ある人間たちの会話

「いつも死ぬのは怖くない、って言ってたけどさ、僕やっぱり怖い」
「…どうしたんだい、突然」
「ほらいつも君は果物やお菓子とか持ってお見舞いに来てくれるでしょう、面倒くさいと言いつつずっと通ってくれてる。家族でさえ『いつものこと』なんて言って最低限しか来ないのにね。」

「今まで体が弱いからって何度も入院したことはあってもさ、こんな大きい手術をしたのは初めてだったし、ちょっと怖くなったんだ」
「うん」
「君がこうやってお見舞いに来てくれてるのもまだ僕がこうして生きているからだけど、僕が死んだら、お見舞いじゃなくて、君はお花を持って僕に会いに来てくれるんだろうなって思って」
「…」
「そしたらすっごく悲しくなってさ。今まで死ぬのは怖くないって思ってたのに、君に会えなくなるのはすごく怖いんだ」

「ねえ、僕が死んでも来てくれるの、悲しいって、思ってくれる」

ある人間たちの会話

ある人間たちの会話

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-05

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