3分間のヒーロー
『アンタ、男なのに情けないね』
なんて言われた事が始まりだったか。
まさか、俺がこんなに熱くなる事があったなんて思いもしなかった。
色々あったけど、アイツに会って、俺は初めて強くなれた気がした。
だからこそ、俺はリングの上で戦う事が出来る。
俺のために。俺を信じてくれるアイツのために。
『お前は良いボクサーになる。俺が言っているんだ、本当だ』
俺の背中を押してくれた人。俺にボクシングの全てを教えてくれた人。
そして、今は居ない人。
どれだけ恩返ししても出来ないくらい、俺を強くしてくれた人。
俺の一番の目標で、本気でぶつかる事が出来た人。
『なんや、弱っちぃのぉ、お前』
口は悪いけど、根は良い奴。
俺の初めての親友で、初めてのライバル。
こんなに恵まれた中で俺は本当の強さを手に入れることが出来た。
なんて言うと、あの人は笑うかな?
まだまだや、ってね。
確かに、こんなところで満足してたら、アイツにもど突かれちまう。
『お前はリングの上で3分間だけ、ヒーローや。思いっきりぶつかって来い!!』
歓声が鳴り止まない。
さて、そろそろ行きますか。ヒーローになるために。
3分間のヒーロー