電車の中で思い消えて行くこと

電車の中で思い消えて行くこと

<往路>

山の端から
金色(こんじき)の煙が立ち昇つてゐる

太陽が現れては消え
消えては現れ

さうしてゐるうちに
煙は姿を変えてゆく


鳥に
人に
魚に
得体の知れぬものに


暫く経つと
金色は青に溶けてしまつた


誰が起こしてゐるのだらうか
あの金色の煙



<復路>

山が
あの大きな山が
白に食われてゐる

もう見えるのは
下だけだ
もしかしたら上は
無くなつてゐるのかも知れぬ

白で紺で灰である
分厚い塊が
山を食つてゐる

あの木も鉄塔もビルヂングすら

ああ、

あの塊は
世界を食つてゐるのだ

電車の中で思い消えて行くこと

音に気をつけて書いてみました。
歴史的仮名遣いなのは雰囲気です。
情景のイメージがしづらいので概要をどうぞ。

電車の中で思い消えて行くこと

往路は早朝、金色の煙は朝日に照らされた雲です。 復路は昼、山の向こうからやってくる悪天候を描写しました。白は雲です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-21

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