3分間のヒーロー

 『アンタ、男なのに情けないね』


 なんて言われた事が始まりだったか。

 まさか、俺がこんなに熱くなる事があったなんて思いもしなかった。

 色々あったけど、アイツに会って、俺は初めて強くなれた気がした。

 だからこそ、俺はリングの上で戦う事が出来る。

 俺のために。俺を信じてくれるアイツのために。


 『お前は良いボクサーになる。俺が言っているんだ、本当だ』

 
 俺の背中を押してくれた人。俺にボクシングの全てを教えてくれた人。

 そして、今は居ない人。

 どれだけ恩返ししても出来ないくらい、俺を強くしてくれた人。

 俺の一番の目標で、本気でぶつかる事が出来た人。


 『なんや、弱っちぃのぉ、お前』

 
 口は悪いけど、根は良い奴。

 俺の初めての親友で、初めてのライバル。

 


 こんなに恵まれた中で俺は本当の強さを手に入れることが出来た。

 なんて言うと、あの人は笑うかな?

 まだまだや、ってね。

 確かに、こんなところで満足してたら、アイツにもど突かれちまう。



 『お前はリングの上で3分間だけ、ヒーローや。思いっきりぶつかって来い!!』



 歓声が鳴り止まない。

 さて、そろそろ行きますか。ヒーローになるために。

 

3分間のヒーロー

3分間のヒーロー

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-01-04

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