夜空に光る星
新作品です☆
ぜひ読んでね!
出会い
「えー?そんなのおとぎ話でしょー。いい歳しておとぎ話の世界に振り回されるなんてどーかと思うんだけど。」
「星音はわかってないんだよ!おとぎ話っていうのはね、夢や希望が持てない悲しい人を救うためにあるの。私はその悲しい人の一人なんだよ!そして星音もね。」
「私が悲しいって?」
「そ!この世に悲しくない人なんていない。つまり!おとぎ話はこの世界を救ってるってことになるのよ!」
「へー」
わたし、月咲星音(つきさきほしね)。
このおとぎ話について熱く語ってるのは、親友かつ幼馴染みである、未来萌絵(みらいもえ)。
名前からしておとぎ話に出てきそうな私たちだけど…。
実は私はおとぎ話が大嫌い。
子供に夢を持たせるとか言ってるけど、そんな夢はいつか壊される。
その時、子供はどう思う?
《あぁ。こんなことに夢を持ってた私って悲しい…》
って、きっと傷つく。
所詮おとぎ話だって思うかもしれないけど、私はそこまで考えているんだ。
「あ!そうそう。見て星音!星音が絶対喜ぶもの持ってきたの」
「私が喜ぶもの?」
私が喜ぶもの…。
そうそう喜ばない私が喜ぶものって言ったら、
空関係のもの。
天体観測とか星座観測とかが好きな私。
星や月を見ていると、自分の心まで綺麗に透き通る気がして。
「えーっとねぇー…」
学生カバンの中をごそごそとあさる萌絵。
どうやら時間がかかりそうなので、私は教室の窓から空を見上げた。
春になり、少し暖かくなったとはいうものの、まだ少し寒さが残るこの時期。
都会から6年前引っ越してきた私は、離れ離れだった萌絵と再会。
2人で小さい頃の話で盛り上がったりして…。
あの頃は萌絵もまともで、おとぎ話なんてって大笑いしてたのに。
校庭に咲く桜はすでに満開の時期を過ぎ、散り始めていた。
風が吹くたび桜の花が舞う。
でもその中で、一本だけまだ満開の木があった。
「あ、あれ…今年も1番だ。」
通称〔永遠の木〕と呼ばれるその木は、毎年1番長く満開の時期を保っている。
あの木の下で告白すると、必ずOKがもらえるだけでなく永遠に一緒に居られる なんてジンクスもある。
…だけど。
私はそんなの信じない。
信じたところで何もならないし、そんなの迷信に決まってる。
–––––––ここまできたら、みんな気になるよね。
どうして私がこんなにもおとぎ話やジンクスを信じないのか。
それは2年前にさかのぼる––––––。
「星音ちゃーん!告白するんだよね?頑張って!」
この学校にはもう一つ、〔恋畑〕と呼ばれる場所があって、そこはその名の通り作物や植物を植えている畑。
私は好きな人に告白するために、その人をそこに呼び出していた。
その時友達だった新島紗江子ちゃんって子は、私の淡い恋心を応援してくれていたみたいで。
恋畑にも、そこで告白すると永遠に結ばれるっていうジンクスがあって。
その当時は、私もそのジンクスを信じきっていた。
「あ、あの…わ、私っ、あなたのことが好きなんですっ。付き合ってください!」
ぺこりと頭を下げた私に帰ってきた言葉は––––––––
「俺、彼女いるから無理。つか、もともとお前に興味ねーし(笑)」
彼女がいた。
それなら仕方ない。
それだけなら許せたのに。
もともとお前に興味ねーし…って?
私、こんな最低な奴に恋してたのか。
こんな最低な奴の為に今まで苦しんで
今日まで悩んで
勇気出して告白したのか。
「ちなみに彼女って誰か教えてくれる…?」
「それでお前が俺と関わり絶ってくれるんだったら言ってやるよ。」
言われなくても関わりたくもない。
「わかった。」
「紗江だよ。新島紗江子。もういいか」
信じられなかった。
あんなに応援してくれてた紗江子ちゃんが。
私は、その人が好きだって紗江子ちゃんにも話してて、それを分かった上で応援するって言ってくれたのに…。
その日以来、私はジンクスなんて信じなくなった。
信じても裏切られるだけだから。
もちろん好きな人も作っていないし、紗江子ちゃんとは縁を切った。
「ちょっと星音!どこ行ってんのさ。これだよこれ。」
「おー♪綺麗だねー…」
それは、満月の形をした透き通った宝石のついたネックレス。
「これね、パパが出張でフィンランドに行った時にもらったんだって!本物の月のかけらを使ってるらしいよー。それを細かく再現したものと組み合わせて、満月の形にしたんだってー。」
「嘘っ!?それすごいよ!月のかけらって、1000年に1度しか見つからないって言われてるのに!しかも、3年前に見つけられたんだよ?」
「そうなの?」
「うん。ね、それってどこでもらえたかわかる?」
「えー?これ、あげるよ。あたし、月とかあんまわかんないから、星音の方が似合うと思う♡」
「え!?ダメダメダメダメ!こんな貴重な物もらえないよー。」
そう。
当たり前。
いくら親友が言ってるからって、さすがにこれほどの物はもらえないし、もらうわけにもいかない。
「いーのいーの!このネックレスも、知識があって本当の良さが分かる人につけてもらった方が嬉しいと思うんだよねー♪だからさ、ね?もったいないよ、私が持ってたら。」
「う、うん…じゃあ…」
本当はすっごく欲しい。
貰えることに対して、飛び跳ねたいくらい嬉しい。
でも、ここは教室。
私はめったにはしゃがないし喜ばないというキャラだからそうもいかない。
「ねぇ、このネックレスの名前とかも分かったりするの?」
「ムーンネックレス。通称ムーネック でしょ?このネックレス、ずっと欲しかったからわかるよ。」
「へぇーっ!ムーネックって言うんだ♪」
「超レア物なのよ。一つ数万円っていう。」
「高っ!パパすごーい♡」
「萌絵のパパ、アクセサリー店の店長だっけ?」
「うん!MIRAIっていうお店の。」
「MIRAIって超有名なところだよね。萌絵はお金持ちでいーなー。」
「とんでもない!」
ムーネックの話題で盛り上がり、私たちは放課後までその話ばかりした。
すごく楽しくて、嫌なこととか悩みとか苦しみとか、全て忘れて普通に笑えた。
よかった。今日も普通の女の子として普通に笑えたんだ。
「もーえ!帰ろー♪」
「あ、ご、ごめん。今日はちょっと…。お、お母さんが迎えに来てくれるんだ!」
「そっかー。残念。じゃあまた明日ねー♡バイバーイ!」
「バ、バイバーイ」
様子がおかしい萌絵を、私は不思議に思いながら学校を出た。
「ねぇ、キミ、月咲星音ちゃんだよね?」
「え?そうだけど、あなた誰?」
「ボクはシズク。キミのパートナーだよ」
「は?パートナー?何言ってるの。初対面なのにパートナーって」
「そのネックレス。ムーネックによく似てるけど少し違うんだ。」
「え?」
私は無意識にネックレスを触っていた。
「そのネックレスを未来萌絵ちゃんのお父さんに渡したのはボク。そしてその時に、そのネックレスに力を込めておいた。」
「力?」
「萌絵ちゃんが、キミにネックレスを渡す という力。」
「え?じゃああれは、仕組まれた…?」
「といっても、萌絵ちゃんの意識に少しだけお邪魔して、キミに渡すように仕向けたんだけどね。」
「へ、へぇー」
なんかよくわからない。
ムーネックはムーネックじゃないってこと?
「それでね、キミは選ばれた人間なんだ。」
「は?」
「星月界(ほしつきかい)の中でも、Sクラスに認定されるほどの知識。その豊富な力で、この世の中の人々を変えて欲しい。」
「はい?」
「キミは、人の意識の中に入り込む能力を得ることができる。意識がある時でも、ない時でも、夢の中にだって入りこめる。その能力で、人々の星と月への意識を高めて欲しいんだ。…ここ最近、星月界は滅ぶという悪い噂が立っている。そしてその噂が、現実になりかけているんだ。…人間が、星や月の関心をなくしてしまったせいで、星月界が必要ないと判断されてね。1ヶ月以内に、あと10人が星や月への関心を示さないと滅ぶ。」
「…なんか、よくわかんないけど…大変なのはわかった。意識に入り込んで、星とか月への関心を持たせればいいのね。」
「そう。」
「わかった。やってみる。」
自分でも不思議だった。
こんなにもあっさり受け入れるなんて。
あれだけ現実味のないものは信じなかった私が、見たこともない少年と存在さえ怪しい世界のために現実味のない話を信じている。
なんか、すごい。
私、変わったな。
「能力は使えるようにしておいた。あとは頼んだよ、星音ちゃん。」
「任せて!!」
☆続く☆
夜空に光る星
最後まで読んでくれてありがとー!
次話も読んでねー!