いるかのほし38 ワイハハ島へ!!2
ワイハハ島へ!!2
病院のベットの天井をぼんやりとながめるアーチャ・・・・・。
「ガリガリガリ・・・・・ガリガリガリ・・・・・・・・・・ガリガリ・・ガリ・・ガガ・・・・・・・・・・」
頭にあてられるドリルの音。音というより、振動そのもの・・・・・・。
明日は退院なのだが、あの時の振動が、ぼんやりするとすぐそばに蘇る。
別に嫌というわけではない・・・・。今まで、嫌という感情も、良いという感情も、その感情のずっと上空を見下ろしながら生きてきた。
感情を眺めて、感情にあえてかかわろうとしないできた。そうすることが、一番正しいように感じたから・・・・・・。
感じた感情の上空を飛び越える・・、と、どうなるか・・・・・。現実が、まき戻るのだ。要するに時間は、いつまでたっても、自分と他人の間で進まない。関係は深まらないですむのだ。そうして、生きてきた・・・・・・。
ただ、このガリガリという音は、自分と自分の関係を漠然と感じさせる力を持っている。自分が自分の中でまき戻る・・・・・。向かっていきたい全ての終わりを知りながら、すでに知っている結末を知りながら、知らないように感じてそこに向かう自分・・・。うまく言えないけど、手術のあと、ポコに言いたかったのは、こんな感覚のことだった・・・・。
自分が、頭に穴をあけること・・・。それは、すでに知っていたこと。(だから2回目って感じたんだ・・・。)ほら、この傷口からぽろぽろはがれてくる、かさぶたの感じも、本当にそうなんだ・・・。初めてじゃあない・・・!!!
「きたよ~~~。」・・と、その時、ポコとカタロが面会にきた。ぼんやりしていた、部屋の空気が、一気に現実と焦点を結ぶ・・・。
「ああ・・・。ありがとう。・・今日は、この献立食べたよ。」メニューの紙を見せながら、ベットから起き上る。
「かさぶた、どんな感じ?」自分では見えにくいので、ポコに見てもらおうとするのだが、怖がってちゃんと見てくれない。
「どれ・・・・?」タカロが、髪をかき分けて、顔を近づけてくれる。「わ。傷にそって、この字に黒くかさぶたができてる。」
こわくないんだ。という表情でカタロを見ているポコ。カタロは、小さな虫とかには、きゃーとかいうのに、こんなことは平気なんだ・・・。
「ぽろぽろと、とれてくるわ、かさぶた・・・・。」
「うん、傷、きれいにふさがってるみたいやね。」
「あさって、退院やね。明日はちょっと来れないかもしれない・・・・。」
「今ね、ピコたち、ワイハハ島に行ってるよ。無事についたみたい。」
「ワイハハ島か。ぼくらも行ければいいな。」などと、会話をして、タカロと売店にアイスを買いにゆき、ひとときして、2人は帰って行った。ワイハハ島・・・。そういえば、アーチャの母が行きたがってたな・・・・・・。
カタカタと始まった、夕飯の配膳の準備の音を聞きながら、それにしてもながい1週間だったと、アーチャは大きなあくびをした・・・・。
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