【序章】meria
序章
いつもと変わらない日。
いつも通り学校へ行って、いつも通り授業を受けて、気付いたら放課後。
何も無い。けれど平和。
それがどこか物足りなくてつまらない。
いつもと同じ学校生活。
のはず、だった…。
放課後、少女は必死に校内を走り回った。
急に目の前が真っ白になり、身体を引っ張られ、何処かへ落とされたかの様な感覚と一緒に意識を失う。
だがその感覚も今はとても曖昧で、自分の身に何が起こったのか思い出す事はできなかった。
少女は考えることを諦め、顔を上げる。
雲ひとつない綺麗な青空と、広い麦畑が広がっていた。
いつも通っていた丘の上の学校もない。教室から見える向こう側の海もない。丘に沿って建ち並ぶ住宅地、そこにある自宅、丘の下の賑やかな街、全部なくなってしまった。
見慣れた景色は消え、広い広い麦畑が風に揺れている光景だけが広がっている。
見たことのないくらい美しい景色に言いようのない寂しさを感じながら少女は前を歩き出した。
少女の名は新見愛菜。
【序章】meria