いるかのほし29 天使と遺跡2

天使と遺跡 2

 それにしても、ベルボックルのライヤー教室は、変わっていた。
 月1回の教室が始まり、参加者は4名ほどだった。

 ひざに抱えて、ぽろぽろぽろろろろ・・・・・・・・・んと、弦の上を指でなでるグリッサンドが、とても美しい。感心したのは、何人かで輪になって、グリッサンドを回す遊びだった。隣の人がら、音をもらって、次の人へ渡す・・・・・。 虹色の音がふわあ~~~ん、ふわあ~~~~ん、と回ると、花が開くようだった。

 高い音から、また低い音から、きれいなグリッサンドを、ゆっくりくりかえす。先生が、ゆっくりと話すので、みんなとってもリラックスしてくる。 音のヒーリング、弦を端から端までやさしく触れる腕の動きは、呼吸とも連動して、楽器とやる呼吸法みたいだな、とポコは思った。

 みんなで音を楽しんだら、今度は自分の中にわいてくるイメージを先生が一人ひとりに聞いてくる。
 
 「まるで、雲の上にいるみたいな気がしました。」とか、
 「海の底のゆったりしたイメージがわきました。」とか、思い思いに素直な感想を披露する。

 その中には、
 「妖精といっしょに、空を飛んでるみたいな気がしました。」とか、
 「天使がほほえみかけてくるような音に感じました。」とか、ママ友との会話には、絶対出てこないキーワードが、普通に含まれていた。

 天使と聞くたびに、相変わらず違和感を持つポコ。 

 「見えないけど、なにかよいもの。」そういう世界があるんだろうな、くらいには、なんとなく感じてはいたけど、実際人前で「天使」という言葉を使うのは、はばかられた。実体験も証拠もないのだもの・・・・・。そこだけは、一歩下がって、ポコは自分から天使という言葉を使うことはなかった。

 そんな時、久しぶりにポコの友達からメールが来た。
 
 「最近どうしてる?映画でもいっしょに行かない?」

 本当に5年ぶりくらい。「行こう、行こう。」約束は、この週末にとするする決まった。

 子供が小さい頃、とても助け合ったママ友だ。子供の性格が似ていたので、苦労も似ていたし、また親同士も几帳面で真面目なところが似ていて、共感しあえた仲だった。
 映画の後の楽しいおしゃべりで近況を話しているうちに、ライヤー教室のことや、なぜか出てくる天使のことに話しが及んだ。

 「天使って言葉、会話にださないよね。ふつう・・・・。」と言うと、「ほら、これ見て。覚えてる?」と、友達が小さなストラップを見せてきた。

 「ほんと、かわいいのこれ、天使のストラップだよ。」

 ラベンダー色の石とワイヤーで編んだ、かわいいストラップだ。 

 「ポコママが、誕生日にくれたんだよ。ずっと、財布につけてるよ、私。今朝ね、このストラップのこと話そうって、ふと思ったの。そしたら、天使の話題が出てきたから、ほらねって思っちゃった。」
 ママ友も、けっこうデリケートなたちだったから、この5年で色々な経験をしたのかもしれない。なんとなく、虫が知らせているようだった。
 「うわあ・・。懐かしい。まだ持ってくれてたんだ~~!!」

 そういえば、どこかのお土産だったきがする。ちょうど誕生日が近かったから、プレゼントしたっけ・・・・。気に入ってずっと大事にしてくれてたんだ。天使が違和感あるって言ってるけど、けっこう私、自分で天使グッズ、選んだりしてたんだ・・・・・。

 天使のストラップを見るたびに、きっと友達は自分のイメージを思い出してくれていたのかもしれない・・・・・。そう思うと、なんだかちょっとうれしかった。

 
 帰りには、タカロから頼まれたコミックを買いに書店に寄った。今日が発売日だそうだ。ちょっと探してコミックを見つけた後、ふと、「フラワー オブ ライフ」とベルボックルで手に取った本のタイトルが浮かんできた。「タイトル、覚えてた・・・・・・。」探そうかと思ったけど、「まあ、いいか、高そうだったし・・・・。」と思って帰宅した後、家のパソコンで図書館の本を検索してみたのだ。すると、あの本が市の図書館の蔵書リストにひっかかってきた。

 「あるんだ。」借りれるなら迷うこともない。ポコは、貸出予約をポチっと押した。

 その時目に留まった、本のカテゴリーには、「古代遺跡探訪」とあった。
 

 

  

いるかのほし29 天使と遺跡2

いるかのほし29 天使と遺跡2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-01

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND