何にも無いの
あのね、聞いてくれる?
私ね、何にも持ってないの。
ふふ いきなりで驚いたかしら?
でも本当なの、自分の部屋も自分のクローゼットも自分の服も靴も家でさえも無いの。
困ったわよねぇ、この期に及んで。
でもね?ホームレスではないの。だって自分の部屋も自分のクローゼットも自分の服も靴も家でさえも私は持っているもの。
え?
矛盾している、ですって?
貴方、面白い事言うのね。「当たり前」なのよ此処では。
だって貴方も無いじゃない?自分の物が。
正直言うとね、もううんざりなの。誰かに助けてもらいたいの。
でも無理なのよ、これが。
どうやったって逃げられないのこの世界からは。
雨が降ると虹が出来るじゃない?
日が照ると空気が澄むじゃない?
雪が降ると白銀に変わるじゃない?
私はそんな「変化」が、欲しい。
優しい貴方にあって、無機物の様な私をゆっくりとほぐしてくれる、貴方が私は愛おしかったの。
だからごめんなさい。私は貴方に嘘を付いた。きっと最初で最後の大きい嘘を
貴方が何も持ってないなんて嘘、本当はこんな話を聞いて欲しかった分けじゃない。
私はすべての嘘から為る存在。
だから嘘しか付けないの。
だからこんな女なんてほっといて、もっと優しい女性の所へ行って頂戴?
貴方に見合うだけの素晴らしい女性の元へ、、、。
別に悲しくなんかないわ、だってこれが有るべき姿なのだから。
貴方の隣に居る人が私じゃ無くなっていく日が経った事だろう。
もう見慣れた、相手は綺麗な女性。よかった笑ってるわ。二人とも良かった。
「良かった」
声に出すことで一気に感情が流れ出す。
本当は泣きたいよ、
泣きたい、泣きたい、
でもそれも無理な私には泣く資格なんて有るはずが無いじゃない。
期限が近付いている、私が消える期限が
嗚呼、一回くらい海外に旅行行けばよかったなぁ、泣けたらよかったなぁ、
後から後から溢れ出る煩悩に、まだ私は人間なのだと実感した。
手が透ける、空の色が体越しに透けて見える。
今までありがとう「世界」この世に嘘つきの塊として産み落としてくれて、
ありがとう
「あ、りが、、、、とう。」
群青色に染まった空に抱かれて、
さようなら、また次の「世界」でも幸せでいて、
何にも無いの