海に映りこむ夢

紅 懺悔

夢を見る少年。そしてその夢は実に不思議で、少年を惑わさせる。

様々な夢に、少年は思う


書き出し
夢とは、
自分の願望や絶望、希望などが形を変えて映像になったもの。
それは楽しければ楽しいほど儚く、苦しければ苦しいほど見たくない、そんなもの。
そんな夢に振り回されている、ある男の話をしよう。
著者、紅 懺悔(くれない ざんげ)


俺の名前は、語るまでもない。
そんなことより今俺は。
戦場にいる。
まわりには、モンスター級の機関銃で武装した仲間。
はおらず、俺一人である。
しかも武器は愛銃のバレットM82の銃弾も残りわずか。
(俺は生きて帰れるのか?)
…………いや、こんなこと考えるよりも最善を尽くそう。
瞬間肩に激痛がはしった。
思わず身を屈め、近くの岩影に身を隠した。
(ちくしょう、こんなところまで敵が。)
そんなことを考えていると無線が入った。
おかしい。味方は全滅したはず。
無線をとった。
「「こちらC班応答願います、どうぞ。」」
「「よかった!!繋がった!!なーちゃんだよね?」」
(なぜ俺の過去のニックネームを?)
「「私だよ!!小学校一緒だった!!出席番号18番。」」
記憶の引き出しから小学校の頃の記憶をたどる。
18番、声の高さから女。18番の女…………。
「「もしかして、なおちゃん?!」」
「「そうだよ!!偶然だよねこんなところで会うなんて!!」」
「「久しぶりだな!ん?会うってお前のこと見てないぞ?」」
「「さっき肩に弾丸くらってたでしょ。」」
ん?確かにくらったな。でもそれとこれとなんの関係が?
「「ごめん!!さっき撃ったの、私なの!!」」
「「…あぁ、そうだったのか。まぁわかったよ。」」
「「ねぇ、何処かで会わない?」」
「「ん?俺はさっきのところから動いてないぞ?」」
「「わかった!!今からそっちいくよ!!」」
ぶちん
無線が切れた。
しばらくすると、近くから走ってくる音がした。
(なおちゃん来たのかな?)
取り敢えず座って待ってた。
するとまた無線が入った。
「「こちら
「「なーちゃん逃げて!!」」
そんな無線と同時に人が飛び出した。
それは自分達の敵の兵隊。
持っている武器からすると、末端の歩兵だろう。
その歩兵は俺に銃口を向けて狙いを定める。
(あぁ、こんなところで終わるか。)
銃声が聞こえたのは、その直後だった。

目が覚めた。
まただ、またあの夢だ。
覚醒していく意識のなか、そんな夢の内容も忘れてしまった。
ふと、起き上がろうとすると。
「痛っ!!」
肩に激痛。
痛みが酷くならないように恐る恐る触ってみた。
ぬるっ
肩からは生暖かい何かが流れていた。
その流れていた何かは、赤く、Tシャツを汚し、シーツに染み込んでいった。
「…血だ。」
左肩から下の感覚がない。
いったいなにが起きたのか。
しばらくして叩き起こしに来た妹が、血だらけの俺を見て救急車を呼んでくれた。
救急車が来て、治療室に運ばれるまで、妹は「お願いし…死なないで。私のお兄ちゃんを、つれてかないで。」と繰り返し呟いて泣いていた。
治療は無事終了し、俺は病室に運ばれた。
医者によると、左肩に5mmほどの穴があいていたらしい。
看護師さんが、俺が治療中まで左手に握っていた筒を手渡してくれた。
中を開けると、手紙が入っていた。
「「「親愛なるなーちゃんへ

なーちゃん、君がこの手紙を読んでいる頃私は、とうにこの世から消えているでしょう。
それでも私は、この手紙を書きます。
なーちゃんに会いに行くって言って行けなくてごめんね。
恥ずかしかったんだ。
久しぶりに君に会うのが、嬉しいけど恥ずかしかったんだ。
私ね。小学校の頃君が好きだったんだ。
だからね、君に会うのが嬉しいけど、辛いの。
だから、君が待ってる間君のことを見てたの。
でも、君は消えてしまった。
でも、それがよかったんだ。
君には、輝ける未来を生きてほしい。
君のこと、本当に大好きでした。
それじゃあ、またね。

君の小学校の君のクラスの出席番号18番」」」
小学校の頃の俺のクラスの18番。
それは俺の好きだった、大好きだった女の子だった。
しかし、その子はもう他界している。
なぜこの手紙が?
「…そういえば、もうすぐなおちゃんの命日だ。
久しぶりに顔だすか。」
病室に風が吹き抜けた。
結構強い風は、もうすぐ春だからだろう。
すこし暖かかった。

俺は夢を見ている。
まぁ明晰夢ってやつだ。
明晰夢っていうのは、自分が夢を見ているということを自覚してることをいうんだ。
それでどんな夢を見てるかと言うと、友人とカラオケや祭りに来ている夢だ。
俺は友人といるときが好きだ。
楽しいし、何より落ち着く。
ずっとこの時間が続けばいいって、夢から覚めなくていいって、そう思う。
「ねぇ次どこいく?」
「ん?そうだなぁ。」
「どこでもいいんじゃね?」
「じゃあボーリングでもいくか?」
「いいね!!」
友人たちのそんな話を聞いて
「じゃあ銀行で金おろしてくるな。」
「おぉわかった。先にいってるぞ。」
「あぁじゃあボーリング場で。」
俺はその場を離れた。
銀行には行かず、近くの路地裏に駆け込んで息を整える。
あいつらといるのは楽しい、だけどそれ以上に苦しい。
俺たちは夢の中でしか会えない。
俺の想像の中でしか、会えないんだ。
しばらくして気分が落ち着いたから、あいつらを追うことにした。
すると、足に硬い感触があたった。
足を止め、下を見ると。
屍。
人の骨があった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
叫び声が聞こえて、慌てて前に向き直る。
「助けてくれ!!」
さっきボーリング場に向かっていた友人たちが、他の人たちが宙に浮く無数の手に捕まれている。
すると、アスファルトの地面が裂けた。
裂けた部分は、人の口のように歯がはえていた。
その口のような裂け目に、次々に人が放り込まれている。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
パクン
クチャクチャクチャクチャ
裂け目は一度閉じて、投げ込まれた人間を咀嚼している。
友人も次々に投げ込まれ、姿を消していく。
「…やめろよ。」
俺は小さく呟いた。
「やめろよ!!たのむからやめてくれ!!!」
次は大きく叫んだ。
世界はひび割れて、意識が薄れていく。
「たのむ、やめてくれ…。」
そこで意識が途切れた。

目が覚めた。
まったく酷い夢だ。
夢だとわかっていても、やけにリアルな夢だった。
「また、救えなかった。」
そう、俺はこの夢を数日前から見ている。
数日前から、ずっと同じ夢だ。
「もう、飽きたよ。あんな夢。」
(そうだよ、あんな夢…………あんな夢?)
「あれ?どんな夢だっけ。」
まただ、また忘れている。
もう三回目だ。
「まぁいいか。」
ベットから起き上がり、服を着替えて部屋を出た。
「あ、お兄ちゃんおはよ。どうしたのこんな早くに、まだ6時だよ?」
「悪い、友人の墓参りに行ってくる。」
「あ、そっか。そろそろ命日だもんね。行ってらっしゃい。朝ごはん作って待ってるからね。」
「あぁ、行ってくる。」
家から徒歩30分、山の中の墓地。
そこに、8年前に死んだ彼女が眠ってる。
「おはよう、なおちゃん。」
あの手紙を見てから二週間、俺は欠かさず彼女の墓参りに来ている。
「俺たち、色々あったな。本当に楽しいし思いでばかりで。」
「(僕たちのことは?)」
「えっ?」
周りを振り返ったが、誰もいない。
それに頭の中から声がした感じだ。
「(僕たちと遊んで楽しくなかったの?)」
「誰だお前!!」
「(せっかく仲良くしてやったのに、ねぇ弱虫君。)」
頭のなかでその言葉だけが反響している。
弱虫君と呼ぶのはあの子しかいない。
「…たけくん?」
「(やっと思い出したの?人殺し。)」
「えっ?違うよ、俺は人殺しじゃない。」
「(人殺しだよ?人殺し。人殺し人殺し人殺し。)」
「うるさいうるさい黙れ黙れ!!」
「(そうなるよね、だって僕は「存在」してないもんね。君に殺されたから。)」
「違う、殺してない。殺してない!!」
頭を抱えて踞り、その場に倒れた。
「(殺したも同然だろ。君が銀行にいかなきゃ僕らは。)」
「(「死 な ず に す ん だ 。」)」
そんなはずない。
たけくんは、たけくんは事故で死んだはずだ。
他の人も一緒に死んでいる。
たけくんたちが歩いていた交差点で、爆発がおきた。
その時にたけくんたちは死んだ。
体は汗で濡れていた。
それも異常なくらい汗をかいた。
「ていうか、俺悪くないじゃん。」
震える体を抱え込むように立ち上がって言った。
「(ん?確かにそうだな。悪い。)」
ケラケラケラとさっきまでの怒りが嘘のように、たけくんは笑った。
「ごめん、俺が言ったばっかりに。」
「(そんなこと言うなよ!僕が悪かったからさ!!)」
「(でも、せめて墓参りには来いよ。僕たちは、友達だろ?)」
「…………そうだな。」
「(おい、今なんで間があいた。)」
「いやあいてないよ!」
「(そうか?)」
二人は揃って笑った。
あぁ、楽しいなぁ。
「(さて、そろそろ行くか。)」
「何処に?」
「(決まってんだろ、あの世だよ。お前と話してスッキリした。お前と友達でよかったよ。)」
「お互い様だろ。」
目の前にたけくんの幻影を見た気がした。
「(じゃあ行くな。友達でいてくれて、ありがとう。)」
「俺も、友人でいてくれて、ありがとう。じゃあな。」
すると、たけくんの幻影の姿が薄れていく。
最後に拳を合わせるふりをして、たけくんは消えてしまった。
「…………。」
(たまに、墓参りに行くか。)
そうして俺は帰路についた。

俺はまた、夢を見ている。
それにまた、同じ明晰夢。
この前と違うところといえば、背景が黒で塗りつぶされ、周りに人がいないことだけだ。
「やぁ××くん。こんにちは。」
急に目の前に人が現れた。
黒いマントを身に纏った少女だ。
「えっと、誰ですか?て言ってもわかるわけないか、俺の夢の中だし。」
「私の名前は紅 懺悔、君の「夢人生」の語り部さ。」
「は?紅 懺悔?それに、俺の語り部って?」
「まぁ、その話はおいといて。」
少女は黒いマントの中からノートを取り出した。
「なんだそれ?日記?」
「かつて私が語り部になった人々の夢とその最後だ。」
少女は、数冊のノートの一つのページをめくった。
「(「今日は彼の話をしよう。
彼の名は、風上 武山(かざかみ たけや)。
今日彼が見た夢は、自分がスーパーヒーローになる夢だ。
実に単純で子供っぽいと言えよう。

・・・・・・・・

今日彼が見た夢は、自分と自分の友人とでボーリング場に行くときに爆発テロにあった夢だ。
これは、いわば予知夢だ。
私が言うんだから間違いない。」)」
「風上武山って、僕の友人の。」
そう、今日の朝に墓地で見た友人の幻影とはこの人のことだ。
「そう、彼は予知夢というものを見た。
それは変えられない運命だ。君も似たような夢を見ているはずだが。」
「そんなの見てないよ。」
すると少女は、背伸びをしながら俺の頭を触った。
その瞬間、過去の記憶が呼び覚まされた。
頭の中を駆けめぐる、痛みや悲しみの記憶。
喜びも楽しみもない、暗い、とても暗い記憶。
その中に、一つの輝きを見つける。
花道 直美(はなみち なおみ)や、風上 武山たちとの記憶。
そのなかでひときわ輝いているのは、直美もといい、なおちゃんとの記憶。
「なおちゃんの夢を見たんだ。」
「そうだ、君は彼女の夢を見た。
そして、君は夢で傷つき、現実でも傷ついた。
肩の傷がその証拠だ。」
「そうだったのか。」
(じゃあ、あの手紙も。)
「君はどう考える?自分の運命に従うか?」
「俺は…………。」
考えてるうちに目が覚めた。

夜明け前の洗面台で、俺は水をかぶっていた。
「っっっぷはぁっ!!」
水をかぶり完璧に目覚めた頭で俺は、夢の内容をたどった。
黒く塗り潰された世界に、少女はたたずんでいた。
歳は10くらいで、黒の長い髪、黒と青の目、黒のマントを纏っていた。
「なんだったんだろう、あの子。」
それにしてもまだ眠い、もう一眠りしよう。
目が覚めたのに眠いとは、不思議なものだ。
洗面所を出て階段をのぼり、自分の部屋のベットに倒れこんだ。
そしてすぐに夢に落ちた。

夢を見ている。
周りは黒ではなく白。
目の前には黒ではなく純白のテレビがあった。
「あれ?おかしいな。あいつがいない。」
すると、目の前のテレビの電源が勝手についた。
最初は砂嵐、その中に少しずつ人が見えはじめる。
やがて、画面に人がうつった。
「こんにちは、あなたが○○さんですか?」
「…………!あぁ、そうだ。お前は?」
「お初にお目にかかります。私はリリエル。
あなたの監視役です。」
リリエルと言った少女は、純白のワンピースに白い髪、そして真っ白な肌。
「は?監視役?」
「正確には、あなたが見ている夢を、です。」
「俺の夢の、監視?」
「詳しい話は私の部屋でしましょう。
後ろの扉からはいってきてください。」
その言葉をのこして、テレビの電源がきれた。
後ろを振り向くと、これまた真っ白な扉がある。
ドアノブに手をかけ、ひねり、扉をひいた。
扉の先は、これまた真っ白な空間があった。
四隅がはっきりしてるので、部屋と認識できる。
そして目の前には、ベット、その周りに心電図と点滴用のパックが無数に存在した。
ベットには、先程の少女が横たわっていた。
腕には、点滴用の針が無数刺さっていた。
「すみません、見苦しい姿をさらしてしまって。」
「いや、俺は大丈夫だ。」
「そうですか、では何から話しましょう。」
「「その必要はない。」」
瞬間視界の端にとらえていた部屋の隅が黒く染まりはじめた。
それは少しずつ部屋を塗り潰し、部屋の半分を黒く染め上げた。
その真っ黒な空間から、彼女が現れた。
「久しいな、リリエル。」
「お久し振りです、紅さん。」
「二人は知り合いか?」
ぴりぴりとした空気の中、意を決して話しかけた。
「知り合いも何も。」
「私達は姉妹ですよ?」
「へ?姉妹?」
確かに顔立ちが少し似ている。
「ちなみに我が姉で、」
「私が妹です。」
むしろ逆じゃないかと言おうとしたが、言ったあとに紅 懺悔から何をされるかわからないので言わなかった。
「ところで、その必要はないって?」
「あぁ、その話だったな。詳しい話は別の機会に話そう。落ち着いたときにな。」
「は?なんでいまじゃないんだ?」
「いいから取り敢えず戻るぞ。我もこの空間に長居は出来ない。リリエル。」
「はい?なんですか?」
「あんまり○○をたぶらかすな。」
「…………わかりました。それでは。」
部屋中が真っ黒になって、リリエルは闇の中に消えた。
「お前妹いたんだ。」
「その話はもういい、それで前にも聞いたがお前はどうする?」
「自分の運命に従うか?だっけ?」
「そうだ。」
「状況によるな。」
「…………そうか。」
紅 懺悔は自分とは反対方向に、歩き始めた。
「なぁ。あんたさぁ、
「時間だ。」
その声と同時に目が覚めた。

時刻は夜の8時。
起きていても何もないので、また寝た。

「また会いましたね。」
そんな言葉で出迎えてくれたのはリリエルだった。
周りは前と同じ白い部屋。
リリエルの周りには点滴用のパックが吊るされていた。
「またあったな、今日はなんの用だ?」
「それはですね、○○さんに真実を教えてさしあげようと思いまして。」
リリエルは自分の腕に刺さってる点滴の針を、全部引っこ抜いた。
「!!おい大丈夫なのか?」
「はぁ、はぁ、へ、平気です。それより○○さん、少しお話を聞いてください。ちょっとした昔話です。
あるところに一人の男の子がいました。
男の子が海に散歩に行くと、浜辺に一ぴきの小さなホタルイカを見つけます。
まだ生きていて、今にも干からびそうなので男の子は、ホタルイカを海に返してあげました。
夜まで海を見ていると、海の中に光が見えました。
すると、目の前の海が割れて海の中が見えました。
光の先が気になった男の子は、割れた海の中を光の方へ歩いて行きました。
光の先には、海にはあるはずのない館がありました。
疑問よりも好奇心が勝って、男の子は館の中に入りました。
ドアを開けた瞬間、館の中が輝き目を背けました。
「こんにちは、○○さん。」
もう一度館の中を見ると、目の前には同い年位の女の子がたっていました。
黒の髪に白の肌、服は白と黒のドレスの女の子に、ここはどこか、君は誰かと男の子は聞きました。
「ここは私の館で、私の名前は、海宮 蛍火(うみみや ほたるび)といいます。
○○さん、あなたは私の大切なものを助けていただいたので、そのお礼にここに招待しました。
さぁ、こちらにどうぞ。」
館の中を案内されるなか、男の子はこれは夢だと感じていました。
「ここは夢じゃありませんよ。信じられないかも知れませんが。」
心を読まれた?
案内されたのはとても大きな広間でした。
広間には、仮面をつけた大人たちがテーブルにのった料理を食べたり、お酒やジュースを飲んだりして談笑していました。
「おぉ、海宮お嬢様。お帰りなさいませ。
そちらの殿方は?」
「こちらは私の友人です。私の部屋にジュースとお菓子を持ってきてくれませんか?」
「御意にごさいます。」
執事のような老人との会話を終えると、女の子は
「こちらです。」
と男の子の手を引きながら言いました。
広間から二階にあがる階段をのぼり、一つの部屋の中に案内されました。
部屋の中は、実に女の子らしい部屋でした。
「海宮お嬢様、菓子と飲み物をお持ちしました。」
さきほどの老人が飲み物とお菓子ののった、トレイを持っていいました。
部屋に入り、テーブルにお菓子と飲み物がおかれて女の子と話をしました。
自分の住んでいる場所、好きな食べ物、ほかにもいろいろ聞いたり聞かれたりしました。
その話の中で女の子はしだいに、男の子のことが好きになっていきました。
そろそろ帰ろうと男の子が話したとき
「では、家までお送りしましょう。」
と立ち上がり、部屋をでました。
割れた海の中を二人で歩き、浜辺について男の子はある異変に気づきました。
海周辺の家が全部倒壊していたのです。
その悲惨な光景を見た男の子は、地面に倒れ気を失いました。
気を失った男の子をみた女の子は、執事を連れてきて館まで運ばせました。
気を失った男の子は、ずっとうなされていました。
自分の住んでいた町があんなことになっていては、無理もありません。
そこで女の子は、あるおまじないをかけました。
それは、夢でいつも通りの生活ができる、今の男の子には夢のようなものでした。
しかし、そのおまじないにはある欠点があったのです。
それは、そのおまじないをかけたら、「真実」を知らないと起きれないこと、そして、かけられて三年間で死ぬこと。
それでも女の子はそのおまじないをかけました。
それが男の子のためだと信じて。」
話を終えたリリエルは荒い呼吸で続けた。
「○○さんの後ろに箱を用意しました。私が死んだら、その箱をあけてください。」
「は?死ぬってお前!」
「私はもともと長い命じゃないのです。だから死ぬ前にあなたにこのことを伝えられてよかった。」
リリエルの寝ているベットのシーツが、針を抜いたときの血で染まる。
「箱の中にはあるところに行くおまじないの書いた紙があります。真実を知りたければ、そのおまじないを目をつぶって唱えてください。
ゴフォッ!!」
「リリエル!!」
「最後に一つだけ、自分の大切を、最後まで守ってください。」
ピーーーーーーーーー
心電図の心拍数が0になり、リリエルは息をひきとった。
リリエルが死んだ。
しかも実に呆気なく。
出会ってまだ一日だと言うのに。
真実?さっきの昔話は一体?
様々なことがらを思い出すうちに、リリエルの一言を思い出した。
「後ろに、箱?」
後ろを振り向くと、パイプ椅子の上に箱があった。
10cmくらいの木箱を手に取り、中身を確認した。
中身は紙と、3cmくらいの淡く輝くサイコロだった。
「紙にはまじないが、書いてるんだよな。」
紙だけを取り出して木箱をポケットにしまった。
紙には子供の字でこう書かれていた。
(君は僕を救ってくれた。
でもその優しさが辛くて、君には何度も八つ当たり。それでも君は笑ってくれた。)
「なんだ、これ?」
黙読した瞬間、酷い頭痛に見舞われた。
それでも、知りたい。
この先を。
そして俺は、目を閉じて、このまじないをとなえた。
まじないをとなえて目を開けた。
「場所が、変わった?」
真っ暗な空間に、スクリーン。
近くにテーブルとノートパソコンがあり、離れたところからスクリーンに光があてられている。
パソコンにちかより、パスワードをうった。
パスワードは不思議と頭の中にあった。
「UMHTR」
ピピッ
ロックが解除された。
デスクトップにはファイルが2つ。
「報告日誌」と「現在状況」だ。
「報告日誌」のファイルを開いた。
ファイルの中は、ボイスメッセージ。
それも一つどころじゃない。
一つ一つに日付がついている。
一番過去のデータを再生した。
「ぐすん…えっぐ…
2018年、7月16日。」
この声聞いたことがある。
「彼にあのおまじないをかけて、初めての記録。」
間違いない、彼女だ。
暗い世界の、黒い髪の彼女だ。紅 懺悔だ。
「当たり前だけど、彼は目覚めません。何をしても。大きな音を出しても、手を握っても。」
彼女は切なげに語る。
「死んだように眠ってる。
…ひっぐ…こんなことなら、かけなければよかった。」
ピー
再生が終了した。
他のも聞いてみる。
「2019年1月1日。
今日は彼と年を越しました。
初めての彼と一緒に初日の出をみました。
綺麗だったなぁ。」
「2019年6月24日。
今日は彼の誕生日。
彼のためにバースデーケーキを作ったの。
食べてもらえなくて残念だけど、一緒に誕生日できて楽しかったわ。」
「2019年7月16日。
彼におまじないをかけて、一年がたった。
やっぱり彼は起きてくれない。
何しても大きな音たてても。
…………どうして、おまじないなんてかけちゃったんだろう。
ひっぐ…もういやだよ。」
ピー
再生が終了した。
「なんなんだ?いったい。…………まさか。」
不安にかられて、「現在状況」のファイルを開いた。
中には、生中継の動画データ。
深呼吸をしたのち、意を決して動画を再生した。
動画に映っているのは、ベットと。
「…………俺?」
ベットに横たわっている、自分。
「なんで、俺が?うっ…!!」
酷い頭痛で目をつぶった。
しばらくして頭痛がおさまり、目を開けた。
「また、場所が変わった?さっきからなんなんだ。」
真っ赤に染まった夕焼け空。
どこかの屋上なのだろうか。
周りはフェンスで囲われている。
「お兄ちゃん!!」
後ろから声がした。
聞き慣れた妹の声だ。
振り替えるとそこには、やはりわが妹がいた。
「こんなところで何やってんの?早く病室戻ろう?」
話の内容から、ここが病院で、ここはその病院の屋上なのがわかる。
自分を見ると、病服を着ていた。
「もう、こんなところでなにしてるの?まだ目を覚まして一週間なんだから、ちゃんとベットで寝ないと。」
「目を覚まして一週間?なんのことだ?」
「お兄ちゃん覚えてないの?お兄ちゃん一週間前まで昏睡状態だったんだよ?本当に心配したんだから。」
「そうだったのか、今までのは夢か?」
「それよりお兄ちゃん!お医者さんがね、明日には退院できるって!!また一緒に暮らせるね。」
今までのが夢か。
なんか内容の濃い夢だったな。
「ほらお兄ちゃん、行こう?」
妹が俺の手を繋ごうとしたとき。
「待て。」
妹の手が吹っ飛んだ。
「ちっ!!」
手を押さえながら後ろに身をひいた。
声の聞こえたほうに振りかえると。
「…たけくん?」
「やぁ。」
子供の頃の姿のたけくんが立っていた。
「どうして、君がここに?」
「俺はここにいない。」
「は?何言ってるんだよ。」
「本当の俺はとっくに死んでる。だろ?それはお前がよく知ってることだ。」
確かにたけくんは事故で。
「今お前が考えてる俺の死因は誤りだ。」
「え?そんなわけない、たけくんは事故で。」
「それはこの悪夢が見せた誤った記憶だ。
いい加減に目を覚ませ。」
「悪夢?」
「お兄ちゃんそいつから離れて!!」
後ろから妹の声が響いた。
「お兄ちゃん、そいつは悪魔です!!
死んだ人がこんなところにいるわけありません!!」
「おい○○、お前の妹のような姿をしてるそいつの正体、知りたくねぇか?」
「黙れこの悪魔!!」
「そいつはな、悪夢の元凶。まじないの根元だ。」
「たけくん、なにいってるの?」
「だーかーらー。お前、さっきの見てわかったんだろ?自分が目覚めてないことくらい。」
さっきのは夢じゃなかったのか。
そう。
さっきの映像を見てわかった。
自分は、まだ本当の意味で目覚めてないことを。
「お兄ちゃん、そいつから、離れて…。」
後ろから妹のうめき声が聞こえる。
「やれやれ、化け物のご登場か。」
後ろを振り向くと、禍々しい黒い霧が妹を覆っていた。
「そいつから…………離れろぉぉ!!!!」
妹を覆っていた黒い霧が爆発すると同時に、妹は変貌した。
黒い霧が妹の周りから湧き出て、妹に集まっていく。
「まずいな。○○、これから言うことを実行しろ。」
「何?たけくん。」
「逃げろ。ここは俺が何とかする。」
「…………わかった。」
たけくんの言葉は無謀だったが、それがとても安心できる言葉だった。
目をつぶり、考える。
逃げる道を。
しかし、すでに頭は、脳は答えを導き出していた。
それが、遥か昔から決められたルールのように。
「ぉ、にぃ…ち、やん…………。」
目を開くと、妹はもう妹じゃなかった。
真っ黒な布で体と顔を隠し、布の端からは真っ赤な鎌がちらりと見えた。
もはや化け物である。
その化け物が、布の中の鎌を振りかぶった。
それと同時に俺の体は行動をはじめていた。
「飛べ!!○○!!!」
フェンスを乗り越え、その声を背景に俺は飛んだ。
浮遊感というものを生まれてはじめて味わいながら、目を開いた。
周りにあるはずの壁も、真下にあるはずの地面もなく、目の前には広大な水面が広がっていた。
水面はちゃくちゃくと近づき、派手な水柱をたてて俺は入水した。
体が、思うように動かない。
水中には、色とりどりな魚が泳いでいた。
真っ黒な魚、真っ青ないか、真緑の海月。
水中に入ってわずか一秒で、俺は深海へと潜っていった。
周りは深海の闇。
まったく何も見えない。
(お前なんか大っ嫌いだ!!)
俺が吐いてきたであろう言葉が、沈んでいくごとに頭に流れてくる。
(もういいよ、つかれたよ。
なぁうみほたる。)
うみほたる?
…………あぁ、思い出した。
彼女の名前だ。
「ぉにぃちやん。…………おにぃちやん。」
後ろから抱きつくかたちで、妹だったものが耳元で語りかけてくる。
「ぉにぃちやん、かぇりましよぅ。
かぇつて、カレーつくりましよぅ。
それとも、わぁしがきらぃですか?」
「いいや、嫌いなもんか。
俺のたった一人の妹だ。嫌う理由なんて、思いつかない。」
「だつたら、かぇりましよぅ。
ぁんなげんしつのどぉがぃぃんですか?ぁんなひげきのなぃがぃぃんれすか?」
妹が続ける。
俺も続ける。
いや、僕も続ける。
「確かに、あの現実はとてもつらいよ。
本当は帰りたくなんてない。
あんなの信じたくなんてない。」
「だぁたら。」
「でも、僕のことを待ってくれる人がいるんだ。」
ポケットの中から、木箱を取り出した。
木箱を開けると、淡く輝く光が飛び出した。
光の正体は、ホタルイカ。
「僕は彼女を傷つけてしまった。
だから、その報いもかねて。僕は彼女に会いたいんだ。」
「…………いやだ。いやだよ。
消えたく、ないよ。
お兄ちゃんと離れたく…………ひっぐ…ないよぅ。」
絡まれていた手をほどいて、妹だったものに向き合う。
そこにいたのは、いつもの服装の妹。
涙で顔を濡らした妹がいた。
「だけど、ね。お前とも離れたくない。」
「……………………!」
「お前と過ごした日々は、とても平凡で、現実の辛さを忘れることができた。」
「お、お兄ちゃん…………。」
僕は続ける。
「ずっと、てわけにはいかないけど。
せめて夢の中では、お前と一緒にいたいと思う。」
「で、でもお兄ちゃん。そんなことできるわけが。」
「妹よ、お前の名前はなんだい?」
妹は戸惑いながら。
「えっと、眠りの守護者です。」
「違うよ、お前は過去寺 佐利美(かこでら さとみ)。
僕の妹だ。お前は過去寺 佐利美であり、眠りの守護者であり、そして俺の妹だ。」
妹の顔を見ると、すでに涙は流れてなかった。
目が輝いていた。
「お兄ちゃん、目を閉じて。」
「うん、わかったよ。」
不思議な気持ちだ。
妹の声が透き通って聞こえる。
目をつぶった。
「「あなたが見ているのは夢であって夢じゃない。第二の人生でもある。
しかしあなたは目覚めなければならない。
さぁ目を覚ましなさい。そしてまた、戻ってきてください。」」
さぁ目を開けて。
そう聞こえたような気がした。
いつもより重い瞼をあける。
ありがとう

目を覚ました。
とても長くて、だけど幸せな夢を見た。
周りをみわたすと、どうやらここは僕の部屋じゃなさそうだ。
ベットから見るに、ここは女の子の部屋みたいだ。
所々に人形が飾られている。
ベットから起き上がろうとすると、体がいうことをきかない。
ベットでもぞもぞ動いていると。
「んっ…………。」
ベットのわきに女の子が寝ている。
いや、横からベットに突っ伏しているというのか。
女の子が寝返りをしたときに顔が見えた
「っ…………君は。」
「ぅぅぅ?…………!!!」
女の子が起きたと思ったら、驚いたのか後ろに倒れた。
「…………起きたん、ですか?」
「君はたしか、海宮 蛍火さん。どうして僕がここに?」
「あなた、ずっと寝てたんです。ここ一年半。」
「そうか。あれはやっぱり夢だったんだ。」
夢の思い出を頭のなかで見直していると。
「それにしても、よかった。本当に起きて、よかった。」
海宮が涙を流していた。
僕は自然と、海宮の頭を撫でて言った。
「おはよう、うみほたる。」
「…………!はい、おはようございます、過去寺 悠登(かこでら はると)さん。」
夢というのは、現実から逃れるための手段である
しかし、それは一時的なものに過ぎない
そこで私はこのまじないをつくった
でも、無駄だったのかもしれない
いつまでも現実から逃げちゃ駄目なんだ
だって現実には、大切なひとがいるから

海に映りこむ夢

海に映りこむ夢、いかがだったでしょうか。
今回皆様に初めて作品を出すことになった紅 懺悔です。
さて、今作品面白かったでしょうか。
おや?面白くないと言う声が聞こえますね。
しかしそれも正しい意見です。
しかもその正直な意見が欲しいのです。
なので質問意見は大歓迎です。
また次の物語で会いましょう。

海に映りこむ夢

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-05

Copyrighted
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