いるかのほし27 ポコと天使2

ポコと天使2

 うっすらと光を通すカーテンが、風に揺れている。ほんのりした明るさの保育室・・・・・。ポコが訪れたベルボックルは、小さな保育園だった。
 
 ついさっき、わらべうたの会は、先生のこんな言葉で始まった。子供たちは、先生とまるく輪になって座っている。
 「今日は、森に住む天使になりますよ。さあ、小さな天使が、森の中でめをさましました。」
・・・・・・・。天使。天使なんだ。先生はとっても静かな声で話している。
 「天使は、朝露のしずくが大好きです。朝起きたら、しずくをすくって、口に運びます。」

 子供たちは、ゆっくりしたやさしい先生の声を聴きながら、しずくを飲むまねをする。先生の動作は、ゆっくりと、やんわりした雰囲気で、不思議に子供たちもそれにつられて、落ち着いている。

 火曜日の午前に訪れた保育園ベルボックルは、ポコの家から2駅離れた住宅地の中のこじんまりした一軒家だった。1階と庭を、保育スペースにあててある。
 この日は、一般の親子も参加できる、「ライヤーとわらべうたの会」の日で、外から講師の先生がやってきているようだった。森の天使のまねをして、少し身体を動かした後わらべうたの時間になった。
 先生が青いケースから、ひざにかかえるくらいの小さなハープを出してきた。そのまま遊びたい子は、庭に出ていく。

 先生が、小さなハープをポロン・・・・と鳴らす。「ちょっと、音を合わせるわね。」・・・・・・ポロン、・・・・・ポロンと、弦を触る。
 「うわあ・・・。」聞いたことのない響きだ。これがライヤーかぁ。

 うす~~~く空気ににじむように、じわーんとしみわたる、光で描いた淡い水彩画のような音・・・・・・。小さいけど、伸びのある音が風に流れてゆくと、庭に出ていた子供も、「ああっ。」と言う顔をして、部屋に戻ってきた。

 「今日は何の歌ひこうかな。いっしょに歌おうか・・・・・。」
 先生は、季節の童謡や、わらべうたの絵をきれいな色の紙に書いてきていた。みんながそれを見て、「とりさんだ」とか、「かえる」とか指差すと、それにまつわる歌がライヤーで流れてくる。音に合わせて、お母さんや先生がいっしょに歌ったりもする。座って聞くとなると、子供の興味は、ほんの15分くらいしか持たなかったけど、やんわりふんわりした音と、やさしい歌声の時間は、今はすっかり大きくなった子供と過ごすにとって、ちょっとした異次元空間だった。

 「ライヤーの会は、子供連れでなくても見学可能ですよ。」問い合わせるとそう言ってもらえて、早速やってきたポコ。親子連れにまじって一番後ろで、座らせてもらったのだ。

 保育室を見渡すと、木のおもちゃや、布で作った手縫いの人形、自然の葉や枝で作った季節の飾りなど、やさしい雰囲気のものが置いてある。てんじょうからは、ラッパを持って翼を広げる天使の人形が、糸でつるされて下がっていた。

 「そういえば、虹色、天使の響き」って雑誌にも書いてあったっけ・・・・・。ここは、天使が好きなようだった。

 天使はポコには馴染みのないものだった。いまいち、ピンとこないのだ。「そりゃあ、素敵だけどね・・・・・。天使も仙人みたいなもんかなあ・・・・。それとも、宇宙じんにちかいのかなあ・・・・・・。それだったら、もしかしたら、天使も本当にどこかにいるのかしらん・・・・。」そんなふうに、よくわからない気持ちで、その日の会も終わりに近づいようだった。

いるかのほし27 ポコと天使2

いるかのほし27 ポコと天使2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-29

CC BY-NC-ND
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