忘れないでいるということ
私があなたのことを思い出せなくなった時がきても、私とあなたが居たことは永遠に変わりない
確かにあの時僕たちは愛し合っていた。一緒に過ごした時間全てが愛おしく感じた。いつかは忘れる、そう記憶は残酷だ。でも僕の肉体に宿って、彼女が、僕とともに生きているのだと信じている。正しくは僕の肉体が君を覚えている。悲しい思い出も温かい思い出もすべて浄化させて半透明で柔らかい布のようにして僕を包み込む。愛していた人の事を忘れられる訳が無いだろう。自分のことを愛してくれた人は、いつまでも、自分のことを愛してくれた人のままなのだから————
きっといつかは彼女の声を思い出せなくなってしまうのだろう。と、ふと思った。夕陽は油絵の具で塗ったようなオレンジ色をしていた。
忘れないでいるということ