子猫トンネル

シマリス

子猫トンネル
  1. 子猫との出会い♪
  2. トンネルみつけた!
  3. 子猫が、喋った!
  4. 不思議な世界のお母さん
  5. 元いた世界へ幼いお母さんとの別れ…
  6. 蒼天の空、心も謎もスッキリ♪

小さな子猫と、小さな女の子の不思議な物語です。嵐の日に偶然出会った子猫と女の子、二人の心の絆に注目して、お読みください♪最後のどんでん返しは、とても面白く感じてくだされば、作者冥利に尽きます♪

子猫との出会い♪

黙々と黒雲が空を覆ってゆく。「これは、嵐が来るかも知れんなぁ~」橋の上を、杖をつきながら行き過ぎる老人が、そう呟いた。(キンコンカンコーン)遠くの方で小学校の帰宅を促す鐘が鳴った。やがて、帰宅を急ぐ子供たちが、あたふたと橋の上を通り過ぎる。 「ねえ、魔美ちゃんのお家に30年前からスマホが、有るって聞いたけどほんとなの?」友姫は、興味深げに魔子に訊ねた。 「私も、信じられないけど、古い木箱に、かなり黒ずんだスマホが有ったのを、お母さんに見せてもらったよ。」橋のたもとで、2人は各々の自宅に向かった。片手を軽く振り、サヨナラの挨拶を交わし魔子は、橋を渡った。 雨が強さを増し、風も横なぶり
、魔子の傘も風に煽られて、バタバタと音をたてている。橋の中程まで来たとき、何処からともなく、猫の鳴き声が聞こえてきた。
魔子は小走りに橋の脇にある河川敷きの階段を下りた。折からの強い雨で嵩を増した川の水が徐々に河川敷きを埋めて行く。魔子が鳴き声の方を覗くと、橋の欄干の下に小さなダンボール箱が無造作に置かれている。子猫を驚かせないように、ゆっくりと足を進める魔子。ダンボールは強風に煽られ合わせて、河川敷きに侵食した川の水が迫っている。魔子は慌てて子猫を抱き上げ橋のたもとに、よりかかった。「子猫ちゃん、危なかったね~もうすこし、私の来るのが遅かったら川に流されてたとこだよ。」そう言って魔子は優しく子猫に微笑みかけた。 子猫も魔子の気持ちを察してか、「ミャーミヤー」と元気な鳴き声で答えた。どうやら、お腹が空いているらしく、しきりに何かをオネダリする仕草を見せる子猫。魔子は母親から、もらったなけなしの、お小遣いをポケットから出した。「子猫ちゃん、少し待っててね…」そう言うと魔子は近くのスーパーへ出来立てのコロッケを買いに走った。手早くコロッケを買い求めて、橋の下へ戻り子猫が食べやすい大きさに、ちぎって子猫に与えた。貪るようにコロッケを食べる子猫。優しく子猫の頭を撫でてあげる魔子。橋へ戻る階段の昇り口は川の水が覆ってしまっていた。

トンネルみつけた!

コロッケを食べ終わり、お腹がいっぱいになったのか、寝てしまった子猫。安心した魔子は、ふと辺りを見回すと足元まで川の水が迫っている。昇り口は、すっかり水没してしまった。大きな声で助けを呼ぶが、強い雨風で、かき消されてしまう。……『お母さん~』泣き出しそうになる魔子。 徐々に水嵩を増した水に、後退りする。欄干の真下の石の壁に寄りかかった。もう後がない。泣き出す子猫と魔子。すると壁に足を掛けてよじ登ろうとした時、石の壁に穴が開いた。 【トンネルみーつけた!】

子猫が、喋った!

橋の土台となっている、石壁がガラガラと音を発てて崩れた。丁度、小さな子供が通れるくらいの大きさ。魔子は子猫をしっかりと、ダッコしてトンネルの中へ入った。 遠くの方に出口らしき明かりが見える。小走りに出口へ駆け出す。どれくらい、走っただろうか…出口の明かりは見えるのに距離が縮まらない?入ってきた入口の方を振り向くとかなり走ったことがわかる。 中程まで来たとき魔子はペタンと座り込んでしまった。 子猫に語りかける魔子。「子猫ちゃん、なかなか、出口に着かないね…まるで出口が逃げているみたい~」 その時、何処からともなく声が聞こえた。「子猫トンネルだよ」 魔子はビックリして辺りを見回した。「誰?」すると声の主が答えた。「君の手の中にいるよ」 え!魔子は驚き子猫を見つめる…「あなたなの、今、喋ったのは?」「そうよ、わたしよ♪」魔子は不思議そうに、子猫を見つめて言った。「あなた、話ができるのね♪」子猫は首に下がっている鈴を3度鳴らすように魔子に言った。魔子は言われた通りに子猫の鈴を3度鳴らした。 すると出口がみるみる、近付いてきた。「子猫ちゃん、あなた、もしかすると魔法猫なの?」「わたしが、魔法猫ではなくて、あなたが、魔女だよ」魔子は子猫の答えに驚いたが、「そんなわけないじゃない」と笑いながら打ち消した。 「子猫ちゃん、出口はもうそこよ!」そう言うなり出口を出た。 その時、魔子は自分の目を疑った…きれいな茜空に夕焼け、遠くの方から聞こえるトフートフーのラッパの屋台。高いビルが何処にも見当たらない、見たこともない景色。三つ編みのお下げ髪の小さな女の子や学生帽を被った小さな男の子。縄跳びをしたり、お手玉をしたり、メンコをしたり、ビー玉で遊んでいる。

不思議な世界のお母さん

茫然と立ち竦む魔子。子猫が、するりと魔子の腕をすり抜けタタタと走り出す。「子猫ちゃん、どこへいくの~」魔子も後を追う。子猫がたどり着いた場所はリヤカーを引くトーフ屋台の前。しばらく、様子を見ていると、膝上丈、折り目の赤いスカートに、丸襟のブラウスを着た三つ編み。小学低学年くらいの女の子がステンレス丸い器を持ってトーフ屋台に近付いてきた。 「おじさん、トーフ一丁、ください。」明るく屈託のない幼な声が夕暮れの街に響いた。 「おや、陽子ちゃん、お母さんのお使い、いつも感心だね~」豆腐屋台のおやじが笑みを浮かべながら呟いた。 陽子?お母さんと同じ名前~魔子は咄嗟に思った。陽子は、豆腐の代金、五十円玉を渡した。魔子は、その、光景を見て不思議な気持ちになった。見たこともない街に、見たこともない五十円玉?そして見たこともない豆腐の屋台。全てが新鮮に映る。 豆腐のおやじが立ち竦む魔子の方を見て話しかけた。「お嬢ちゃん、この辺では見掛けない子だね~迷子にでもなったのかい?」心配そうな表情の豆腐のおやじと陽子。 「陽子ちゃんは、この子知ってるのかい?」 知らない子と陽子は答えた。 今度は、魔子が訊ねた。「ねぇ、おじさん、驚かないで聞いてほしいの~子猫が喋ったの!」少し興奮気味の魔子。 豆腐の屋台おやじと、陽子は顔を見合わせて笑った。「お嬢ちゃん、猫は昔から、おしゃべりと決まってるよ~」 トーフ屋台のおやじは、少し間を置いて、語り出した。「さては…お嬢ちゃんは、猫のトンネル返しにあったのかもしれんな~」そこで、横から陽子が口を挟んだ。「おじさん、猫のトンネル返して、お母さんが言ってたけど迷信みたいよ、大雨の降る日に橋の下で猫の声が聞こえたら、ちがう世界へ行っちゃう、ていうお話しだよね。」 魔子は陽子に話しかけた。「あなたが、言った通りよ~わたし、トンネルを通ってちがう世界から来たの!」 子猫が魔子に話しかけた。「ポケットにあるスマホを見せてあげたら~」 魔子はポケットからスマホを出して陽子に手渡した。陽子は不思そうに、眺めている。

元いた世界へ幼いお母さんとの別れ…

陽子は魔子に訊ねた。「これ何?新しく出た電卓かしら?」魔子は首を横に振り答えた。「これは、わたしの世界にあるスマホていう、携帯電話だよ。 でも、落としてしまって、壊れちゃったの~今は使えない…」 半信半疑の様子の陽子 は魔子に訊ねた。「あなたが、子猫と通ってきたトンネルは何処にあるの?」 魔子は後ろを振り向きトンネルの方を指さしたが、その手をゆっくりと下ろした。トンネルがあった場所には、木の橋と小川、その向こうに小高い丘が見えるだけ。 「あなた、狐にでも騙されたのかもね」陽子はそう言いながら木の橋の方を見ている。 そうこうしているうちに、雨雲が空を覆ってきた。「これは一雨来るかもしれんな」と豆腐屋台のおやじが呟いた。豆腐屋台のおやじは、新しい鉄の小銭入れを取り出し古い木の箱の小銭入れを捨てようとした。それを見ていた陽子は「その古い箱、捨てるのなら、わたしにください~」と言った。豆腐屋台のおやじは、ほらよ、と気前よく木の箱を陽子に渡した。陽子の手には壊れたスマホと古い木の箱。 その時、ゴロゴロと雷が鳴り出し雨が降りだした。豆腐屋台のおやじは、あたふたと、店仕舞いをして民家の、軒先へ入って行った。陽子ちゃん、雨が強くならないうちに、早く家へ帰りな~」豆腐屋台のおやじが声をかけた。 子猫も、もといたトンネルがあった方へ駆け出した。 慌てて、魔子も子猫を追った。「子猫ちゃん、待ってぇ~」 陽子は魔子の駆け出した後ろ姿に声をかけた。「忘れ物だよ!この電卓じゃなくて電話!」 強い雨風と雷の音で陽子の声はかき消されてしまった。強い雨で魔子の姿は見えなくなった。

蒼天の空、心も謎もスッキリ♪

強い雨が、魔子と陽子を隔てた。豆腐屋台のおやじは、横に立ってしばらく、遠くの方に目をやる陽子にポッリと呟いた。「陽子ちゃん、だいじょーぶだよ!思い出してまた、そのうち、その電卓忘れたことを思い出して取りに来るから~」それに答えて、陽子は軽くうなずいて、古い木の箱に壊れたスマホを大事にしまいこんだ。豆腐屋台のおやじと陽子の姿も、また雨の街へ吸い込まれるように消えて行った。 子猫を追う魔子の目に、 雨で霞む向こう側に、トンネルの入口らしきものが、見えてきた。「子猫ちゃん、トンネルよ!私たち元の世界に帰れるのね~」笑みを浮かべる魔子。入口のところで止まった子猫を抱き上げ、魔子はトンネルへと足を踏み入れた。子猫が魔子に話しかけた。「もう、トンネルの出方は知ってるよね♪」 魔子は軽くうなずいて、子猫の首の鈴を3度鳴らした~チリンチリンチリン たちまち、出口が近付いてきた。 あ!魔子は思い出した。「スマホを、向こうにおいてきちゃつたよ~」 そう言いながら、不安げに、後ろを振り向いた。子猫が魔子の不安を払拭するように一言「だいじょーぶだよ。お家に帰ったら、お母さんに古い木の箱を、また見せてもらいなさい~ 幼い日の、あなたのお母さんは、あなたが、必ずスマホを取りに戻ると信じて大事に取っておいてくれたんだよ~」このトンネルの出口を出ると、わたしはもう、話せなくなるからね~」 わかった、魔子はうなずいた。「子猫ちゃん、あなたと話せてとても楽しかったよ♪きっとこの思い出は一生忘れない~」そう言いながら魔子はトンネルの出口を出た。 すると、うそのように川の水が引いていた。雨風も何処に行ってしまったようだ。子猫はするりと魔子の腕をすり抜けて、河川敷きの昇り階段をピョンピョンと走って、しばらく、立ち止まり、魔子の方を振り向くとニャ~と一鳴きして、姿が見えなくなった。慌てて魔子は子猫を追った。橋の上へたどり着いた時には、もう子猫の姿はなかった。 その時、後ろから肩をポンと叩く手があった。魔子は振り向くと…それはクラスメイトの友姫だった。遠くの方で小学校の帰宅を促す鐘が鳴った。「キンコンカンコーン」蒼天の空が、どこまでもつづいていた。

子猫トンネル

作品を、読んでくださり、ありがとうございます♪この作品を書くに辺り量子理論が役にたちました。シュベリンガ―の猫という、有名な理論があります。箱に、入っている猫はふたを開けるまでは、生きてもいないし、死んでもいないという、奇妙きてれつな理論ですが、人が観察することで事象が決定されるというものです。この世の中には、まだまだ知らないことがたくさんありますね~

子猫トンネル

仔猫と少女の不思議な物語です。嵐の日に、ひょんなことから、不思議な世界へのトンネルを見つけた小学生の魔子。増水した川から助けた仔猫と、ともに、母親の子供時代へタイムスリップ~仔猫(友姫)、魔子、母親の陽子、豆腐屋台のオヤジ(冒頭で呟く老人)など読みすすめて下されば、つながりがご理解いた頂けると思います。記念の第1作品です。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 児童向け
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