『 相合い相合い相合い傘 』

そいつはいつも傘を広げていた。
とんでもなく大きな青い傘。
……きっと凄く重いんだろうな。

初めて見たのは幼稚園の帰り道だったっけ。
しっかりと傘を支え、毅然と立ち尽くすその姿は結構素敵だった。
どんなアイドル歌手より憧れてた。

私の胸がそれなりに大きくなった頃。
彼の手は小刻みに震えるようになっていた。
額には大粒の汗。
そりゃあ疲れるよね、うん。

「おりゃあ」

容赦ない一撃。
私は華麗に跳んで、背後からキツいドロップキックをかましてやった。
彼の体はくの字に折れ曲がり、大きな青い傘もぐしゃりと潰れてしまった。
雨が落ちて来て、あちらこちらから悲鳴があがる。
知るか、馬鹿ども。
世界が雨に襲われようが、私がこのまま死んでしまおうが、そんなのどうでも良い。


彼は床に突っ伏して、情けない姿を晒していた。
私はそれにゆっくりと体を重ねた。


彼を休ませてあげる事が出来るなら、それで良い。

『 相合い相合い相合い傘 』

『 相合い相合い相合い傘 』

極短小説。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-30

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