嘘の上塗り
深い森に入って
さまよい
確かな道標を探してみるが
ぜんぜんみあたらない
だれかがなにか残していてくれてるはず
ぜったい何か手がかりがあるはず
歩きまわり
疲れ
もうくたくた
胸の内で問いかけるのもつらい
森のなかでずっとくらしていると
森のなかにいることさえわからなくなる
どんな環境にいるかとか
そんなことはもうどうでもよくなる
ずっとこのままここにいて
この森の外になにがあって
どんな世界があるのかなんて
気にならない
ここには自分たちでつくりだした
特別の考えがあって
ほんとうのようなうそのはなしが
まかりとおっている
事実にそぐわない考え方をしていると
それがいつの日かから
頭の中で真実味をおびてきて
それになれてしまう
そしてもう少し時間が経つと
それはみんなのなかで現実として体験されるようになる
虚偽なんだけれど事実
事実なんだけれどそれは虚偽
自分を騙し
人を騙し
国を騙す
うその世界に住み慣れると
現実になかなかもどれない
それはとてつもなくむつかしい
これまでずっと
うその上にうそをついてきたから
どれがほんとうで
どれがうそか
どこまでがほんとうで
どこからがうそか
みわけがつかない
来た道をたどって元のところへもどって
そこからもう一度やりなおしたいけれど
もうできない
おそすぎる
修復は不可能
過去の記憶はとりもどせなそうにないから
これから前を向いて
ひとつひとつほんとうのことを
つみあげていくしかない
嘘の上塗り