時間のなかで

人生は人間一人一人に1度しか与えられない。
たがらこそ、その1度を悔いのないように全力で生きる。
だからこそ、その1度の限られた時間を大切にする。
だからこそ、その1度の出逢いを大切にする。
だからこそ、その1度を楽しむ。
だからこそ、その1度を悲しみ、嘆く。
たがらこそ、その1度で愛を知る。
やりたいことは山程ある。
しかし、今の私たちではそれを全てするだけの時間もお金もない。
たった1度の限りある時間の中で全てをすることは出来ないのだろうか…。
これはそんなことを考えてい女子高校の物語です。

不安と出逢いとワクワクと

真っ白なカッターシャツを羽織り、新品の真っ黒なタイツを履いて、まだ新しく綺麗でしわのないカチカチの制服に袖を通すと、新しい服の匂いが鼻腔をくすぐる。鏡台に向かい、黒く長い髪を丁寧にとかして、前髪の分け目を作る。まだ教科書もなく軽い鞄を持ち、黒く光るローファーを履く。何もかもが真新しく、期待と不安とが入り混じって気持ちが足取りを軽くさせる。
「いってきます。」
期待と不安に胸を躍らせながら、新たなスタートへと一歩足を踏み出した。

自転車に乗り心地良い春風を切りながら坂を下り駅を目指す。次々と流れていくいつもの街並みは今日は何だか輝いて見える。いつものお店、いつもの人々、いつもの風景なはずなのに心次第でこんなにも変わるものなのか。
そんなことを考えながらはしっているとあっと言う間に駅についた。
もう薄々気づいているとは思うが今日は高校の入学式だ。私の最寄り駅から高校の最寄り駅までは京阪本線一本で通うことができ、その上中心都市へ向かう方とは反対の方向であるため人混みを押し潰されることもないので、普通列車でゆったりと通学する予定だ。(ただ私の最寄り駅が普通列車しか止まらないということは敢えて黙っておこう…。)少し余裕を持って家を出たため予定より早めに乗り込んだ車両はガラリとしているまでとは言わないが、座席がほとんど埋まるほどの人数程しか乗車していなかった。私は空いている席に腰をおろし、ひと息ついた時、プシュー、という開閉音が鳴ると共に電車が出発した。ガタガタと揺れる車両に身を委ねながら、流れる見慣れない景色を流していった。

時間のなかで

時間のなかで

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-23

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