電車の中で思い消えて行くこと
<往路>
山の端から
金色(こんじき)の煙が立ち昇つてゐる
太陽が現れては消え
消えては現れ
さうしてゐるうちに
煙は姿を変えてゆく
鳥に
人に
魚に
得体の知れぬものに
暫く経つと
金色は青に溶けてしまつた
誰が起こしてゐるのだらうか
あの金色の煙
<復路>
山が
あの大きな山が
白に食われてゐる
もう見えるのは
下だけだ
もしかしたら上は
無くなつてゐるのかも知れぬ
白で紺で灰である
分厚い塊が
山を食つてゐる
あの木も鉄塔もビルヂングすら
ああ、
あの塊は
世界を食つてゐるのだ
電車の中で思い消えて行くこと
音に気をつけて書いてみました。
歴史的仮名遣いなのは雰囲気です。
情景のイメージがしづらいので概要をどうぞ。