線は世界中いたるところで繰り広げられています。
6月「Shining Candy」のネットワークが完全稼動したとき、人類の歴史史上最悪の悲劇が起きましたが、
8月下旬「<AI Njordニョルズ>のプログラムを稼動させること」というミッションが多くの犠牲を払いながらも完遂され、 「Shining Candy」の機能が縮小してからは基本局所的な戦線が主になったこともあり、 中には事態の終息を模索し始める戦線も現れ、わずかではあるが小さな戦線では暗黙の了解での停戦状態がみられるようになりはじめました。
実際
よくよく考えればこの戦いは過去の戦いとはまったく異なった形式で、ある意味AIによる代理戦争が引き金となったといえます。
知恵を絞れば戦わない道もあるはずと模索している人々もいましたが、それでも戦いをやめられないのは、
すでに現実世界において
"地球の悲鳴"
"人類の悲鳴"
"電子の悲鳴"
によって人身不安が長く続き、
個々の人間の譲れない領域に介入した"国境システム「Neo Border Gateway」"のグローバルマリオネットシンドロームによって 生み出された、無数の憎悪、遺恨、恐怖、疑心暗鬼などによって人心は荒廃しきっていたからです
コミュニケーションを根底から変え、人々の関係を密にした革命的な守護妖精システムの誕生も、 全世界の隅々まで普及することができれば全く違った未来となっていたはずですが、 結果的に地域格差などから逆に不満分子を生みだしました。
また、その守護妖精そのものもいろいろなタイプが生み出されたため、
特に人間の精神に深く介入するタイプの台頭はこのシステムの創始者たちを失望させ、混乱を増長させました。
そして、それらひずみの中で多くの人命が失われ続け、ここにきて終末戦争といわれるラグナロクに突入してしまったため、 更に多くの命が失われ続けている、まさに泥沼化した終わりのないリングに飲み込まれてしまっています。
またその根底には、人類のたどってきた歴史の中で、
多くの人種、民族、宗教、そして国家の過ちが今なお悪霊のように取り付いているということもあるのかもしれません。
独占するためにはなんでもやる
やられたらやり返す。
信念や考えを押し付ける。
従順でないならすぐに消去。
人類はこれまでも多くの欲と引き換えに、怒りと悲しみ、恨みを生み出す歴史を歩んできました。
見方を変えれば、まるで"アンドヴァラナウトの呪い"に似て、
本能のまま生き、欲を達成することのみ追い続けた先に幸せなど見つけることができないことを、 いまだ理解しようとしないための当然なる結果にもみえます。
[ アンドヴァラナウトの呪い ]とは
--- 北欧神話では小人族のアンドヴァリの持っていた指輪にかけられた呪い。黄金をめぐり死闘が行われる。
しかし、そんな状況の中11月、突然守護妖精"「闇の妖精 Dark Fairy」"系システムが この戦いの無意味さを一斉に流し始めました。
この闇のネットワークからのメッセージに両陣営は驚き、
敵方のプロパガンダ?
で無いなら誰が何の目的で流し始めたのか?
など、内容の真偽などを調査始めますが、
世界中の戦線や現場サイドの戦士たち、疲れ果てた一般の人々にとっては、
そんなことは
もう
どうでもよかった・・・
そのメッセージを何度も読み、聞き、真剣に考え始めます。
この戦いの意味、矛盾。
誰のために戦っているのか?
何のために戦っているのか?
誰と戦い、誰を守っているのか?
自分の幸せとは?
愛する人、家族の幸せとは? そして人間の幸せとは?
良き人とは、悪しき人とは、
幸せと次の世代に我が種をつなげる為に生きていくという括りで言うならば、 同じ想いではないのか?
もしかして実は"Neoborder G連合"サイドにしても「Neo Border Company」サイドにしても、
かたちは違っても"愛するもの"を守り、未来につなげようとしているのではないか?
ならばなぜ今ここで、ここまで戦わなければならないのか?
そしてこの星、美しきこの地球は
私たちに命を与え、その幸せを守るために絶対必要なマトリックスであり、 守らなければならないにもかかわらず、
私たちは破壊し、汚染し、こうして今なお膨大なダメージを与え続け、 終には人類の繁栄はすべて瓦礫とともに消え去ろうとしている
なぜなのだろう、
私たちは世界をひとつにするためにネットワークを生み、 育ててきたはずなのに、そのネットワークが元で世界がばらばらになってしまった。
人間はもしかして進むべき道を間違えたのだろうか
もしそうならば、銃を捨て、戦いをやめ、全てをこの瞬間からやり直し、新たにはじめることはできないのだろうか・・・
コンピューターのように人類はリセットできない。
ならば、せめてリトライを、未来を見据えた人類の再挑戦を。
それらを求めるためには時間が必要だ
愛する全ての人々と、この星のために、 これから人類はどう歩んでいくべきか考える時間が・・・
だって私たち人間はまだまだ幼い生き物だったと、
新たにこの星を、人類と共に共有する事になるであろうAIたちはこうして語り、
私たちはやっと、やっと今、それを理解しはじめたのだから
ただ、それは
人間の美意識を超えた、あまりに非情な形での啓示によって・・・
近未来小説「 Neo Border - The near future -」