君の面影

どこに行ったの、あの娘はとても寂しがりやなのに自分から離れて行くだなんて。

俺がいけなかった。
あの娘はいつも「自分は嘘から出来ている」とか言っていたけど俺はそう思わない。
凄く辛そうに顔を歪めて話す彼女が余りにも真剣だったから、俺はそれをいつも否定出来なかった。
それが間違いだったんだよ、あの娘は何も持っていないと言っていた。
俺が居るじゃないか、と言った事もあったけど彼女は黙って微笑むだけだった。
最後には俺から離れて行った事にも気付かずに、間抜けに他の女性と話してしまった。
謝りに行くと、彼女は「それで良いんだ」といって相変わらず綺麗に笑う。
口答えしようと思うのに出来ない。彼女の顔が助けを求めて居るにも関わらず俺は黙って他のこと居た。
日に日に彼女の顔色が青くなる、痩せていく、休みがちに為っていく、
怖かった、俺はどうしようも無い臆病者だった。
話し掛けられない。
その日、最後に見た彼女の口元があの時の様に綺麗に微笑んで
「良かった」
そう動いたのが見えた。

それから一ヶ月くらい彼女を学校で見かけていない。
心配に為って等々俺は彼女の住むアパートを訪ねた。
鍵が空いていた。部屋は綺麗好きな彼女の性格がにじみ出ていた。
テーブルの上に一枚の紙切れが、
「群青色のあなたに会いに逝こう」
嫌な予感が背筋に走る、行かないと、探しに、彼女を!
アパートの屋上へ直感的に走り出す。
案の定、彼女は居た。
しかし透けていた。

あら、貴方学校は?ふふ、行かなきゃ単位取れないわよ?

あの時以上に綺麗になっていた彼女は極上の笑みを零して呟く。

私ね、嘘で出来てるの。だからもうすぐ消えるのよ、

え、今なんて、、

だから距離を置いて記憶を薄れさせようと思ったのに、貴方は、、貴方の彼女さんがきっと今頃探してるわよ?

そんなのどうだって良い。俺が好きなのは後にも先にも貴女だけだ。

あら、ありがとう。でも駄目よ、貴方はもっと綺麗な人と結婚するの。

そんなに悲しそうな顔をして言わないでくれ、第一彼女より綺麗な人なんて居るはずが無い。

世界は広いの、もっともっと綺麗な人なんてたっくさんいるわ、決めつけ無いの。
視野を広くもってね、

時間切れ、ね。

待ってくれ、まだ話したいことが山ほど有るのにっ、

大丈夫、その続きは私が聴くべき物じゃ無い。

きっと大丈夫よ、大丈夫。


そういいながら群青色に染まる彼女を見送る俺の目は、塩水で一杯だった。

君の面影

君の面影

何も無いの の続編?的なものです。良かったらこちらもどうぞ、

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted