思考実験『ページェルスの釘打ち銃』を巡る冒険?

『ページェルスの釘打ち銃』という思考実験を探し回ります。

 きっかけは、一冊の文庫本でした。

『アインシュタインの謎を解く』三田誠広著:PHP文庫。

 P240に、それはありました。


『ページェルスの釘打ち銃』


 以下、私なりに要約すると――
 (E)アルバート・アインシュタイン。
 (P)ボリス・ポドルフスキー。
 (R)ネイザン・ローゼン。

 三人の頭文字を取って『EPRパラドックス』と呼ばれる思考実験。
 この『EPRパラドックス』の理屈上の不備を証明してみせたのが、スチュワート・ベル提出の『ベルの定理(不等式)』。
 
 この『ベルの定理』を説明するのに用いられるのが『ページェルスの釘打ち銃』なる思考実験――とのこと。


 さて肝心の『ページェルスの釘打ち銃』なる思考実験ですが、三田誠広氏自身、『わかる人にはわかるのですが、説明にかなり手間がかかってしまうので、ここでは省略します。』と打ち捨てて(?)あります。(P240)

 そのかわりにと紹介されている思考実験が、かの有名なエルビン・シュレーディンガーの『シュレーディンガーの猫』です。もっとも、こちらはアインシュタインの援軍として引用されているのですが……。

 この思考実験は、確か某中二病アニメの眼帯ヒロインも口にするほどメジャーなものなので内容は割愛しますが、この思考実験、その説明を読めば、別に猫でなくても良いじゃん――と、きっと皆さん思うことでしょう。

 まあ、マザーグースの詩が日本語では意味不明でも、英文で読めばちゃんと韻を踏んでいて、言葉遊びになっているのが分かるように、猫でなければならない理由があるのかも知れませんが……。


 要するに三田氏の説明から推測するに、難解度、格(?)から行くと、

『ページェルスの釘打ち銃』>『シュレーディンガーの猫』となるわけです。


『シュレーディンガーの猫』よりも高次元な存在?!


 何だかとっても魅力的ではありませんか。

 きっと理解出来ないだろうけど、どんな思考実験なのかは知りたいな――と。

 私は軽い気持ちから、大手検索エンジン『Google』で『ページェルスの釘打ち銃』を検索しました。(2015/05/30 以降の検索日も同日ゆえ略)


『ページェルスの釘打ち銃に一致する情報は見つかりませんでした。』

 私は、びっくりしました。

 念のため『シュレーディンガーの猫』で検索。

 約172000件。
 わらわら、出てきます。

「……」

 私は、次に大手検索エンジン『Yahoo』で『ページェルスの釘打ち銃』を検索しました。

 『釘打ち』に関連した広告が出てきました……。
 それから、やはりその下に次の一文が……。

『ページェルスの釘打ち銃に一致するウェブページは見つかりませんでした。』

 私は、愕然としました。

 今日び、どんなに適当に文字を打ち込んで検索しても、何かしらにヒットする世の中のはず。
 それが『見つかりませんでした。』と出るのです。

 あるお笑いコンビのコンビ名の由来に、検索にかけてもヒットしないのでこれにしたという武勇伝がありますが、そのコンビが結成されたのは2003年。
 今や2015年。
 干支が一回りしています。
 
 試みにそのコンビ名を『Google』で検索。
 約736000件もヒット。(以降検索エンジンは『Google』を使用)

 ちなみに手元のPHP文庫『アインシュタインの謎を解く』ですが、『2005年11月18日 第1版 第1刷』とあります。
 末尾には『この作品は、一九九九年十二月に文春ネスコより刊行されたものに、加筆・修正したものである。』との事。

 それなのに『見つかりませんでした。』なのです。


 私は『シュレーディンガー』が人名であるように、『ページェルス』もまた人名だと推測し、こちらで検索してみました。

 結果――4件!
 まさかの一桁です。

 なにやら自然科学基礎論云々と、教会のホームページが出てきました。
 それぞれ2件ずつ。

 しかもどちらも表示されている内容は一致しているので、実質1件ずつ。

 教会の方は明らかに違いそうなので、自然科学基礎論の方にアクセス。

 自然科学基礎論-ケソの数学・物理ページ-WikiHouse(2006/01/13)
 <http://www.wikihouse.com/lagrange/index.php?自然科学基礎論>
 (アクセス日 2015/05/30)

 とりあえず、ざっと目を通すことにします。
 
「……」

 分かりません。
 そもそも分かろうとすらしていません。
 それでも目を通していると『ディラック』って名前が出てきました。

 これは『アインシュタインの謎を解く』にも出てきました。
 何より、某新世紀なアニメにも『ディラックの海』で出てきました。
 
 おそらく、こちらの『ページェルス』で間違いないでしょう。 

 ディラックの巨大数仮説なるものに関して、否定的な意見として、ページェルスの言葉が引用されています。

 まったくもってちんぷんかんぷんですが、とりあえず、ページェルスの存在は確認(?)出来ました。

 
 さて、お次は『釘打ち銃』です。

 『シュレーディンガーの猫』は、その思考実験の内容から言って、猫でなくても良いじゃんってことは先に述べました。

 けれど『ページェルス』の『釘打ち銃』です。

『ページェルスの芝刈機』
『ページェルスの耕運機』
『ページェルスの高枝切りばさみ』
『ページェルスの……』

 途中から、何やら大喜利のダメ解答みたいになりましたが、やはりページェルスは『釘打ち銃』じゃなきゃダメな理由があるのでしょう。

 とりあえず『釘打ち銃』からアプローチしてみましょう。


 ところで、そもそも『ベルの定理(不等式)』を理解しないことには先に進めないのでは?   ――と仰る方もいますかね? 

 いえいえ、今や私の目的は『ページェルスの釘打ち銃』なる思考実験の存在を確かめること。
 内容の理解ではないのです。
 そこのところ、お間違いなく。
 

 『釘打ち銃』で検索すると、『ネイルガン』と出てきました。(約1250000件)

 『nail』=釘
 『gun』=銃
 『nail gun』=釘打ち銃

「……そうだ、英文検索!」(やや、強引ですね?) 

 私は『nail gun thought experiment』で検索しました。(ちなみに『thought experiment』=思考実験です)

 ヒットです!
 それも、約541000件も! 

 うん?

 日本語使用者数(人口じゃなくて)は、約1億3000万人。 
 対して英語っていうかアルファベットの使用者数は……?

 それを考えると、この数字は多いのでしょうか? 

 まあとりあえず、最初にあるのを開いてみると、英文書籍の購入ページの『プレヴュー』が表示されました。

 Weired Universe:Exploring the Most Bizarre Ideas in Cosmology-Googleブック 検索結果 David A.J.Seargent
<https://books.google.co.jp/books?isbn=3319107380>(アクセス日 2015/05/30)

 ――とあります。

『奇妙な宇宙:宇宙論に関する最も奇怪なアイデアの探究』と、でも訳せば良いでしょうか?(拙訳です)
 
 表示されたプレヴュー(P198)には――。
 なんと『Pagels' nail-gun experiment』とあるではないですか!
 さらに冒頭に『Bell's inequality』の文字。
 つまり『ベルの定理(不等式)』です!

 と言うわけで、確認出来ました。
 

「思考実験ページェルスの釘打ち銃は、ありますっ!」(……古いですね)


 え、どんな実験かって?
 それは……。

 英文なので、読めません!

 読めたところで『わかる人にはわかるのですが、説明にかなり手間がかかってしまうので、ここでは省略します。』なので……。

 まあ、前述のアニメとかで使ってくれれば、一気に普及するんでしょうけどね……。 

以上、"思考実験『ページェルスの釘打ち銃』を巡る冒険?"でした。

 え、『冒険』じゃないって? 
 まあ、あくまで『冒険?』なので……。

思考実験『ページェルスの釘打ち銃』を巡る冒険?

 『ページェルスの釘打ち銃』なる思考実験、本当に、誰かに分かりやすく解説して頂きたいものです。
 ところで、もしかして今『検索』したら、これが最初に出るんでしょうか?

思考実験『ページェルスの釘打ち銃』を巡る冒険?

『ページェルスの釘打ち銃』なる思考実験が本当に存在するのか、あれこれ探し回ります。 でも、3709文字(以内)であっさり辿り着きます……。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-30

Public Domain
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