Longing
都会の月
気がつくといつもここに来てる。
原体験の場所、、って言う訳じゃないけど
きっと本当の意味でのあたしの居場所なんだろう。
ここ東京って街は、言うなれば、とても散らかった部屋。
夢を追う、って言えばかっこいいけど
在り来たりな、ストーリーの裏のどす黒さは
あの町で育った私には気づくことができなかった。
こうやって波の音を聞いていると思い出す。。。。
多分何かのタイミングで鍵をかけてしまった
本当は触れたいけど、触れられないすてきだったあの笑顔。
かくいう私だって、
そんなセンシティブでは生活なんてできない。
コピペみたいな毎日。
違うとすれば、
部長が奥さんとウマくいってない八つ当たりがあるくらい。
しあわせ、、、ってなんだろう。
それなりの年で恋愛して、結婚して、妊娠して
よくあるドラマみたい。
でも、ドラマは3時間に一回授乳で起こされたり
おっぱいが張ってるのに飲んでくれなくて
痛みに耐えながら搾乳して捨てるって言うゲンジツを映さない。
だ っ て 、そ の 方 が 綺 麗 だ か ら 。
幸せそうに見えるあの夫婦だって
旦那が浮気したとか、
奥さんがホテル街で誰かと腕を組んでいたとか
そんな根拠のない噂一つで仮面夫婦のレッテル。
ほんと阿呆くさい。
わたしが誰かと愛し合って
その愛を守る故に、風俗で金を生み
事故的に妊娠し、中絶したら
世間体的には、ひどい旦那に、おかしな妻、なのだろうか?
どれだけあたしたちがあいしあっていたとしても。
でもそんな悩みは希有だ。
わたしは先日誓った愛をなくしたばかりだ。
私が私である故に、
彼には見せなかったいろいろなことの蓄積が
月と地球の関係、私と彼の関係を終わらせてしまった。
昔何かで聞いたことがある。
月の裏側は地球(ここ)からは見えない。
そもそも、アポロ13号が月面着陸したことだって疑わしいらしい。
あのひとに本当の私は見えていたんだろうか?
あんなにそばにいたのに
夢の途中
うすぼんやり覚醒した、、、まぶしい。
タオルケットに抱かれている私の呼気は
たぶん基準値以上のアルコール、そして溜め息。
夏の日差しは朝早くからとても強く、強制的に私を起動する
これが冬の朝だったら、穏やかに頬をなでて、二度寝を誘うのだろうけど
タイマーが切れた空調は冷気など吐き出す訳もなく
東向きの部屋はもう既に体温ほどの気温。
ええ、まとわりつくのは夢だけではなく、、、
ものすごく幸せな夢に抱かれていた、、のだけれど
どうにも思い出せないモヤモヤから一日はスタートする。
テレビの何の確証もない12星座占いが一位でも
素直に喜べない、
タイマーでセットしていたコーヒーが薫る
そしてコーヒーポットを持って気がつく。
「二人分のコーヒーの重さ」ってことに。
まだまだ私は夢の途中にいる。。。。
褪 め な き ゃ よ か っ た の に 。
高速のイモムシ
思い立った訳ではなく、自然にそうなっていた。
夏場の擦り傷のように、うじうじと腐っていたあの日の残渣を
これでもかと消してきた日々。
盆地の夏は始まってもいないのに、うだるような暑さ
すがるように探した二人の軌跡は、残っていたり、消えていたり。
嘘みたいね。
あの日、あの場所には
確実に笑顔の二人がいたっていう事実。
時を少し。。。
修学旅行でしかこの町を知らなかった頃
バイト先の有線で流れていたあの曲の歌詞を思い出す
「地下鉄の窓越しに見えた、烏丸の駅に佇む、、、(時を少しby Brats on B)」
自分たちがその景色の一部になるとは想像もしなかったあの日
この町は何の意味も成さなかった。
あなたといた時間が、この町に意味をもたせた。
たった二年で一生忘れられないくらい、あなたは
わたしにこの町を刻みつけた。
あなたには、今もわたしの残渣はありますか?
優しい嘘
彼は言った
桜の樹の下には死体が埋まって居る。と。
それはつまり
花が咲くには、土台となり養分になる存在が
必要って事を暗に例えただけで
本当に死体が埋まって居るわけではない。
ミステリーの小説なら
揉めた男女のどちらかが、
毎年咲く桜に想いを馳せて
毎年逢いに来られるから、、、
なんて言う陳腐な物語になりそうだものね。
お前だけだよ、なんて言う
花曇りにも似た優しい言葉は
貴方を飾る華を少しでも長く保つ為の
優しい嘘。
どうせじきに散る宿命。
桜の樹の下には
死体が埋まって居る。
また春に会いましょう
サヴァラン
サヴァラン と言ってわかる人はどれくらいまで減ったのだろう
洋酒の染み込んだ、割と大人向けのスイーツ。
昨今流行のわかりやすい如何にもって言うものではないけれど
ラムだったりブランデーだったりの酒精の香りは
なんとなくワクワクしたのを覚えてる。
背伸び。の象徴。
苦みと甘みのマリアージュを
なんとなく誇らしげに思ってたあの日。
もう背伸びなんかしなくても十分大人だし、
子供で居たいと思ったって、
時間は無常にも年齢と責任を目の前に積んでくるし
置き去りにしてきた感情とか、閉じ込めた想いとか、
そんな今となってはどうでもいいことですら
ちゃぁんと利子をつけて目の前に突きつけてくる。
あのひのわたしへ
きっと人生ってサヴァランみたいなものよ。
甘くもあり、苦くもあって、そしてとても香ばしい。
ちゃんと味わって此処までいらっしゃい。
月曜日が現実をつれてくる
このまま、時がとまればいいのに。
切にそう願った。
私のことをよく知らないひとにだけ
騙ることのできる理想論を吐き過ぎたようだ。
当然人生もメンタルも振り子
振れたぶん、ちゃんと揺り戻しがある
そんな立派な「何某」ではないよ、わたしは。
できないから雄弁に語ってしまう。
あなたは自分のことをくずといったけど
本当のくずは私だ。
都会の蟻の行列に個を没して私は日々の糧を奪いにいく。
大切なものをすり減らしながら、
幾重にも理想を塗り固めながら。
げつようびがげんじつをつれてくる
Trauma
祖母と最後に会った日を思い出した。
母が何の気なしに、おばあちゃんに会いに行こう
と言うから、私はクルマを走らせた。
祖母の暮らしていた特別養護老人ホームへ。
穏やかな時間にはなんとも無かったのだけれど
面会時間も終わりに近づいて、
いよいよ帰るとなった時に
全く泣く要素なんか無かったのに
涙が止まらなかった。
あなたは昔からそう、おばあちゃんと離れるときは
毎回泣いていたわ、と母が言った。
その一月後、祖母は空に還った。
そして、今日は母親の誕生日。
ここのところ、ずーっと帰れていなかった実家
ずーっと張り詰めていたこころ、
そんなものが
重なったせいだと思いたい。
涙が止まらない。
また来年もケーキを渡せますように、と
心の底から願った。
啓示
ポキンって折れたら
色んな矛盾も徐々に不整合を引き起こして
まるでカルシファーの魔力が解けたハウルの城みたいに
バラバラに崩れていくのが見える。
ハッピーエンドはすぐそこ。
鈍色の冷蔵庫
鈍色の扉を開くと、
一見見慣れたものがたくさん仕舞われていた。
どれも「たべかけ」の何か。
無造作にソースがかかったトンカツとか
変色したリンゴ、しわくちゃの紙に包まれた
半分だけ残ったチーズバーガー
一番記憶に残っているのは ケーキ
ピースではなく、中途半端に食べ残した
お誕生日によく見る ホールのショートケーキ。
その冷蔵庫に違和感を感じたのは
食べ物以外のモノも仕舞われていたこと。
中途半端に組み上げたジグソーパズルとか
渡せなかったラブレターとか
あまり続かなかった元恋人との交換日記なんてものも、、、
今となってはとっても甘酸っぱいを通り越して
苦笑いの逸品たち。
とにかく雑多に、いろんなものが詰まっていた。
そんな冷蔵庫の最下段にひときわ大きな引き出しがあった
何が入っているんだろう?って開けたら
私が、眠っていた。
わたし、と言っても今ここにいるわたしではなく
あの日、夢見ていた「理想のわたし」
あぁ、ここは夢の墓場だったのね。
在し日に諦めてしまったものが全て詰まっているんだわ。
そしてその重さをたまに確認しながら
人生は続いていくのね。
ここに終うモノがもうこれ以上殖えませんように。
夢の面影
想い入れのある場所で初心に帰った、なーんて
よくありがちなタイムラインを目にする。
あの頃見ていた夢は
夢のまま置き去りになって
別に錆付いてるわけでも、針が動かないわけでもない人生。
その初心のまま突き進んで
たくさんの努力をした彼は
夢の世界の住人になった。
あたしは どうか。
あしたは どうか。
詮無きことに思いを馳せても
現実が色褪せるだけだね、って
笑うだろうか。
別にいいじゃんね?
今 日 が あ の 日 の 夢 の 続 き で な く て も 。
きっと あしたは あたしを いきている。
朝焼け
つまらない仕事のせいで
わざわざ自腹で派手な社長の指揮命令系統にある
都市型ホテルに泊まる平日。
ここのカレーは美味しいし
言うなれば
ベッドメイクしなさい、しなさんな。を
適宜に聞いてくれる環境と感覚はとても素敵で
何なら目の前に見えるタワマンを解約してもあまりある快楽と似た堕落を肯定する。
対価
対価
対価。
釣り合いよりも現実を優先したら
都会の片隅でワタシは小さな部屋に囚われた。
幸せかそうでないか
ではなく
そこに現実があるだけ
ストレス解消を言い訳に呑んでも
このコロナ禍で飲む罪悪感と
いずれワタシにも襲いかかりかねないコロナに怯え
問題を先送りしている事に気づけてしまう
無用の精神の細やかさに中指立てつつ
大親友が入院してしまったと言う事実を
どう受け止めたら良いものか?を
自問自答する
タカナワコドクナヘヤ。
Mass
肝臓は沈黙の臓器
それはまるで社会に放り出されたワタシみたいに
淀みを受け止めざるを得ない居場所に縛られたから
叫びたくても叫べない不条理。
そんな肝臓が
ついに悲鳴の片鱗を見せたら
こんなにも不安になるものね。
それは同時に
毒を、淀みを全て押し付けてきた
現実とやらに
利子をつけてお返しする機は熟した
そして
あらためて
強さを認識する事になるなんてね。
6番目の駅
毎朝通勤電車に乗る前に
プレイリスト全曲シャッフルをして
最初に掛かった曲がその日の予想図
的なちょっとした占いをしている
こんな乙女っぽい事をしているだなんて
職場の面々には大っぴらに語れはしない
鉄仮面が錆びてしまうから
そんなプチ占いで
とあるサントラが流れた。
女の子が妖の世界に迷い込んで
お風呂屋さんで修行して成長する、、
あのお話。
そして、その彼女が
龍を助ける為に双子の魔女に会いに行く時の
あの曲。。
最近は行ったっきりで
戻りの電車はない、、、
マジかー、、、
不器用な爺様のセリフがカラカラと響く。
まてよ、、
ここから六つ目の駅って
まさかの勤務地最寄駅。
気がついた時、私は誰よりも
カオナシになっていただろう。
でも、お話には続きがあったし
ハッピーエンドって事を
私は知ってる。
だから、今日のストーリーもきっと
ハッピーエンドになる。。。。。。。
間もなく6番目の駅。
彼女はこれから渡り合う魔女が一人だけど
私は愛すべき魑魅魍魎どもと渡り合う。
龍を連れて帰るために。
そして、この世界へ戻ってくるために。
分界点
ぶれている男と話すのは無駄でしかない
論破しても論破しても話の根本をすり替えるんだから
当然のイタチごっこだし
建設的な解決なんてあるわけがない
挙げ句
何かあったら私に直接言ってこい っていう言葉通りにしたのに
こんなことで連絡しないでください って、
思考回路でどんなご都合主義の要件定義がされているの?
私の頑張りがあなたの評価につながるようなレールは引かないし
その椅子から引き摺り下ろしてやる、、、と思うくらいには憤っているけど
所詮今の居場所でしか生きられない井の中の蛙に興味はないわ。
海の広さも空の深さも知らないで、茹でガエルになればいい。
私が手を下すまでもないわ。
Longing
Longing
憧れ、憧憬
思い返せば私の人生はいつだって出来上がった何かに憧れて
なんとなくその表面をなぞってやり遂げた気になっていたことが多いと思う。
学園祭でろくに練習もしなかったガールズバンドをした時も
派手なメイクしただけで何かやれた気になって有頂天になったり
職場を変わるたびに ある程度までは頑張るけど
概要知った途端にやる気を無くしたりとか。。。
追い越すためには 憧れるのをやめましょう。
とてもいい言葉だなと思ったのと同時に
空っぽな私を浮き彫りにしてくれた。
生き様の芯は変わらないし、変われない。
そもそも変化させようということ自体が烏滸がましいと思っている節すらある
道路に敷かれたアスファルトが
通る車のタイヤの重みでゆっくりと轍になっていくように
止むを得ず変化してしまう、くらいに思っていた方が
なんか 気分的にも重くなくていい。
この世の中は いろんな轍があって
その轍に溜まっているものは 善意だけではなくて
ヘドロのように澱んだ悪意を
稀に被ってしまうことがあるけれど
抗って 抗って 傷ついても
何度でも 届くよう 叫んでいるよ
魔法の手を棄てた夜
私は魔法使いだ。
兎角人生ってヤツはイベントに満ち溢れているけど
見合った演出がなされないことの方が多い。
そりゃ彼氏彼女の再開の様なクライマックスで
lalala love songのキラキラしたイントロが
都合よく流れるわけはないし
流れたら逆に気持ち悪い
イベント事なら
そんな演出も、不自然では無い。
だから
わたしは
魔法使い。
そんな魔法がお気に召さないマグル達は
安全な場所から魔女狩りをする
石を投げる
やれるものなら、やってご覧なさい。
私より素敵な魔法を架けられるのかしら?
兎角
ウサギにツノはない。
特技なんか持たない方がいい。
目立たぬ方がいい。
平穏無事で安穏が一番だ。
授業参観や運動会で馳せ参ずる父親たちの出立が
無難な格好に終始するってのはこのムラ社会ニッポンならではの光景。
悪目立ちして、その矛先が我が子に向かぬよう。
そんな配慮なのか、と気がついたのはここ数年ね
私は私を押し通せるほど強くもないし
私は私を押し殺せるほど弱くもない
結局は中途半端。
いつだって中途半端。
Longing