近未来小説「 Neo Border - The near future -」
The near future <AIの涙と世界ユール>026
今回のミッションは複数のチームに分かれての侵入。
各チームには<AI>、各個人に<Little AI>が付いています。
各チームの<AI>とは、人間と同じ体系をしたヒューマノイドにAIがゴーストとして入っています。
各個人の<Little AI>とは守護妖精のように、
個人個人がもつモバイル機器に挿入されていて、 指示や、アドバイス、情報提供、装備の管理などを行います。
守護妖精のように立体映像機能は付いていません。
また、守護妖精のようにキャラクター性はありませんが、確実にミッションをコンプリートするための機能が完備され、
あらゆる環境や状態、外的要因などに左右されることの無いよう頑丈なシールドでカバーされており、まず壊れません。
侵入に際して各ミッションチームは、お互いの通信網は遮断されることは織り込んでいるため、
それぞれ侵入経路などからのファーストミッションをクリアすれば、独自の判断で
「<AI Njordニョルズ>のプログラムを稼動させること」
というメインミッションを遂行するように決められています。
Williamたちのチームに同行していた<AI Thorソー>は<AI Hrungnirフルングニル>と全面交戦状態に入ったため、
AI領域はもちろん、施設の電源を不安定にさせるほどで、施設内のあらゆる機器が混乱を起こし始めました。
これにより各チームはどこかのチームで大きな交戦が行われていることを知り、
強力な乱調電磁波がセキュリティヒューマノイドの活動を鈍らせたため、
防戦を強いられていた各チームは一気に反撃を開始しました。
特に退路を断たれ、セキュリティヒューマノイドの攻撃によって壊滅させられた チームを救助していたチームなどは
歓喜と共にその戦線を突破することができたのです。
そしてこの混乱の一瞬の隙間から<AI Freyフレイ>から各チームの<AI>へ、 各チームの位置、状態、心臓部の回廊ルート情報などが流されました。
これにより、最後まで入手できなかったこの施設の詳細な見取り図や、設備、セキュリティヒューマノイドの現在地を把握。
この機を逃してはならない。各チームは一気に心臓部を目指した。
最初に心臓部への巨大な回廊に到達したチームの隊長は、
このミッション全体の作戦司令官であり、Williamの好敵手・ルイ(Louis Durand)。
「Williamはまだのようだな」
回廊のゲートにメッセージを刻み突入しました。
ゲートの中の回廊には、巨大なアーチ天井があり、フレスコ画が描かれています。
あまりに大きく、空中に浮かぶようにつるされたステンドグラスは重力を無視しているようです。
「くそ・・・しかし、いくしかない」
そして、人が変わったように表情がもどる。
「最悪だが世界遺産なら別格で最高峰だな」
「みんな・・・May our fylgjur be with us」
「 さあ、いこう!」
そして隊員たちはこの幻夢のような光景の中へきえていきました。
立ち止まるわけにはいかなかった・・・
わずか遅れてWilliamたちのチームもこの回廊へ到着しました。
「あのばかが、待てないのか・」
「しかし心臓部へのルートがここ以外ないのは嫌だな」
ゲートを開け、目の前に広がる、この場にまったくふさわしくない荘厳な、そしてはるか先にのびるゴシック式回廊。
このチームに同行していた<AI Thorソー>は<AI Hrungnirフルングニル>と交戦中で、
<AI Freyフレイ>はセキュリティシステムと交戦していて、
唯一<AI Thrud スルーズ>がここにいます。
「スルーズ、どう思う?」
スルーズも様子が少しおかしいと感じたようですが、"あのばか"と早く合流しないと。
Williamは息が苦しいほどの胸騒ぎを感じていました。
<AI Thrud スルーズ>を先頭に小さく散開しながら進んでいく。
何か、何か違う。頬がぴりぴりする感じ。
とてつもなく嫌な予感がする。
Williamは最大限に神経を張りつめて進んだ。
ん、はるか先に何かある。
そう思った次の瞬間、ふっと<AI Thrud スルーズ>がつまずき、こけたのです・・・
Williamは反射的に彼の<Little AI>に命令しました
「全員の完全防護作動!」
「接触―ふせろー!」
次の瞬間ふわりと風が吹いきました・・・・・
<AI Thrud スルーズ>がとっさに叫ぶ
「C weapon !(化学兵器)です!」
各<Little AI>は瞬時に各人の完全防護装備を対BC兵器装備に変更しました。
近未来小説「 Neo Border - The near future -」