スペース落語 海豚(いるか)

語るに落ちる、とはまさにこの事。

 時は22世紀、地球は念願の宇宙連合加盟を認められた。これで地球も一流の星の仲間入り、と喜んだのも束の間、宇宙連合は地球の文化にいろいろと難癖をつけ始めた。
「おい地球人よ、お前らの星の日本人とやらはイルカを喰っているらしいな」
「いけませんか」
「イルカという動物は可愛い上にたいそう頭が良いと聞く。そのような動物を殺して喰うとは言語道断、即刻止めさすのじゃ」
「ははーっ」
 いかに地球連邦の大統領と言えどもお上には逆らえぬ。連邦警察はさっそく日本人のイルカ喰いを禁止した。しかし、食い意地のはった日本人がそう簡単にイルカ喰いをあきらめる筈もございません。日本近海を網で囲ってイルカを養殖し、隠れてコソコソとイルカ喰いを続けておりました。ところが目ざとい宇宙連合、ある日突然使者を日本に送り込んで来たのでございます。
「おい日本人よ、お前らまだイルカ喰いを続けているらしいな」
「とんでもない事でございます御奉行様、お上にタテつく筈がございません」
「黙れちょこざいな地球人どもが、この宇宙連合南町奉行、遠山サターン乃介の目をごまかせると思ったか!お前らがイルカ喰いを続けている事は先刻承知しておる。宇宙連合の密偵、愚鈴非違巣(ぐりいんぴいす)から報告は受けておる」
 なんとあの愚鈴非違巣の腐れ外道どもは宇宙人だったのでございます。
「お言葉ながら御奉行様、この日本近海で飼っているのはイルカではございません」
 往生際の悪さは宇宙一、日本人はまだまだ言い逃れを続けます。
「イルカでなければあの動物は何だ」
「あの動物は豚でございます」
「何だと、豚と申すか」
「はい、海の豚、海豚(うみぶた)でございます」
「馬鹿者、そのような動物がいるか」
(終)

スペース落語 海豚(いるか)

お後がよろしいようで…。

スペース落語 海豚(いるか)

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-11

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