夏の音*前編

GReeeeNの夏の音をモチーフに書きました。前編です!

coming summer

すっかり梅雨も明けた6月下旬。
青く澄み切った空は、もうすっかり夏の空気を作り出している。


「あっつ〜…。なんでこんな暑いの〜?まだ7月なってないじゃん!」
「そう言ったってもう梅雨明けしてるってさ。天気予報でやってた。」
「マジで!?うっわ今から夏かよ…はぁ…」
「そう言えば今年って去年とかよりも暑くなるんでしょ?テレビでやってたよ。」
「ムリ。オレ絶対今年生きていけない。家から出れる気しない。引きこもりニート生活がオレを待っているんだ…さらばオレの青春…」


賑やかな様子で学校前の長い坂を下る4人。

幼馴染みの彩夏と爽太に、高校から一緒の華夜、涼介。
1年生の時に同じクラスになって意気投合し、奇跡的に2年生でも4人揃って同じクラスとなり、いわゆる『イツメン』なるものになっていた。

「夏が暑いのなんか当たり前だろ?暑さを楽しまなきゃな!」
「ちょ、爽太暑苦しいんだけど!暑さを楽しむとか何なの〜おもしろ〜」
「でも爽太君の言う通りだよ!暑いからってバテちゃダメでしょ。せっかくの夏だよ!高2の夏!華のセブンティーンだよ!!」
「華夜ちゃんが…饒舌…!めっちゃテンション高い華夜とかレアもんじゃん」
「だよね〜華夜ちゃん、楽しまなきゃ損だよな!」
「あ、じゃあさ!海行こうよ!今年!めっちゃよくない?絶対楽しいっしょ!」
「彩夏ナイス!ハイ!オレも!海に!行きます!みんなでキャーキャー騒ぎたいです!!」
「お、涼介も脱引きこもりじゃん。ハイ決定ね!今年の夏は海に行きます!」

「みんな気早くない?まだ夏休みなんかまだまだだし!その前にもっとイベントあるよ」
「え、そんななくない?スポーツ大会くらいじゃないっけ?」
「意外とそんなもん?でもスポーツ大会終わったらもう夏休み入るね」
「てか俺思ったんだけど、夏休み入ったらすぐ夏祭りだよな! 」
「そうだ!なんか足りないと思ったら夏祭りか! 楽しみだな〜」

「あ、今日はうちらお買い物寄ってくから、ここでバイバイ〜」
「また明日ね!」
「おー、またな〜」
「明日な〜」


6月下旬、夏の訪れを感じる季節。

4人の少年少女の夏は、これから始まる。

side ayaka

7月2日。今日も快晴。なんだか葉っぱが青々しく?なった気がする。

梅雨明けだ夏だと皆で騒いだのが一週間くらい前だったかな。
あの時は4人でバカみたいに騒ぎながら帰ったなあ。

でも、今日は、あの時とは違う。
華夜と涼介君は委員会の仕事と日直をサボった罰とかでまだ学校にいる。

だから、今は爽太と2人っきりな訳で。


「なあ彩夏、今度彩夏んちのお母さん誕生日だろ?いつもお世話になってますってプレゼントしたいんだけどさぁ、何がいいかな?」
「うーん、なんだろ?今度さり気なく聞いてみるね!」
「おう、さんきゅ。じゃあまた明日な」


そうやって笑うんだ、爽太は。
嬉しそうにニコニコしてさ、
―――人の気も知らないで。



誰にも言ってないし言うつもりもないけど、あたしは、アイツが――爽太が好き。
小さい頃からずっと隣にいてくれて、ずっと一緒に成長してきた。
あたしのパパママは仕事の都合で出張ばっかで、家で独りでお留守番、なんてことがしょっちゅうあった。
あたしも仕方ないことだって分かってたからワガママは言えなかったけど、ほんとはすごく心細かったし、慣れても急に不安になることが何回かあって。
でもそんな時に、爽太は何も言ってないのに家に遊びに来てくれたりして、あたしのことを気にかけてくれてた。

そんなことされて、好きになんない訳ないじゃん?―――なんてね。
まあ、あたしは好きになった。自覚したのは中3の終わり頃だった気がする。
『引っ越すことになった。今までありがとう』 そう言われた瞬間、は?って思った。
なんで行っちゃうの?なんでもっと早く言ってくれなかったの?どこに引っ越すの?
たくさんの感情が生まれて、その中で 《あたしを置いていかないで》って、自然と思った。
それで気付いたんだ。
そっか、あたしはコイツのこと好きなんだ。好きだから離れたくないし、もっと早く言ってほしかったんだ、って納得した。
結局引っ越しは取りやめになって、アイツは今もあたしんちの斜め前に住んでる。
引っ越しがなくなって、あたしはほんとに安心した。 よかった、コイツはあたしのことを置いていかない。あたしの傍にいてくれるんだ。って。
でも、いきなり 好きなんて簡単に言えるほどあたしは勇気がなくて、ずっとこのままでいい。無理矢理心に言い聞かせた。


胸の中で燻る気持ちはそのままに、あたしは斜め前の家にいるアイツを想う。

すっかり日は暮れて、満月が綺麗に輝いていた。

side ryosuke

今日は…7月…9日?だっけ。
もうめっちゃ暑い。どうした地球ってくらい暑い。地球温暖化シャレになんねーよマジ…。


「あーあっつい。やってらんねーわーマジーつれーつれー助けて爽太くん!」
「は?やだよ。」
「ひどくね!?オレの扱い雑すぎっしょ!」
「あはは、涼介君はそういうキャラだもんねっ!」
「華夜ちゃんの言う通りな。涼介、お前はいじられキャラなんだよ。諦めろ。」
「ちょマジみんな酷いわ〜…てか彩夏ちゃんだいじょぶ?なんか元気なくない?悩み事?」
「…あっ、ううん、何でもないよ!あたしはいつもの彩夏だよ〜ピースピース!あはは〜」

そう言って彩夏は目をそらして髪をいじってる。

「そう?よかったー。オレ彩夏の元気ないと心配だからさ!」
「ありがとー!涼介君!」


オレはいつだって彩夏に元気でいてほしいぜ。なんてな。
こんな軽いノリじゃなくて、もっと本気だって分かるように言えば、きっと彩夏もオレの気持ちに気づくんだろう。


よくチャラそう軽そう遊んでそう って言われるオレだが、実際は超一途。めちゃくちゃ一途。
今まで告白されて付き合ってきた子達にも、真剣に交際してきた。
ほらオレ超マジメ。

でも、今は彩夏一筋。
高校で出会ってから、彩夏のみんなを楽しませる明るい性格に惹かれていった。
オレは彩夏の笑ってる顔がいちばん好き。

どうやったら、あの笑顔をオレだけのものに出来るんだろう。
どうやったら、オレは彩夏のいちばんになれるんだろう。

今年の夏こそ、何か変えられるんだろうか。
今年こそは、《友達》の関係から抜け出せるんだろうか。

今年は、今年こそ。
自分の想いを伝えてみようか。


そう決意した夕方、オレ達はキレイなオレンジ色に包まれていた。

side sota

7月23日。今日はスポーツ大会。

俺と涼介はバスケに出場する。女子は…たしかテニスだったかな。
運動部揃いの俺達のクラスは、3年生を差し置いてぶっちぎりの優勝候補らしい。
特にバスケはバスケ部が3人に学年一運動ができる(らしい)奴がいるし、俺も涼介もバスケは割と得意だから、狙うは優勝だ。

―――


「田中!パスまわせ!」「佐藤走れー!!」「ナイスパス爽太!」「っしゃああああああ!」

涼介の豪快なダンクは見事成功。
「「「キャー!!涼介君かっこいー!!!」」」
「みんな応援ありがとなー!」

涼介の身体能力ってどうなってんだ。ダンクって一般人が決めれるもんなのか?いや、俺の常識は間違ってないはず。普通は無理だろ。普通は。

まあでも涼介は普通じゃないからな。スポーツ出来るし性格も話しやすい、おまけにルックスもいいんだからそりゃ普通じゃねぇな。
そんな涼介君はたいそうモテなさる。さっきだって女子からの黄色い声援を独占だよ。佐藤の顔やばいぞ。『俺達の努力は何だったんだ…』って絶望顔だ。
そんなに女子の応援はいいもんか?
少なくとも俺はそんなこと思ってな――「「爽太(君)ー!がんばれーっ!」」
…前言撤回。女子からの声援最高!
今のは華夜ちゃんと彩夏だな。ありがとう華夜ちゃん。あと彩夏も。
華夜ちゃんが見てくれてるなら、俺、がんばれるぜ!見てろよ!

「吉川!パスよこせ!」
「はぁ?涼介だけじゃなくお前もかよ!まあ、いいけど、よっ!」
「っしゃ、さんきゅ!っらぁ!」

…人間その気になればバスケのダンク出来ます。俺が今証明しました。



―――

その後も俺と涼介でシュート決めまくって、宣言通り俺達は優勝した。

「爽太君、おつかれさま!バスケとってもかっこよかったよ!」
「ありがと華夜ちゃん。優勝できてよかったよ。華夜ちゃんが応援してくれたおかげかな。」
「えっ…そんなことないよ!でも、爽太君の役に立てたならよかった」
「あ、爽太おつかれ〜。あたしの応援めっちゃやる気でたっしょ?」
「え?あ、ああ、まあな!」
「…ふ〜ん、爽太君そういう事言うんだ〜。じゃあもう爽太の事応援しないからっ!」
「嘘うそ!彩夏も応援ありがとな!」
「ふふん。許してあげ…なくもない!」
「はいはい許してくれてありがとな。 なぁ、今日学校終わったら涼介も誘ってみんなで打ち上げ行こうぜ?」
「爽太のクセにいい案じゃん〜。行こ行こ!」
「いいね!私も行きたいな」
「俺のくせにとか言うなよ! じゃあどこ行こうか?」
「私はファミレスがいいなあ〜」
「あたしはカラオケがいい!」
「後で涼介入れて多数決な!楽しみだな!」



そう言って盛り上がった体育館の熱気は、もう夏の暑さそのものだった。

side kayo


7月24日。1学期最終日。
もうセミの声がだいぶ煩くなってきた。

終業式も終わった帰り道。
つまり、私達はもはや夏休みに入ってる。気分は夏休みなの。

「ついに夏休みだな!今年は引きこもりやめて華の夏休みを過ごすぜー!」
「海でしょ、プールでしょ、バーベキューでしょ…もう、楽しみなこと多過ぎてヤバイ!」
「涼介も彩夏も、夏課題は早めに終わらせるんだぞ。俺もう手伝うの嫌だからな。」
「「うっ…手厳しい…」」
「まあまあ爽太君、初日から宿題宿題って焦らなくても大丈夫じゃないかな?せっかくの夏休みなんだし、楽しまなきゃ!」
「華夜…マジ優しい…!天使!華夜大好きー!!」
「ちょっ…、えへへ、私も彩夏ちゃんのこと大好きー」
「あーあ、あたしの幼なじみが爽太じゃなくて華夜ならよかったのになぁ」
「はぁ?小中とお前の夏休みの宿題を人に手伝ってあげてたのはどの人だったっけかなあ?」
「爽太様でした申し訳ございませんでした」


こうやってみんなで帰るのもしばらくなくなっちゃうのかあ…残念だなあ。
夏休みの間も、みんなに会いたいな。みんなといるの、楽しいから。


「そういえば、あと2週間くらいで花火大会だな」
「わあさっぱり忘れてた。涼介君思い出させてくれてありがとう!」
「そうだな…今年もみんなで夏祭り行こうぜ!」
「え、あたしはもうそのつもりだったよ?」
「まあもう恒例的なね。決まってるパターンってゆーね。」
「やったあ!すごい楽しみ〜!」

わーい。また夏休みにみんなに会える日が増えた。
彩夏ちゃんに、涼介君に、…爽太君に会える。
爽太君、楽しそうだな。すごく楽しそうに笑ってる。
爽太君と彩夏ちゃんは幼なじみなんだよね。やっぱり羨ましい。
小学生の時から爽太君に宿題手伝ってもらうなんて、彩夏ちゃんほんとに羨ましいなあ…。

夏祭り、ちょっと気合い入れてみよう。新しい浴衣買って、髪型もアレンジして…
去年とは違う私を、爽太君に見せてあげようっと!


夏休みの前の日、学校前の長い坂。
私は小さく心に決めた。

夏の音*前編

閲覧ありがとうございました!
後編をお待ちください ^^

夏の音*前編

GReeeeNの夏の音をモチーフに書きました。 青春です。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-05

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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