そして。
原稿用紙三枚程度の短い文章です。
そして。
こんな夢をみた。
雲一つない空が遠くまで続いている。
私はフェンスを眺めていた。自分がいるここはどこなのかが知りたくて、首を動かした。…が、視界は変わらない。ただひたすらにフェンスの向こう、ビルを見ている。見せられている。
そのとき、くん、と何かに引っ張られるように私は歩き出した。ゆっくり、確実に近づいてくる“命を守るための柵”に恐怖を感じ、目を閉じようとしたが瞼が下りない。鼻の先すれすれにそれがくると、目の前に青が広がった。そして青は弧を描くように上へと昇り、今度は見慣れたコンクリートと、動くカラフルな鉄の塊が視界を埋め尽くす。呼吸が浅くなるほどの浮遊感に襲われた。
嗚呼、落ちる。
頬を刺す風とは裏腹に、速度は遅く感じられた。指一本まで石のようだったのに、今は随分と柔らかく動く。あごを引くと、私が立っていたであろう建物の屋上があった。落下していくだけの身では、はっきりと確認できないので見間違いかもしれないが、そこに誰かが立っているように見えた。
耳元の風の音が大きくなってきた。濃い灰色の硬い地面が迫る。次々と流れていく窓はまるで生のカウントダウンのようだ。
七、六、五。
それらをどこか冷静に見る自分がいる。
四、三、二。
私ではない声が重なる。
一。
押し殺した笑い声が響いた。
耳にこびりつく首の骨の音。体の中で内蔵が潰れて血液が飛び出す激痛。激痛。赤く染まるその端に、また誰かが私を見下ろしていた。
お疲れ様、お憑かれ様。
世界は突然、テレビの砂嵐状態になった。耳障りな音と共に、今こうなるまでの映像が逆再生されていく。
ぐるん。
すべてが回る。
私はフェンスを眺めていた。後に何が起こるのか、何をさせられるのかを覚えている私は心の中で悲鳴を上げていた。…が、運命は変わらない。ただひたすらにフェンスの向こう、ビルを見ている。見せられている。
お疲れ様、お憑かれ様。可哀想にね、また次も?
そのとき、くん、と何かに引っ張られるように私は歩き出した。
そして。
この夢を一週間見続けていたことがありました。冷や汗ぐっしょりで目が覚めるもんですから、毎朝気分が下がって大変でした。今でも、人を殺す夢や逆に殺される夢、追いかけられる夢…。悪夢三昧です。
ここ最近は暗闇の中で赤い光を見続けるという不思議な夢も見ますが、夢を見ないまたは見ても忘れてしまうパターンが多いです。
うーん、好きな本の夢とか見たいのになあ。