聖女ドラゴンヴァルキリーⅡ

第Ⅲ部  聖女・ドラゴンヴァルキリーⅡ編

第十七話
2人目の聖女

ここは深夜の植物園。
閉園時間はとうに過ぎ、いるのは警備員だけであった。
「うー。何か出そうだよねー。こうも暗いと。」
警備員はブツクサと文句を言いながら見回りを続けた。
角を曲がったところで巨大な影があった。
警備員はひっくり返りながら叫んだ。
「うわぁ!って何だサボテンか。」
それは巨大なサボテンであった。
「全く驚かせやがって…」
サボテンに背を向けブツクサ言いながら再び歩きだす警備員。
「昔の特撮ドラマとかだとこうやって歩きだすと後ろからあのサボテンが襲ってきたりしてさ…」
「ボテン!こんなカンじかい?」
話しかけられて後ろを振り向くとそこにはサボテンの姿をした魔女がいた。
叫ぶ間もなく、警備員はサボテン魔女に抱きつぶされてしまった。
警備員の死体を自分が元いたところに引きずっていき、埋め始めるサボテン魔女。
そこにパチパチと手を叩きながら近づいてくる影が一つ。
白衣を着た20代後半ぐらいに見える女性はサボテン魔女に言った。
「よしよし、言われた通りにやってるな。」
「ボテン!女医サマ、いらしていたのですか!」
女医と呼ばれた女性は胸ポケットからスルメの干物を出しかじりながら言った。
「そうやって世間では騒がない程度の都市伝説みたいな事件を起こしていれば聖女はいずれ現れる…それは私の最高傑作の魔女ドラゴンヴァルキリーが証明してくれたからね。」
「ボテン!ワレらガワのドラゴンヴァルキリーをコロしたニクき聖女!カタキはカナラずや!!」
「それはどうでもいいのだよ。」
女医はプチリとスルメを食いちぎった。
「私は興味があるだけだよ。聖女ドラゴンヴァルキリーに。」

香矢が志穂から預かった写真を見ながらボソっと呟いた。
「結局、どうなったんっスかねぇ…」
あれから半年近く過ぎようとしていた。
あの日以来、志穂はまだ帰ってきていない。
ユリが香矢の頭をポンポンと叩いて言った。
「多分、志穂ちゃんが勝ったのよ。」
「何を根拠に?」
「カン。」
香矢は頭をポリポリと掻いてから言った。
「あの日、富士山が噴火かとか騒がれたっスけど…やっぱりあれって二人の戦いに関係あるっスよね?」
ユリは香矢の写真をひったくって言った。
「…かもね。多分、どっちかが魔法で引き起こしたんでしょ。」
「あーもう!ユリさんは何でそんなに平気そうなんスか!!」
「だって無事だと思っているから。」
「だから何を根拠に!」
「だからカン。」
香矢は立ちあがり、ユリから写真を受け取ると言った。
「…まぁ信じてみますか。ユリさんのカンを。」
話しているうちに扉を開けて店内にマリが入ってきた。
ユリが聞く。
「あれ、今日はマリのシフトじゃないでしょ?」
マリは少し焦った風に言った。
「もしかしたら、志穂ちゃんがいるかもと思ってきてみたんだけど…」
「何スか?」
香矢も身を乗り出して聞いてくる。
コーチがミルクを出したのでそれを一杯、二杯と飲み干してからマリが話し始めた。
「ちょっと気になる話を見つけてきたの。ある植物園で人が行方不明になったって…」
ユリが首をかしげて言う。
「別に行方不明事件なんて珍しくないでしょ?」
マリがもう一杯ミルクを飲んでから首を振って答えた。
「だって植物園にいたのは間違いないんだよ?行方不明になったのは植物園の警備員でね。IDカードみたいなので出入りをチェックしていたわけ。その日は確かに入っているのに出ていった形跡がない。山に入って失踪したのとはわけが違うんだから。」
コーチも話に入ってくる。
「ねっ、植物園のどっかに隠れているって可能性は?」
マリは再びミルクに手をつけてから言った。
「いいえ、マスター。一体、何のためにそんな事をするんですか?」
香矢が立ちあがって言った。
「丁度、閉店時間っスし、その植物園に行ってみるっスよ。そんで隠れているアホ警備員を見つけ出せばマリさんの疑問も万事解決っスよ。」
そして一呼吸置いてから言った。
「ところでマリさん…牛の乳を何杯飲むつもりっスか?」

植物園は閉まっていた。
というか臨時休園していた。
無理もない、行方不明者が出ているのだから。
「でも、これじゃ入れないっスね…」
香矢がそう言った後にマリがユリの方に向けて言った。
「それじゃぁユリ、頼むわね。」
「ほいほい。」
ユリが持っていたポシェットから何やら道具を取り出し、閉まっている入口のカギをいじりだした。
「ねっ、まさか不法侵入…」
コーチの言葉にマリがにっと笑い言った。
「大事の前に小事は仕方のない事なのですよ、マスター。」
香矢が心配そうに聞く。
「でも、こういうのってセキュリティみたいのとつながってて無理やり開けると警報が鳴るんじゃないっスか?」
マリは誇らしげに言う。
「それは私が前もって調査済み!このドアはただのドアでセキュリティは中のあの…ここから見えるゲートからです。後は入った後にセキュリティを解除すれば問題なし!」
「あっ開いたよー。」
ドアはあっさり開いた。
コーチと香矢はため息をついた。
「魔女対策本部って…盗賊集団スかね?」

中のセキュリティもあっさり解除して四人は堂々と入って行くのであった。
ユリがポシェットに道具をしまいながら言った。
「セキュリティを解除する時についでに調べたんだけど…まだ、行方不明になった警備員さん、いるみたいだね。IDが残ってるよ。」
香矢は呆れながらも言った。
「警備員さんがまだいる可能性があるのは分かったっスけどどうやって探すっス?ここ意外と広いっスよ。」
コーチが香矢の肩をポンポンと叩き言った。
「ねっ、そこは人が探さないところを探すべきじゃないか?見つからないんだからさ!」
ユリが指差して言った。
「あっ、土の中とかどう?ほら、あのサボテンの下の土、他とは違う感じだよ。」
マリが笑いながら言う。
「おいおい、忍者じゃないんだからさ…」
「ボテン!オオアたり!!」
目の前のサボテン…サボテン魔女が動き出した。
驚いた香矢が言う。
「大当たりって…忍者!?」
「ボテン!そっちではない!ケイビインはこのシタでネムっているぞ!!」
「ねっ、逃げるぞ!!」
コーチの声に四人は走り出そうとしたが
「ボテン!逃がさん!!」
サボテン魔女が体中の針を飛ばし四人を壁にはりつけた。
「ボテン!おマエらから聖女のニオいがする!」
「…こいつの狙いも志穂さんっスか。」
香矢は顔をしかめた。
「ボテン!聖女をコロしてあのおカタにホめてもらう!!」
その時、フルートの音色が園内に鳴り響いた。
「ボテン!ナンだ?どこだ!」
「…志穂さん?」
香矢はかつてカマキリ魔女から助けに来てくれた志穂の姿を思い出していた。
「ボテン!そこか!!」
針を廊下の近辺の壁に向けてぶつけた。
その奥から一人の影が出てくる。
それは志穂ではなく…
「友知ちゃん…」
マリが驚いて呟いた。
「そんな…魔女の方のドラゴンヴァルキリーが出てくるなんて…」
香矢がうなだれて言うと友知はフルートをしまって答えた。
「魔女…?魔女ドラゴンヴァルキリーは富士山の上での戦いで聖女に敗れて死んだよ。」
コーチが疑問を口にする。
「ねっ、それじゃあ、お前は一体…」
友知は胸の十字架を指で弾いて言った。
「そうね、志穂がⅠだとするのなら…アタシは聖女・ドラゴンヴァルキリーⅡ!!」
胸には銀色の十字架のネックレスと…志穂の金色のネックレスがあった。
そして左手で銀の、右手で金の十字架を握りしめた。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
そう叫ぶと左手で銀の、右手で金の十字架を引き千切った。
友知の体は2つの十字架を中心に輝きだし
両手の十字架は柄の宝石が赤と青のハーフの入った剣になり、
髪は銀色になり、
服は赤と青のチェックのミニスカートになり
胸は爆乳(by香矢)になり
背中には黒い小さなコウモリの羽が生え
お尻には恐竜のような緑色の短めの尻尾が生え
そんな姿に
なった。
そして叫んだ。
「聖女・ドラゴンヴァルキリー!ダブルドレス!!」
ユリはその姿を見て涙に目を潤ませながら言った。
「夜葉寺院ちゃん…帰ってきたのね…」
香矢はその姿を見ながら言った。
「何か志穂さんより正統派ヒロインっすねぇ…」
コーチはそれを聞いて言った。
「そうかねっ、ただ格好つけてるだけに見えるけど…」
対峙したサボテン魔女は憤慨した。
「ボテン!ウラギったのですか、ドラゴンヴァルキリーサマ!」
友知は「ちっちっちっ」と指を振り言った。
「正義の心に目覚めた、と言って欲しいですわ。」
「ボテン!ならばおマエはシュクセイだ!」
そう言って針を飛ばしたが友知は右手の剣から水のバリアを出し防いだ。
そして友知は得意げに言った。
「このダブルドレスはですわね…二つのドレスの力を同時に使う事が出来るんですのよ?この色合いならレッドドレス+ブルードレス。つまり、水と炎を同時に使う事が出来ますの!!」
今度は左手の剣先から炎を放出し、サボテン魔女を包み込むのであった。
「ボテン!ナゼだー!」
息絶えるサボテン魔女を見つめながら友知は呟いた。
「生まれ変わったら、今度は…」
その先は言わずにモゴモゴと友知は固まってしまった。
「ん?何に生まれ変わればいいのかな?サボテン…はそのまんまだし、人間じゃありきたりだし…」
友知は何やら小声でブツブツ言っている。
「ねっ、おーい助けてくれよ。」
コーチの声に我に返った友知は変身を解いて近づいてきて言った。
「ごめん…今、その針外すね?」
ユリがクスリと笑い言う。
「変身解くといつもみたいな喋り方になるのね。」
その言葉を聞いて嬉しそうにポーズを決めながら友知は言った。
「それはそうよ!オンとオフは使い分けなくちゃ!何しろアタシは聖女・ドラゴン…」
「だー!いいから針を外すっスよ!!」
痺れを切らした香矢が叫んだ。
「ぶー」
友知が頬を膨らませながらみんなの針を外して行く。
最後に香矢の針を外し終えたところで
「ぶー」
と再び言った。
その様子に香矢が言う。
「何スか?何が言いたいスか?」
突然、ガバっと香矢のズボンを下ろした。
「んなっ!」
「うわっ、きたねぇの!」
香矢は真っ赤に震えながらズボンをあげ叫んだ。
「ちょ!汚いってどういう意味っスか!!あっ、こら待ちやがれ糞ガキ!!!」
逃げる友知を追いかけて行った。
「やれやれねっ…」
コーチが呟いた。
「でも、良かったね。」
「うん、良かった。」
ユリとマリが嬉しそうに言った。

第十八話
死を招く口づけ

ここはどこにでもある家族が住む家。
父親の帰宅を待つ家族がいた。
そこにチャイムが鳴る。
「あっお父さんかな!?」
子供が玄関に向かって走っていく。
玄関を開けると
「マイマーイ!いらっしゃいませぇ!」
マイマイカブリの姿をした魔女が立っていた。
「うわぁ!」
慌ててドアを閉めて、子供は奥に逃げて行く。
「マイマーイ!ムダムダムダ!」
マイマイカブリ魔女はカギ穴に口をつけ白い煙を放出する。
白い煙はカギ穴から家の中に入って行き、やがて家中を覆った。
「マイマーイ!もういいかな?」
マイマイカブリ魔女がドアを開けると、白い煙は完全に消えていた。
家も家具も何事もなかったようにきれいだった。
しかし、住人は…
人間の形をした白い液体になっていた。
「マイマーイ!」
マイマイカブリ魔女は嬉しそうにその白い液体をすすった。
ドアの外から女医がパチパチと手を叩きながら現れて言った。
「相変わらずお前の煙は見事だねぇ。獲物だけを消し去るとは、まさに完全犯罪!」
「マイマーイ!女医サマにホめられた!」
「もっとホめて欲しくないかい?」
そう言って胸のポケットから出したスルメをプチリと食いちぎった。

「ねっ、みんな揃ったよ。そろそろ話してくれる?何があったのかを。」
コーチがそう切り出した。
結局、あの後みんな疲れていたので自分の家に一旦帰宅したのであった。
友知はコーチの家に泊まったが、
「何回も話すの面倒。みんな揃ったら話します。」
と言って事情を話そうとしなかった。
友知は椅子に座って足をプラプラしながら話し始めた。
「いいけど…その前にみんなの格好は何?」
全員、バイト衣装のバニーメイドに着替えていた。
香矢は言った。
「これはバイトの制服で…いや、話のコシを折っちゃ駄目っスよ!!」
「香矢ちゃんは人の事を言えないと思うけど…」
ユリに突っ込まれ、香矢はむぐぐと黙る。
友知が再び口を開く。
「志穂は無事だよ。リーダー…お父さんも一緒。」
全員が安堵する。
マリが聞く。
「じゃあ、どこに行ったの?」
「リーダーへの頭に脳を戻すのは成功したけど…少し療養が必要でね。ちょっとイタリアの方へ。」
友知はそう言って髪を持ちあげながら続けて話した。
「あの時、アタシは志穂の一撃に敗れた…でも、この体はそう簡単に死ねないみたい。志穂は自分の父親と一緒にアタシの治療までしてくれてね…」
「ほうほう、その時の感謝の気持ちが友知を正義の心に目覚めさせたんスね?」
いつの間にか友知を呼び捨てにしている香矢が言った。
友知は哀しそうな顔をして言った。
「なら良かったんだけどね…ウィッチの脳改造はそんな簡単に解ける程、甘くはないの。だから志穂はアタシにこれを預けたの。」
友知はチャラっと首にかかっている金色の十字架のネックレスを持ちあげて言った。
「これは志穂の良心…志穂自身。これがあるからアタシは聖女でいられる。」
マリが驚いて言った。
「それじゃあ、志穂ちゃんは今、変身できないって事?」
友知は十字架から手を離して言った。
「そ。だからアタシが志穂の代わりにやるの。聖女・ドラゴンヴァルキリーとして!!」
香矢が顔をそらした。
「あれぇっー?香矢さんってば泣いてるのぉー?」
友知がニヤニヤしながら聞いた。
「うっうるさいッスよ!退屈な話であくびが出ただけっスよ!!」
香矢が強がりを言って涙を拭いた。
「そういえばウィッチって何スか?」
香矢の質問に今度は友知が驚いた。
「えっ!?今まで知らずに戦っていたの…魔女を作ってる会社の名前だよ…」
「ねっ、この場合は会社より組織とか秘密結社とか言うべきだと…」
コ-チが突っ込む。
友知が続けて言った。
「まぁ、仕方ないか。ほとんどの魔女はウィッチに魔女に改造されて後は、ほったらかしだもんね…ウィッチから直接命令もらってるのは一部のエリートだけなんじゃない?」
「元エリートだった友知はもちろん、その組織のボスを知ってるっスよね?」
友知は少しブスっとしながら言った。
「女医とか名乗ってたな。見た目はただの医者のおばさんだけど、相手をジロジロ見る目が何とも不気味でぇー。」
友知はそう言ってTVのリモコンをとって言った。
「TVのニュースにたまに出たりする表の顔があるんだけど…」
やっていたのはニュース番組だった。
「昨日未明、またしても一家揃って失踪するという事件がありました。昨日の夜まで普通に生活していた痕跡が残っており、夜逃げする雰囲気ではなかったとの事です。この事件は先週から立て続けに起こっており…」
ニュースでは失踪事件について報道していた。
「これはもしや…」
「魔女の仕業!?」
友知と香矢が同時に叫んだ。
「ねっ、怪しい事件は全部魔女かよ!!」
コーチが突っ込んだ。
そんなコーチの言葉を無視して友知が言った。
「行くわよ、香矢!!」
「ラジャーっス!…ってさりげなく呼び捨てっスか!?」
そう言って二人は鳥羽兎を飛び出していった。
ユリがその光景を見ながら言った。
「行っちゃったね…というか夜葉寺院ちゃん、香矢ちゃんを連れていくんだね。」
マリが答える。
「あれじゃないの?学校の休み時間に仲の良い子にトイレ付き合ってもらう感覚の…」
「ねっ、魔女事件がトイレ感覚かよ…」
コーチが洗いものを始めながら言った。

香矢のバイクに乗って二人は件の家についた。
「ここが事件現場か…」
バイクを降りた友知が言った。
後からバイクを降りた香矢がぐったりしながら言った。
「つーか、友知。バイクの後ろに乗ってる時、人の体を掴むのはいいっスけど胸につかまるのはやめてくれないっスか?」
「ああ、ごめんごめん。何か、母さんの事を思い出しちゃって。」
「あっ、そうっスか…」
「間違えた。思い出したのはお父さんとの思い出。」
「んがー!どういう意味っスか!!」
夜に大騒ぎする香矢。
それを友知がいさめた。
「シーッ!もう遅いんだから静かにしなさい!!」
「誰のせいっスか…」
しかし、誰かが出てくる様子はなかった。
「静かっスね…」
「静かだね。」
気を取り直して件の家の中へ二人は入って行った。
家の中は綺麗に片付いていた。
「もう、警察の捜査とか終わった後みたいっスね…TVで言っていた生活の後とかも残ってないッスよ。これじゃ魔女事件かどうかも分かんないっスよ。」
香矢が解説をしていると、友知が何かに気付いて言った。
「いや…ちょっとここ見てくれる?何か人形になっているような。」
友知が指差したところを見たが香矢には分からなかった。
「…何の変哲もない畳に見えるっスけど…」
「いや、確かに…あっ、そうか。普通の人間の肉眼じゃ見えないんだった。」
「マイマーイ!ワナにかかったな!聖女め!!」
声の方を振り返るとドアのところにマイマイカブリ魔女がいた。
「マイマーイ!聖女スープになるがいい!!」
そう言って、ドアを閉めた。
そして鍵穴から白い煙が出てきた。
それを見た友知が言った。
「あっ、まじぃ!あれを普通の人間が吸ったら溶けてジュースになるよ!!」
「えっ!じゃあ早く窓から逃げるっスよ!!」
慌てる香矢に友知は言った。
「そんなことしたら外に漏れて被害が拡大するよ。大丈夫。香矢はアタシの後ろに隠れてて。」
香矢が友知の後ろに隠れてから友知は叫んだ。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
胸の二つの十字架を引き千切り、
両手の十字架は柄の宝石が青と紫のハーフの入った剣になり
服は青と紫のチェックのマキシスカートになり
胸は貧乳になり
そんな姿に
なった。
「聖女・ドラゴンヴァルキリー!ダブルドレス!!」
決めゼリフを叫んだ後に、友知は二つの剣をカンカンと叩いて言った。
「さぁて、毒と水のバリアを破る事ができまして?」
そう言うと色の濁った水が友知と香矢を包み込んでいく。
香矢が思わず叫んだ。
「うぇ、汚い!」
「大丈夫ですわ。人間には害がなくてよ!!」
濁った水のバリアに吸い込まれるように白い煙は消えていく。
やがて煙がなくなったので、友知はバリアを解いた。
「煙は打ち止め…?さぁ出てらっしゃい!あなたの罪を裁いてあげる!!」
友知は剣をドアに向けて言った。
その時香矢が叫んだ。
「ちょ!まだ、煙が残ってるっスよ!!」
わずかだが白い煙がフヨフヨと漂っていた。
友知はそれを見て、
「フン!」
と言って吸い込んだ。
驚く香矢が叫ぶ。
「何やってるんスか!腹壊すぐらいじゃすまなっスよ!!」
「大丈夫ですわ。この煙は人間には効いても、ワタクシ聖女には効き目がありませんわ。それに今のアタシは水と毒の戦士。どんな毒も通用しなくてよ!!」
とそこまで言ったが、
「うぎゅう。」
と言って友知は倒れた。
「わぁー!しっかり効いてるっスよ!!」
香矢が混乱する。
「マイマーイ!やりました女医サマ!聖女にカちました!!」
マイマイカブリ魔女がドアを開けて入ってきた。
「マイマーイ!とどめをサしてやる!」
「うわぁー、こんなやられ方するヒロイン、聞いた事ないっスよぉ!」
香矢は泣きそうになって叫んだ。
マイマイカブリ魔女が友知に近づいた瞬間、
友知はガバッと立ちあがり、マイマイカブリ魔女の唇に自分の唇を吸いつけた。
「ぶちゅう。」
唇を離すとマイマイカブリ魔女が今度は倒れた。
友知は口をゴシゴシと袖で拭きながら勝ち誇って言った。
「ぐははは!思い知ったか!!ドアの外から煙を出していたのは自分で吸わないためだったんだろう?それを見抜いたアタシはやられたフリをしてたんじゃー!」
そんな友知を見て香矢が言った。
「いや、そんなに足を震わせながら勝ち誇られても…言葉づかいも無茶苦茶っスよ。」
まだ、口をゴシゴシしながら友知は香矢を睨みつけて言った。
「うるせー!…じゃなくて、うるさくてよ!少しでも殺された人の苦しみを味あわせて反省させようとあえてワタクシが泥をかぶったんですのよ!!」
「はいはい。さぁ、鳥羽兎に帰って休むっスよ?」
香矢が友知に肩を貸しながら言った。
その時、パチパチと手を叩く音が外から響いてきた。
姿を現したのは女医であった。
女医は楽しそうに言う。
「お見事お見事!さすがは私の最高傑作、ドラゴンヴァルキリー!いや、今は聖女であったか?」
「こいつはもしや…」
香矢の問いに答えるように友知が言った。
「お久しぶりですわね、女医様。」
女医は友知をジロジロ見ながら言った。
「その姿、実に興味深い!もう一人の聖女の力を借りて自ら進化したというのか…実に素晴らしい!!」
友知は香矢の肩から腕を下ろし、剣を構えて言った。
「それで?」
「もう少し観察を続けさせてもらう事にするよ。その力を研究すれば…」
そこまで言って女医は胸ポケットに入れたスルメをプチリと噛み切り再び喋った。
「これ以上は喋りすぎかな?では、また会おう。」
そう言うと闇夜に消えるように姿が消えて行った。
「消えたっスよ…」
香矢が驚いて言った。
「…驚く事はないよ。魔女の総大将だもん。あのくらいの魔法は使いこなせるよ。」
いつの間にか変身を解いていた友知が言った。
まだ、口をゴシゴシ拭いていた。

第十九話
見抜け!本物を!!

ここはある自然公園。
日差しが強い中、一人の女性が日傘をさしながら歩いていた。
その女性を見つめる影があった。
「トカゲ!ニンゲンはシュクセイ!!」
トカゲの姿をした魔女であった。
トカゲ魔女は女性に飛びかかったがその時、
女性の日傘がピカッと光った。
「トカゲ!」
うろたえるトカゲ魔女。
日傘の女性はコーチであった。
コーチは言った。
「ねっ、うまくおびきよせたよ!お前が最近この自然公園で女性を神隠しにしている魔女か!!」
「トカゲ!だったらどうする?」
その時、フルートの音色が鳴り響いた。
驚いて周囲を見渡すトカゲ魔女。
そして友知が歩いてきた。
フルートから口を離して友知は言った。
「どうするかって?こうするんだよ!!」
友知は胸の十字架を握りしめた。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
そう言うと胸の二つの十字架を引き千切り、
両手の十字架は柄の宝石が黄と緑のハーフの入った剣になり
服は黄と緑のチェックの短パンになり
胸はペタンコになり
そんな姿に
なった。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!」
叫んでから剣を相手に向けて言った。
「さてと、ボクのカミナリで痺れるのと植物に締められるどちらが良い?裁かれる方法を選ばせてあげるよ!!」
「トカゲ!」
トカゲ魔女は友知のいるところと反対方向に向けて走り出した。
友知は怒って言った。
「こら、逃げるな!魔女のプライドないのかぁー!!」
雷雲を呼び出し、カミナリを自分の剣に落とし電撃をトカゲ魔女にぶつける。
勝ち誇って友知は剣を下ろして言った。
「楽勝!」
「ねっ、バカよく見ろ!」
コーチが傘で友知の頭をはたいて言った。
電撃をくらったと思ったトカゲ魔女の体がみるみる変化していき尻尾になる。
「ありゃ?」
友知が呆けた声を出す。
「ねっ、ありゃトカゲの尻尾切りだ。逃げられたぞ!!」
そう言ってコーチは、再び友知の頭をポコっと叩いた。

「トカゲ…まさか聖女がアラれるとは…」
逃げ切ったトカゲ魔女は呟いた。
尻尾切りは彼女にとって最後の手段ですでに満身創痍であった。
そこにコツコツと歩く音がする。
女医であった。
女医は満身創痍なトカゲ魔女に優しく話しかけた。
「可哀そうに…さぞ痛かったろうにね…」
「トカゲ!」
「さぞや悔しかろう…」
「トカゲ!」
女医は胸のポケットからスルメを出し、プチリと食い千切って言った。
「聖女に勝てるように、私が再改造してやろう。」

「ねっ、あそこは植物の力で相手を捕まえるべきだったんだよ!」
「だって、そんなの地味だもーん。」
鳥羽兎に帰ってからコーチに友知は説教をされていた。
そんな二人を見ながら香矢が言った。
「ところで友知…その格好は…」
「あっ似合う?子ウサギですピョンピョン。」
「そう言う事じゃなくて、鳥羽兎の制服着てる理由を聞いてるっスよ!」
「だって、アタシは志穂の代わりだもん。それに住んでいるところのお手伝いをするのは当たり前でしょ?」
「住む?ゴローさんとこに帰らないっスか?」
「いやよ。あんな影薄い人のとこ。主人公なのにアタシの影まで薄くなったらどうすんのよ?あっ、香矢が代わりに住んできてもいいよ。」
「よくないっスよ!嫁入り前の娘が男と同棲なぞ…」
「心配いらないと思うけどなぁー?」
「どういう意味っスか!」
ギャーギャーと言い争いをしばらく続けた後に友知が言った。
「あぁ、もう分かったってば!明日、もう一度行ってトカゲ魔女倒してくればいいんでしょ?じゃぁ、ちょっと夜風を浴びてくるねぇー。」
そして鳥羽兎を後にした。
コーチが呆れながら言った。
「ねっ、全く…志穂と比べて心配だよあいつは…」
香矢が意外そうに聞いた。
「それはないんじゃないっスか?友知はバカでアホで間抜けっスけど、志穂さんの力も得てるからかなり強いっスよ?あのバカでアホで間抜けなのはその自信からくるもんだと思うっスけど…」
「ねっ、自信も過ぎると油断だよ…」
コーチは本当に心配そうに言った。

次の日、友知は一人で自然公園に来ていた。
(全くもう、逃げる事しか能のない魔女に何を警戒しているんだか…)
周りに人がいない事を確認して叫んだ。
「おーい、魔女さーん。出ておいでー。」
「ゲゲー!デてきたぞ!」
トカゲ魔女が出てきた。
しかし、何かおかしい。
友知は言った。
「意外といさぎよいね…あれ、昨日と鳴き声が違うね?それにその尻尾…昨日、切り捨てたから無理やり他の動物のを移植したの?」
見ると、トカゲ魔女の尻尾だけが赤い色になっていて、アンバランスな姿になっていた。
「ゲゲー!女医サマにサイカイゾウしてイタダいたのだ!キサマをタオすためにな!」
友知は言った。
「へー、それは楽しみ…じゃあ、リベンジのために昨日と同じ男の娘モードで行こうか?」
そして胸の十字架を握り
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!」
と叫び、昨日と同じ黄と緑の姿になった。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」
決めゼリフを言ってから友知は聞いた。
「それで?今度はボクにどんな逃げ方を見せてくれるのかな?」
「ゲゲー!ニげるヒツヨウはない!おマエがシぬんだからな!!」
そう言うとトカゲ魔女は自分の尻尾をぶち抜いた。
「ゲゲー!トカゲ魔法!ブンシンサッポウ!!」
トカゲ魔女の姿が2つ、4つ、8つ…と増えて行く。
友知が思わず叫ぶ。
「それは魔法じゃなくて忍法でしょうが!」
「ゲゲー!どれがホンモノかワかるかな?」
「そんなのカンよ!ていっ!!」
友知が適当に手前のトカゲ魔女を切る。
切ったトカゲ魔女は爆発して友知の体を吹き飛ばした。
「ゲゲー!ブーハズれ!!」
友知はいらいらしながら髪をクシャクシャと掻いて言った。
「あーもう!だったら全部吹っ飛ばす!!」
友知はカミナリを剣先に落とし電撃を全てのトカゲ魔女にぶつける…はずであった。
1体目に電撃が通った瞬間に爆発し友知を動けなくするので連続して攻撃するのが不可能であった。
「ゲゲー!ずるはダメだぞ!」
「ああ、もう!」
友知は再びいらいらし始めた。
「ねっ、落ちつけ夜葉寺院!」
そこでコーチの声が後ろから聞こえてきた。
驚く友知が言った。
「コーチ!危ないですよ!!」
「ねっ、危ないのはお前だろう!それよりも相手をよく見ろ!!こういう時は影がないのが分身だ!!」
友知はそのコーチの言葉を受けて相手をよく見てから言った。
「駄目ですコーチ!全部影がありません!!」
「ならば見るな!目を閉じて気配を感じるねっ!!」
友知は静かに目を閉じた。
「ゲゲー!そんなマンガみたいなコトがデキるわけないだろう!!」
笑うトカゲ魔女を無視して、友知は一番奥にいるトカゲ魔女の目の前に移動した。
そして剣を
地面に刺した。
「ゲゲー!?」
地面の中からトカゲ魔女が飛び出してくる。
友知は目を開けて言った。
「大したインチキゲームだったね…目を閉じたらよーく聞こえてきたよ。アンタが地面を這う音が!!」
トカゲ魔女が再び逃げようとした。
友知はカミナリを剣先に落とし、トカゲ魔女に電撃をぶつける。
「ゲゲー!フタタびシッポギリでニげてくれるわぁ!」
その言葉に友知はふっと笑いながら言った。
「あっごめん。この姿だと植物をカミナリに擬態させる事ができるんだ。だからそれはね…」
ぶつけられたカミナリ…だと思われた黄色い植物がトカゲ魔女を締めあげる。
「ゲゲー!」
締めあげられ、トカゲ魔女は爆散した。
友知は変身を解き、コーチのところに駆け寄って言った。
「どうですか、コーチ!今度は逃がしませんでしたよ!!しかも植物を擬態させたこの戦略…」
コーチは目をそらしながら言った。
「ねっ、言いにくいんだがな夜葉寺院…」
「?」
「もう、あいつ尻尾ないからあの魔法使えなかったんじゃないか?別に普通の電撃でも…」
「!ぶー!!」
ふくれっ面をする友知をハハハと笑いながら頭を撫でるコーチであった。

第二十話
地獄から響く曲

ここはある公園の…便所。
「ウホッ!」
そこにはゴリラ魔女がいた。
そこにコツコツと女医が現れる。
ゴリラ魔女は言った。
「ウホッ!おマちしておりました、女医サマ!」
「呼び出してすまなかったな。実はお前に聖女と戦って欲しいと思ってな。」
ゴリラ魔女は大喜びで手を叩き言った。
「ウホッ!それではサイカイゾウをおネガいします!!」
「それよりももっと面白いものをお前に渡そう。」
そう言って取り出したのは昔のカセットタイプのテープレコーダーだった。
「ウホッ?それは?」
女医は胸のポケットから取り出したスルメをプチリと食い千切り言った。
「秘密兵器さ。」

「ねっ、夜葉寺院。マユに餌をやってちょうだい。」
コーチが友知に餌皿を渡した。
「はーい、了解ですコーチ。ほら、お食べ香矢。」
そう言って香矢に渡すのであった。
「あちきのご飯じゃありやせん!マユの!!」
「あれ?香矢ってば、いつも犬食いしてるから間違えちゃったぁー。てへっ。」
ユリはその光景を横から見ながらクスクスと笑い言った。
「もしかして夜葉寺院ちゃん、まだ犬が苦手なの?」
友知は無表情になり、首をブンブンブンと振った。
「ユリ姉、それは昔の話…あんな畜生ごときに正義のヒロインとなったアタシがビビルわけないじゃん!」
「じゃあ、早く渡してくるっスよ。」
弱みを見つけて嬉しそうな香矢が言った。
「もう、ただ渡すだけじゃんよ…」
友知はブツクサ言いながら外にいるマユに餌を渡した。
そして得意げにみんなの方を振り返りながら友知は言った。
「どうだ!」
「いや、そんな腰が引けた状態で凄まれても…」
香矢が笑いをこらえながら言った。
その時だった。
友知の耳に怪しげな曲が聞こえてきたのだった。
(何これ?)
そして目の前がブラックアウトした。
(何?何?何?何なのこれ!?)
「…知…友知!」
「ちゃん…夜葉寺院ちゃん!!」
香矢とユリの声で友知は我に返った。
「大丈夫?そんなにマユの事駄目だった?」
ユリの問いには答えず友知は言った。
「…曲が。」
香矢が聞きなおした。
「曲っスか?静かな午後っスけど…電波でも受信したんじゃないっスか?」
「それにしても…」
ユリがしぶりながらも言った。
「一瞬だけど夜葉寺院ちゃん、すごい怖い顔をしていた。まるで、魔女だった頃みたいな。」

その夜。
コーチが眠った後に友知は着替え、静かに鳥羽兎を出て言った。
まるで夢遊病者のように夜の街を歩いて行く友知。
(夜葉寺院ちゃん?)
偶然、友知の姿を見つけたユリはその後ろをつけて行った。
そしてついたのは、公園であった。
「…そろそろ、出てきたら?」
友知のその言葉にユリはバレたと思い出て行こうとしたが、それよりも先に便所からゴリラ魔女が出てきた。
「ウホッ!ホントウにキたキた!」
「こんだけ耳障りな曲を聞かされればね…何、この不快な曲は?」
「ウホッ!オシえない!」
友知は胸の十字架を握りしめた。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
そう言うと胸の二つの十字架を引き千切り、
両手の十字架は柄の宝石が赤と紫のハーフの入った剣になり
服は赤と紫のチェックのロングスカートになり
胸は貧乳になり
そんな姿に
なった。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」
友知はそう叫んだ後に剣を相手に向け言った。
「さぁて、何が目的かは知りませんけど…悪い事考えてる子にはおしおきですわ!!」
「ウホッ!ゴリラ魔法!ニクタイキョウカ!!」
ゴリラ魔女が胸をバンバン叩くと筋肉がさらに膨れ上がった。
「へぇ、自分の長所をさらに強めようというわけですわね。でも、」
友知が話している間にゴリラ魔女は突っ込んできた。
友知の首根っこを掴み上げ、お腹にパンチを連発して叩きこみぶん投げた。
トイレの壁を突き破って倒れこむ友知。
すぐに立ち上がり開いた壁の穴から出てきて言った。
「大した力ですけど…人の話は最後まで聞きなさい!というか…」
友知は自分の髪の先をクンクン嗅ぎながら言った。
「便器の水に髪が入ったぁー!自慢の髪なのにぃー!バカぁー!!」
泣きごとを言う友知に再び掴みかかるゴリラ魔女を今度はひょいと避けて友知は剣をクロスさせて言った。
「ダブルドレス最大の攻撃…たっぷりと味わいなさい!!」
クロスさせた剣から炎と腐食ガスが放出されゴリラ魔女の体を覆っていく。
「ウホッ!?女医サマぁー!」
腐り焼けゴリラ魔女は倒れていった。
友知はそんなゴリラ魔女を見ながら言った。
「髪は女の命…!あなたの罪の重さを思い知りなさい!!」
そう言って変身を解き、先ほど便器の水に浸かった髪を慌てて見る。
「大丈夫かな?変身解けば大体治ってるもんだけど…」
その時、後ろからパチパチと手を叩く音がした。
友知はその顔を忌々しげに見ながら言った。
「女医…!」
「大したもんだよ!いや、この場合はゴリラ魔女の間抜けさを後悔すべきかな?せっかく渡した秘密兵器を使うのを忘れるとは…」
そう言う女医の手にはラジカセがあった。
友知はそれが自分をおびき出した曲のを流していた物だとすぐに分かった。
そして友知は言った。
「それが秘密兵器?ただ不快な音楽を流すだけじゃないの!」
「と思うだろ?」
そう言ってラジカセを地面に置いた。
「あれはおびき出すための曲。ここからが本番。お前の本性を暴きだす曲だ!」
そう言って胸のポケットから取り出したスルメをプチリと食い千切ったとたん、ラジカセから怪しげな曲が流れだした。
「!?ぐあぁっ!!」
その曲を聞いた途端、友知は苦しみだした。
(何これ!?心の奥底からもう一人の自分が出てくるような…かつて魔女だった自分が…!)
「どうした?苦しそうだな?」
嬉しそうにそう言いながら女医はラジカセの音量を上げた。
「がぁぁぁ!」
耳を塞ぐ友知。
だが、苦しみから解放されない。
「無駄だよ。この曲はお前の頭に直接響いてるんだから…ほら苦しいだろ?早く楽になりなさいよ。」
女医が上から見下ろしながら言った。
「ぐぁぁぁっぁ!!」
地面を転がりながら唸る友知。
「ほら、我慢せずに!自分のしたい事をしなさいよ!!丁度よくあそこにお前の仲間が隠れてるぞ!!」
そう言い女医が指を指した。
そこにはユリが隠れていた。
「ほらほら。自分の欲望を満たしなさいよ。」
女医が煽る。
友知は立ちあがりユリの方を見た。
「!夜葉寺院ちゃん…」
ユリは驚いて言った。
その顔は魔女だった頃のものだったからだ。
「がぁぁぁ!」
友知はユリを押し倒し、首を締め始めた。
「やめて…夜葉寺院ちゃん…!」
ユリの声は友知に届かなかった。
「そうだ!今こそ私の最高傑作、魔女ドラゴンヴァルキリーの復活だぁ!」
女医は嬉しそうに手をパチパチと叩いた。
その瞬間ワンワン!と鳴き声が響いた。
「マ…ユ…?」
ユリは自分の愛犬の声に気付き呟いた。
マユはなおもワンワン!と吠え続ける。
その時、友知の腕の力が緩む。
「何!?」
驚く女医の方を向き、胸の十字架を引き千切り再び赤と紫の姿に変身した。
「夜葉寺院ちゃん、正気に戻ったの!?」
ユリのその声を背に女医に向かって切りかかった。
斬撃は女医の体を切り裂いた。
しかし、女医は自分の体の傷に気も止めず友知をマジマジと見つめて言った。
「ふむぅ、変身すると効果がなくなるのか。これは興味深い。」
そう言うと再びスルメをプチリと食い千切り闇に消えた。
変身を解き崩れ落ちる友知のところにユリとマユが駆け寄った。
「大丈夫!夜葉寺院ちゃん!!」
ユリが声をかけると友知は答えた。
「ごめんねユリ姉…苦しかった?」
「そんな事…」
「ありがとうね、マユあんたがいなかったらアタシはまた魔女になっていた…」
友知の体にすり寄るマユに友知はそう声をかけた。
「ところでさぁ…」
なおも体をすり寄せるマユに友知は言った。
「できればそろそろ離れてほしいんだけど?」

第二十一話
死を呼ぶノート

「死ねっ!」
夜月(よづき)はボソっと呟いた。
その格好は水着にランドセルという異様な姿であった。
彼女はいじめられっ子であった。
今日は水泳のあとに着替えようと思ったら着替えがなくなっていた。
あいつ等はすっとぼけるだけで返してくれなかった。
担任の教師もいつも通り見て見ぬふりであった。
「どいつもこいつも死ね!!」
またボソっと呟いた。
(仲間内でシンナーを奪い合って殺し合え!)
(トラックに全員仲良く引き殺されろ!)
(他の子をいじめ殺した罪で刑務所内で自殺しろ!)
(警察に捕まって死刑になれ!)
(宇宙からきた正義の味方に倒されて死ね!)
いじめられた後、彼女はいつもこんな妄想をするのであった。
バラバラの妄想であったが、一つだけ共通点があった。
全て、自分の手では殺さず勝手に死んでいく。
人目を気にして歩いているうちに無意識に橋の下を歩いていた。
(うわー…何か怖い…)
ふとノートが落ちているのに気づいた。
一見するとただのノートだが…
夜月は何故か拾った。
何故、そうしたのかは自分でも分からない。

家に帰って親にバレないうちに着替えて自分の部屋にかけこんだ。
「死ねっ!」
今度はさっきよりも大きな声で叫んだ後にランドセルを投げた。
教科書や筆箱と一緒にさっき拾ったノートが転がった。
きまぐれでノートを持ち上げて開いてみると最初のページに
「しののート」
とクレヨンで書かれていた。
次のページを開くと、
「こののートになまえおかかれたしとは3にちいないにへんししま。」
(このノートに名前を書かれた人は3日以内に死にます…?)
次のページには色々な人の字で様々な名前が書いてあった。
「くだらない。こないだヒットしてた映画ごっこか。世間は病んでるね。」
ノートを閉じて片付けようとしてランドセルの裏に気付いた。
「ブス」
と書かれた紙が貼られていた。
「くっ…!」
夜月は涙ぐみながらノートとシャーペンをとり、机に向かった。

「いつも思うんスけど…」
まかないをバクバク食べる友知に向かって、香矢が問いかけた。
「そんだけ食ってるのに友知がお手洗いに行ってるところを見た事がないんスけど…」
友知はピタリと食べるのを止めて答えた。
「聖女はうんこしないの。考える事が下品だねぇ、香矢は。」
「どっちがスか!説明になってないスし!それじゃあ、食べた物はどこに行ってるんスか!?」
「それは聖女の24の秘密の一つ。」
そんな二人のやりとりを見てコーチが言った。
「ねっ、今日は平和だなぁ…」
着替え終わったマリが奥から出てきて言った。
「店長、ところがそうでもないんですよ。TV見ましたか?」
と言ってTVをつけるとニュースキャスターがニュースを読み上げた。
「またしても刑務所に服役中の囚人が変死しました…」
香矢が立ちあがり言った。
「あっ、これ知ってるス!ネットでは「死のノートに書かれたんだろう」とかみんな言ってるスっよ!いやーもろに例の映画の影響を受けちゃって、ネットにしがみついたバカどもときたら!」
「と、バカが申しております。」
友知の言葉に香矢がキッと睨みつけたが、素早く友知は目をそらした。
TVを消してからマリが話し始めた。
「ん、まぁ死のノートかどうかはともかく同一犯の可能性が高いと思うよ。」
香矢が聞く。
「どういう事っスか?」
マリはいつものようにミルクを飲み干してから続けて言った。
「実はね、「死のノートに殺してほしい人」ってサイトがあってね。殺された獄中犯はみんなそこに書かれた人物なの。」
香矢は感心して言った。
「あっ、そのサイトは知ってるスけど…そこは気づかなかったスね。」
マリは照れ臭そうにミルクをまた飲み干してから言った。
「ちなみにそのサイトが出来る前はね獄中犯じゃなくてTVで実況された強盗とか、容疑者…そんな人達が変死してたの。つまりサイトが出来るまではTVに出た人の名前を参考にしてたってわけ。」
香矢は手を叩きながら言った。
「すごいっス!でも、それだけじゃ犯人は分からないスよね?」
マリは再びミルクを飲み干してから言った。
「と思う?もう少し突っ込んで調べてみたよ。殺された人達が放送されたチャンネルも時間帯もバラバラでね。全ての番組を見れた地域…そこを探してみたの。すぐに分かったわ。最初の犠牲者以前に変死が出ている地域でもあったわ!後はその地域での最初の犠牲者に怨恨がある可能性の人物が犯人ってわけ!」
香矢が再び手を叩き言った。
「ブラヴォー!さすが魔女対策本部の臨時リーダー!!」
「香矢、本当に分かった上で言ってるの?」
友知が不審そうな顔で言った。
香矢が逆に問い返す。
「そういう、友知は分かってないんスか?」
友知は頬を膨らませて言った。
「分かってるよ!犯人は一番怪しくない人なんでしょ!?」

夜月は一人で留守番をしていた。
暇つぶしにとノートを開こうとした瞬間にチャイムがなった。
玄関に出ると見知らぬ人達が立っていた。
マリと香矢と友知であった。
マリが口を開いた。
「ごめんなさい、君が夜月さん?」
夜月は3人を見ながら言った。
「そうですけど…」
その瞬間に友知が叫んだ。
「犯人はお前だ!」
その言葉に夜月はペコリとおじぎをし、
「ごめんなさい!」
と謝った。
香矢は驚いて言った。
「えー!?もう自白しちゃうんスか!?」
家に入って夜月は泣きながら説明した。
死のノートの事。
自分をいじめていた子達と見て見ぬふりをした担任の名前をかいた事を。
そして夜月は続けて話した。
「まさか、本当に死んじゃうなんて…怖くなって捨てようかとも思ったんだけど、それならせめてこの世の悪人の名前を書いてから捨てようと思って…」
泣きじゃくる夜月をなだめながらマリが言った。
「それでそのノートはどこに?」
夜月は自分の部屋からノートを持ってきた。
「ほほう、これが…」
香矢が変な感心をする。
夜月はノートを置いてから言った。
「私…捕まるんですか?」
「いいえ。」
友知がノート眺めながら断言をした。
「アタシには見えるよ…このノートから真犯人が!!」

「メエー!」
ヤギの姿をした魔女がある占い館の地下で水晶を眺めていた。
「メエー!ツギはダレをシマツするんですかね?のーとのヌシよ!ヤギ魔法!のートテンシャ!」
すると水晶に文字が浮かんできた。
「メエー!ナニナニ、田鶴木 香矢?ワかりました!」
そう言うと占い館を後にした。

ヤギ魔女は香矢の家に着いた。
「メエー!まだカエっていない!カエってきたらシュクセイ!のートのヌシのせいでな!!」
その時フルートの音色が鳴り響いた。
「メエー!?」
友知であった。
どこから用意したのか探偵の格好をしている。
「犯人はお前だ!」
友知は叫んだ。
「メエー!?まさか聖女がデてくるとは…しかし!女医サマにもらったこれがある!!」
そういうとヤギ魔女はラジカセを取り出した。
「メエー!ワレらのもとにモドれ!!ドラゴンヴァルキリー!!」
ラジカセから曲が流れてくる。
「あっぐぅ!!」
頭を押さえながら悶える友知。
「メエー!おマエもワタシとイッショにのートにカかれたニンゲンをシュクセイするのだ!…おっサッソクのートにカきコまれたぞ?ナニナニ…ガンバれドラゴンヴァルキリー?ナンだこれは?」
(頑張れドラゴンヴァルキリー!)
その言葉は魔女に戻そうとする曲よりも友知の心に響いた。
曲を振り切って立ちあがり胸の十字架を握りしめて友知は叫んだ。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
そう叫ぶと胸の二つの十字架を引き千切り、
両手の十字架は柄の宝石が黄と紫のハーフの入った剣になり
服は黄と紫のチェックのロングスカートになり
胸は巨乳になり
そんな姿に
なった。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」
そう叫ぶと剣を構えて言った。
「人のせいにして罪を重ねるのは楽しくって?でも、それもここまでですわ!!」
友知は雷雲を呼び出し剣にカミナリを落とした。
「痺れながら…腐っていくとよくてよ!」
剣をクロスさせると紫色のカミナリがヤギ魔女を襲った。
「メエー!」
ヤギ魔女の体は崩れていく。
友知は変身を解いて呟いた。
「そして誰もいなくなる…なんてどうかな?」

数週間後、休校していた学校が再開したので夜月は再び登校していた。
(もうあいつらはいないんだ…!これからは楽しくやろう!!)
自分の席に座っていると誰か近づいてきた。
「あなたが夜月さん?何か生徒と担任が減ったから緊急でクラス換えなんだってさ。」
そう言うと、夜月の椅子を蹴っ飛ばした。
転げる夜月。
「あら大丈夫?勝手に転んでどうしたの?」
相手は白々しく言った。
「これから楽しくやろうね?」

第二十二話
残酷なる恋心

TVで恋愛ドラマをやっていた。
ラブシーンに突入した。
「んーむちゅー。」
友知はTVドラマのキスシーンに夢中であった。
それを白けた顔で眺めていた香矢が言った。
「はぁー、よくそんなもんに夢中になれるっスね。」
それを聞いた友知が言い返した。
「だって、恋愛とか想像すると胸とお腹の辺がキュンとして楽しくない?」
香矢は冷めた顔で答えた。
「恋愛なんてただの本能っスよ。もう少し理知的になりなさいっス。」
「ねっ、どうでも良いんだが…」
洗い物をしているコーチが言った。
「ねっ、お前ら人前でよくそういうドラマを平然と見れるな…」
そう言いながら顔を赤くしてTVから目をそらしている。
友知はそんなコーチを見ながら笑って言った。
「でも、これ面白いよ?恋人を亡くした男が悲しみにくれているところに恋人が死ぬ前からその男が好きだった人が告白して結ばれるっていう…」
「…ドロドロした世界っスね。おー怖。」
香矢が呆れて言った。

次の日、二人はコーチの言いつけで買い物に出ていた。
「ねーねー香矢ぁ?」
友知が香矢に問いかけた。
「香矢が恋愛嫌いなのは…」
香矢はうっとうしそうに話を遮って言った。
「別に嫌いってわけじゃ…」
構わず、友知は続けて言った。
「昔、大失恋して恋愛恐怖症になったとアタシは推理するのですが?」
香矢はチラリと友知を見てから言った。
「別に大失恋とか…」
友知はニヤニヤしながら言った。
「聞きたいなぁー。聞かせろよぉー。」
香矢はそんな友知を無視して思い出に浸っていた。

昔、中学生の頃に通学途中に一目惚れした近くの高校の先輩。
色々調べたっけ。
家とか好きな物とか。
高校も先輩と同じところにした。
でも、自分が高校に入学してからすぐに先輩に彼女ができた。
同級生の子で新学期になって告白して成就したらしい。
それだけの話。
恋愛にもなっていない。
それだけの話。

(そう、それだけの話っスよ…)
友知と香矢の前で女性が倒れた。
驚いて駆け寄る二人。
香矢は女性を起こしながら言う。
「大丈夫っスか?」
その顔には見覚えがあった。
それは先輩に出来た彼女。
忘れもしない幸せそうなあの笑顔…
「…友知、そこの薬局で気つけ薬かなんか買ってきて。」
香矢が友知に言った。
友知は薬局に向けて走っていった。
「あの…どこかでお会いしましたっけ?」
あまりに自分の顔をジロジロ見るので女性は香矢に聞いてきた。
「…いえ。」
香矢は否定した。
自分の顔を知るわけもない。
当り前だ。
「すみません、少し気分が悪くなっただけです。どうもありがとう。」
そう言って女性は立ちあがり去っていった。
そのうなじには蜂のトゲ?みたいな物が刺さっていたのに香矢は気付いたが、引きとめなかった。
「おーい、よく分かんないから正露丸買ってきたよぉー。」
友知が戻ってきて言った。
しかし、女性がいなくなっているのに気付いて驚いて友知は言った。
「あれ、患者はどこじゃ?この正露丸どうしよ?」
「今日の晩御飯にでもすれば良いっスよ…」
香矢は冷たく言い放った。

数日後、香矢はまだボーっとしていた。
「おーい香矢!おーいってば!こら、ペチャパイ!!」
友知がいくら話しかけても適当に相槌をうつだけであった。
「ちぇっ、TVでも見よっ!」
友知はそういってTVをつけた。
TVをつけるとニュースが写った。
「次のニュースです。人間が突然爆発するという事件が立て続けに起こっています。この爆発する人間には共通点があり首の後ろのうなじに蜂の針のようなものが刺さっていると…」
香矢はニュースキャスターの言葉にTVの方を向いた。
次に病院が写った。
病院の周りには人がたくさん集まっていた。
リポーターが解説する。
「いつ爆発するか分からないため、患者の関係者全員が面会謝絶という事態に陥っております。家族は皆、病院側に抗議をし…」
その家族の集団の中に香矢が忘れもしない顔があった。
自分が好きだった先輩の顔が…

その夜、香矢は布団の中で考えていた。
(多分、友知は魔女の居所を調べて動くだろう…動けば彼女は助かる…それでいいじゃないか?)
しかし、眠れない。
(いいじゃないか。いいじゃないか…いいじゃないか?本当にそう?)
昨日の恋愛ドラマを思い出した。
恋人を亡くした男にその恋人が死ぬ前から好きだった女が告白をし結ばれる話を。
「あー、もう!」
香矢は叫んで起き上がった。

「どうしたの?こんな夜中に。」
夜中に自分をたずねてきた香矢に友知はそう聞いた。
香矢は話した。
自分の失恋話を。
そして恋敵の運命を。
「…それでどうしたいの?」
友知は香矢に聞いた。
香矢は考えた。
自分はどうしたいのだろうか?
「…魔女をほうっておけとでも言うつもり?自分の恋愛成就のために。」
友知が再び聞いた。
香矢は考えた。
自分は何故、わざわざここにきて友知に話したのだろうか?
「…そうかもしれないっスね。でなければこんな話をする意味なんてないっス。…あちきは最低っスね。」
そう白状する香矢に友知は言った。
「香矢は間違っていないと思うよ。」
「…友知?」
「だって好きな人を自分の物にしたいって思うのは人間なら当然の感情じゃないの?それがどんな悪い方法だとしても。」
香矢は何も言えなかった。
続けて友知が言う。
「でも、止めないよね?アタシは魔女を倒すよ。」
香矢はコクリと頷いた。
その反応にニコリと友知は笑う。
そして香矢は言った。
「何しにここにきたか今、分かったスよ。」
「んー?」
「誰かに聞いてほしかった…ただそれだけの事だったんスよ。」
「おう、何でもアタシに話しなさいよ!友達でしょ!!」

「バチバチ!」
ミツバチの姿をした魔女が自分の針を撫でていた。
「バチバチ!ニンゲンどもめ!ワタシのミツバチ魔法ハリバクダンでギシンアンキにオチイるがイい!」
その時、フルートの音色が鳴り響く。
友知がどこからともなく現れた。
驚いてミツバチ魔女が言った。
「バチバチ!聖女!どうしてここが!!」
友知は指をチッチッチッと振り言った。
「聖女の辞書には不可能の文字はないの。」
「バチバチ!しかし、ワタシには女医サマからイタダいた…」
「また、あの変な歌謡曲?こっちも何も対策たてずにきてるわけないでしょ!」
そう言うと懐から正露丸を取り出した。
「バチバチ!?」
蓋を開けてサバーと飲み込んだ。
「うえっぷ。」
そして胸の十字架を握りしめて叫んだ。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
そう叫ぶと胸の二つの十字架を引き千切った、
両手の十字架は柄の宝石が青と緑のハーフの入った剣になり
服は青と緑のチェックのミニスカートになり
胸は爆乳になり
そんな姿に
なった。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」
変身を終えるとそう叫んだ。
ミツバチ魔女は焦りながら言った。
「バチバチ!しまった!ナニをするのかとミイってたらオンガクをかけるのをワスレていた!!」
友知は剣を構えて言った。
「だからあんたは二流の魔女なんですわ…さぁ、水の力で強化されたワタクシの植物の力!とくと味わいませ!!」
剣をクロスさせると袖が植物に変化し伸びていった。
いつも以上に太い植物がミツバチ魔女を捕らえ締め潰していく。
「バチバチ!モウしワケありません!女医サマぁ!!」
ミツバチ魔女は爆散した。
ミツバチ魔女を倒した後、友知は呟いた。
「人の命を弄ぶ愚か者…少しは弄ばれた人達の心を知りなさい…」
友知は変身を解いた。

数日後、TVでは病院を退院して家族と抱き合っている患者の姿が写っていた。
その中には香矢の先輩の姿もあった。
「もし…」
友知が香矢に聞く。
「もし、アタシがミツバチ魔女を倒すのが間に合わなくって、この人が死んでいたら香矢はどうしてた。」
香矢はその問いに対してこう答えた。
「分からないっスね…あのドラマのように告白してたかもしれないッスし、勇気が出せなくて何も言えなかったかもしれないスし…」
友知はそんな香矢を見ていじわるそうに笑いながら言った。
「じゃあさ、もし告白出来たとしたら何て言うのか聞かせてよ!アタシを先輩だと思ってさ!」
「!んぐぎくっ…」
そんな香矢の様子を見ながら友知は本当に嬉しそうに笑うのであった。

第二十三話 
友知、最大のピンチ!!帰ってきた志穂

「あー!楽しかった!!」
友知がそう言った。
友知は鳥羽兎のメンバー(香矢、ルリ、マリ、ユリ)とカラオケに来ていた。
ルリが言う。
「でも、ともちゃんって歌うまいんだね!100点連発とか私、びっくりしちゃった!」
友知は得意げに言う。
「へへん!アタシは何をやらせても完璧にこなすのじゃ!」
香矢は呆れながら言う。
「欠点だらけの女が何を言ってるスか…」
キャイキャイ騒ぎながら歩いていると易者がと目があった。
ユリが言った。
「あっ、占い!せっかくだからどう?」
友知が食いつく。
「アタシ!アタシがやる!!」
そう言って易者の前に座った。
友知は目を輝かせながら言った。
「何を占ってもらおうかな?香矢の便秘が後、何日で開通とかは?」
香矢が慌てて言う。
「自分の事を占ってもらうスよ!というか、何であちきの便秘の事、知ってるんスか!?」
易者は友知をマジマジと見て、震えながら言った。
「これは…」
「んー?」
「イカ?あなたは近いうちに、イカに…ああ、恐ろしい。」
易者はガタガタ震えながら店をたたみ始めた。
香矢が言った。
「ちょっと!ちゃんと説明するっスよ!」
易者は最後に言った。
「イカに注意しなさい…イカに再び会う時があなたの死…もっとも、もう手遅れかもしれませんが…」

「ワシー!女医サマ!!」
「ブータ!女医サマ!!」
「ヒョーウウ!女医サマ!!」
黒鷲魔女、黒豚魔女、黒豹魔女の3人が集まっていた。しかし、そこには女医の姿はなかった。
と思うとどこからともなく女医の声がしてきた。
「よく、集まってくれたな…私はこれからあのドラゴンヴァルキリーをも超える魔女の完成に取り掛からなければならぬ…お前達にはその間、聖女の相手をして欲しいのだが、やってくれるな?」
「ワーシ!スベては!」
「ブータ!女医サマの!」
「ヒョーウウ!ために!」
そういって3人の魔女は去って行った。
「くくく…この魔女こそ私の最高傑作になるだろう…だから、ドラゴンヴァルキリーはもういらない!」

次の日、鳥羽兎で友知は考え事をしていた。
「昨日の占いの事、気にしてるんスか?」
香矢が話しかけてきた。
「ただの占いっスよ。そんなに気にする事…」
「そりゃあ、気になるよ。」
友知が香矢の言葉を遮って言った。
「さっき、香矢がトイレにこもった時に無事に開通成功したか気になって気になって…」
「!巨大なお世話っスよ!!」
香矢が怒りながら離れて言った。
友知は笑いながら言った。
「あーあ、プリプリしちゃって…トイレでもプリプリできれば良かったのにね。」
そう言ってTVをつけると目を疑う光景が写った。
リポータが言った。
「皆さま、見えますかこの光景が!豚の化け物が町で暴れているのです!一体、何者なのでしょうか!?都市伝説とされる魔女事件が本物だったのでしょうか!?」
黒豚魔女が町を襲っている光景…
それがTVに映し出されるとは今まででは考えられない事であった。
コーチが店の奥から出てきて言った。
「ねっ、これは誘っているのかもな…夜葉寺院、お前が来るのを…」
友知は言った。
「だったら…望むところだよ!」
友知は鳥羽兎を出ようとした。
その時、ユリが声をかけた。
「あの、夜葉寺院ちゃん…」
友知は振りかえって言った。
「んー?」
ユリは再び声をかける。
「気をつけてね…」
友知は胸をポンと叩いて言った。
「いつもの事だよ!任せておいて!!」
そして出て行った。
香矢がユリに声をかける。
「大丈夫っスよ、ユリリ?友知の言葉を借りるといつも勝って帰ってきたじゃないっスか?」
しかし、ユリの顔は晴れない。
そして言った。
「分かってるんだけど…何かイヤ予感がしてしょうがないの。いつもと違うイヤな感じが…」

「ブータ!ニンゲンはシュクセイ!」
そう言いながら黒豚魔女はうろうろと歩き回った。
TVに写ったせいかもう近隣の住人は避難を終えていて誰もいなかった。
「ブータ!デでこーい!」
その時、フルートの音色が鳴り響いた。
友知が現れ、言った。
「出てきーた。あっ、TVカメラが転がってる!ピースピース!」
Vサインをした後に気を取り直して友知は言った。
「さてと、アタシが来たからには…」
「ヒョーウウ!」
黒豹魔女がどこからともなく走ってきて友知の体を掴み引きづり文房具店に投げ込む。
文房具に埋もれながら友知は言った。
「不意打ちとはさすが魔女、きたない。そして1対2?」
「ワーシ!まだいるぞ!」
黒鷲魔女が空から急降下してきて、友知の体を掴み天高く跳び上がる。
ある程度上がったとところで友知の体を地面に投げつけた。
友知はアスファルトに埋まりながら言った。
「また出てきた?いくら一人では敵わないからって…おっと、これ以上喋ってまた出てこられても困るわね。」
そう言って胸の十字架を握りしめた。
友知は胸の十字架を握りしめた。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
そう叫ぶと胸の二つの十字架を引き千切り、
両手の十字架は柄の宝石が赤と黄のハーフの入った剣になり
服は赤と黄のチェックのマキシスカートになり
胸は中ぐらいになり
そんな姿に
なった。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」
そう叫んだ後にキョロキョロと回りを見渡し友知は言った。
「もう、これ以上増えないですわよね…」
「ヒョーウウ!キサマゴトきにヒツヨウない!」
その言葉に呆れ気味に友知が言った。
「3対1で何を格好つけてますの…」
「ブ-タ!黒魔女合体魔法!ブラックトルネード!!」
そう叫ぶと黒豹魔女が友知の周囲を高速で走り回り竜巻を生み出し、友知の体を空に打ち上げた。
打ち上げられた友知を黒鷲魔女が蹴り落とし、
地面に落ちてきた友知に黒豚魔女が頭突きをし友知を吹き飛ばした。
「ブータ!ミたか、ワレらの合体魔法!!」
友知は起き上がり言った。
「合体魔法って黒豹魔女ばかり活躍してるじゃありませんの!」
「ブータ!だまれ!もうイチド合体魔法イくぞ!」
再び黒豹魔女が友知の周囲を回り始めたが、回っている途中に友知の剣が黒豹魔女を切り裂いた。
「ヒョーウウ!?」
続けて雷雲を呼び出し、カミナリを剣ではなく黒鷲魔女に直接落とした。
「ワーシ!?」
そしておろおろする黒豚魔女に炎をぶつけた。
「ブータ!」
「ブラックトルネード破れたり…とでも言っておきますわ。」
「ワーシ!まだだ!!」
3人とも致命傷はさけられたようだ。
友知は言った。
「さすがに3人もいると決め手にかけますわね…あれを使いますわ。」
そう言って剣をクロスさせて空にかかげた。
雷雲が再び呼び出され…しかし、落ちてきたのはカミナリではなく火柱であった。
火柱が周囲を焼き尽くす。
「ブータ!女医サマの!!」
「ワーシ!ショウリを!!」
「ヒョーウウ!ネガッております!!」
3人の魔女は倒れた。
友知は言った。
「敵が多い時はMAP兵器…戦略の基本ですわ!」
自分の勝利を確認してから変身を解こうとした瞬間、
「ゲッーソ!ミゴトだな。まぁこのテイドはヨソウドオりだが…」
後ろから声をかけられた。
友知は後ろを振り返って言った。
「ふぅん、やっぱり3人じゃなかったんですわね。さすが魔女。不意打ちも嘘もお手の物ですわね?」
「ゲッーソ!ワタシはイカ魔女…女医の最高傑作の魔女だ!!」
「へぇー最高傑作はワタクシだと思ってましたけど?」
友知は剣を構えた。

同じ頃、鳥羽兎に一人の少女が帰って来ていた。
それはもう一人の聖女・ドラゴンヴァルキリー…
「雲行きが怪しくなってきたね…」
志穂であった。

第二十四話 
女医の正体は?星になった友知

「ゲッーソ!どうした、かかってこないのか?」
友知は動けずにいた。
魔女と長い間戦ってきた彼女には分かっていた。
(こいつ…強い!今まで戦ってきたどの魔女よりも…!)
そう思いながらも剣を構えて友知は言った。
「細かい事考えても仕方ありませんわね…!」
左手の剣から炎を放出してイカ魔女にぶつけた。
「続けていきますわ!」
そう言って今度は雷雲を呼び出し、右手の剣にカミナリを落とし、イカ魔女にぶつけた。
「ゲッーソ!イカ魔法スミケッカイ!」
墨を噴き出し、炎と雷を止めてしまった。
驚いて友知が言う。
「なっ!?そんな物で止められるなんて!?」
「ゲッーソ!これをただのスミとオモうなよ!キサマのコウゲキはスベてこのスミのマエにはムリョクだ!」
友知は剣をクロスさせて言った。
「無力かどうか…試させてもらいますわ!」
そして叫んだ。
「ドレスチェンジ!」
今度は青と紫の姿になった。
「火が駄目なら水ですわ!」
右手の剣から水を出す。
「どんな物質も腐らせる腐食ガスもどうぞ!」
左手の剣から腐食ガスを出す。
しかし
「ゲッーソ!イカ魔法!スミケッカイ!!」
再び、イカ魔女のスミにかき消されてしまった。
友知は剣をクロスさせて言った。
「魔法が駄目なら!物理攻撃ですわ!!」
そして再び叫んだ。
「ドレスチェンジ!」
今度は黄と緑の姿になった。
「ボクの植物で押しつぶしてあげるよ!」
袖が植物に変化し、イカ魔女に向かっていく。
「ゲッーソ!イカ魔法ジュッポンアシ!!」
イカ魔女の背中から十本の足が生え友知の植物を逆に絡めていく。
「くっ!」
友知は慌てて自分の両袖を切り落とした。
友知は憤慨して言った。
「ノースリーブ姿になるなんて、とんだサービスだよ!ドレスチェンジすれば戻るけど、その前に…」
剣にカミナリを落とし自分の体に電気を送り込んだ。
「お前を倒す!」
先ほどの黒豹魔女にも匹敵するスピードで突っ込んで行った。
が、
「ゲッーソ!ゴリラ魔法ニクタイキョウカ!」
突っ込んでいった友知を逆に殴り飛ばすイカ魔女。
友知は驚いて言った。
「何でお前がゴリラの魔法使ってんだよ…」
「ゲッーソ!ワタシはホカの魔女の魔法もツカいこなすコトができるのだ!」
「…ドレスチェンジ」
友知はそう言って赤と青の姿に変わるので精一杯であった。
「ゲッーソ!どうした、もうねたギれか?」
友知はなおも剣を構えて言った。
「…んなわけないでしょ。これから奇跡の逆転勝利と行くんだから!」
「ゲッーソ!タシかにここからギャクテンすればキセキだなぁ!だがな…」
イカ魔女は懐からラジカセを取り出した。
「ゲッーソ!これがわかるか?」
友知は笑って言った。
「残念だけどドレスアップした後のアタシにその武器は通用しないわよ?」
「ゲッーソ!そうオモうか?」
イカ魔女はラジカセを口の中に放り込み言った。
「ゲッーソ!今までのオンパとイッショにするなよ!イカ魔法ダイオンキョウ!」
イカ魔女の腹の中から音楽が鳴り響いた。
その音は友知を狂わせた。
「ぐぅぅわぁあぁあぁあああ!!!」
「ゲッーソ!どうしたどうした?ツウヨウしないんじゃなかったのか?」
のたうち回る友知。
「ねっ、夜葉寺院!」
「友知!」
「友知ちゃん!」
「夜葉寺院ちゃん!」
「ワン!」
そこに叫び声が響く。
コーチ達であった。
しかし、友知は相変わらず苦しそうだ。
「ゲッーソ!チョウドいい!そいつらをヤツザキにしろ、ドラゴンヴァルキリー!」
「がぁあぁぁあああああ!」
コーチ達の方に剣を構えて走ってくる友知。
その瞬間、間に割って入った人物がいた。
志穂であった。
志穂は振り下ろされる左手の剣をかわし、右手の剣の柄を握りこう言った。
「負けないで…私の良心を受け止めて!!」
金色の柄は光り輝き、二人の体を包み込んで行く。
そして、輝きが止むと友知の変身が解除されていた。
友知は志穂の方に崩れ落ちた。
「!ねっ、イカ魔女は!?」
コーチがそう叫んだがいつのまにかいなくなっていた。
マリが言う。
「逃げた?でも何で?」
しかし、いない事に全員が安堵するのであった。
そして香矢が言う。
「でも、あんな無茶苦茶なやつが出てくるなんて…せっかく志穂さんが帰ってきてくれたのにっス…」
ユリがそれに対して言う。
「そうだ!田合剣ちゃんよ!!田合剣ちゃんならあいつの音波攻撃が効かないでしょ!」
「…無理だよ。」
いつのまにか気が付いていた友知が喋り出した。
「志穂の傷は完治していないもの…そんな状態で慣れないダブルドレスを使いこなせるわけがない…」
「だったらどうすれば良いっスか…!?」
香矢が泣きつくように聞いた。
友知は静かに答えた。
「みんなごめん…志穂と二人きりにしてくれるかな?」
その言葉に全員が去って行った。
友知が口を開く。
「志穂…お願いがあるの…」
そして作戦を告げると志穂は驚いて言った。
「!何を言っているの!!それなら私がやるよ!」
「お願い…これはアタシのけじめなの!一生のお願い!!」
志穂は友知から目をそらして言った。
「…友知の一生のお願いは何度聞いたことか。」

コーチ達、4人と1匹はトボトボと歩いていた。
「時間が…もう少し時間があれば…志穂さんがダブルドレスに慣れる時間がせめて少しでもあれば…」
香矢は力なく呟いた。
「無駄だよ。」
目の前に突然現れた女医が言い捨てた。
そして続けて女医は言った。
「あれは私の最高傑作だ。今更、もう一人の聖女が出てきたところで相手にはならん。」
コーチが怒りながら言った。
「ねっ、貴様…イカ魔女はどうした!?」
女医はニヤリと笑い胸のポケットからスルメを取り出し言った。
「目の前にいるじゃないか。」
プチリとスルメを食いちぎると女医の姿はイイカ魔女に変化した。
「女医の正体は…」
「イカ魔女!」
イカ魔女は言った。
「ゲッーソ!聖女のマエにおマエラをチマツりにアげてくれる!!」
その時、フルートの音色が鳴り響いた。
友知であった。
「ゲッーソ!ミズカらのテでナカマをアヤめたくなったのか!?」
フルートから口を離し、友知は言った。
「アタシは…もう魔女には戻らない!!」
そして右手で胸の十字架を握りしめた。
その胸には志穂の…金色の十字架だけで銀色の友知の十字架はなかった。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
そう叫ぶと姿が変わった。
赤一色に。
髪は金色に。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!レッドドレス!!!」
右手に剣を持ち、そう叫んだ。
イカ魔女は言った。
「ゲッーソ!タシかにそれならオンパはキかなくなるが…ダブルドレスでもカナわなかったワタシにそんなフルい姿でカてるとオモってるのか!?」
そして二人はぶつかり合う。
香矢が見守りながら言う。
「あいつの言うとおりっスよ…友知、やけになったんスか!?」
「いいえ。」
志穂が後ろから現れて答えた。
「あれで良いんです…あれで…」
そう言いながら志穂の顔は暗かった。
「ドレスチェンジ!聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ブルードレス!!!」
炎をスミでかき消され青い姿に変わった友知は水のバリアを出した。
「ゲッーソ!それもかきケしてくれるわぁ!」
「ドレスチェンジ!聖女!ドラゴンヴァルキリー!!グリーンドレス!!!」
緑の姿になり袖の植物でスミを払った。
(まだよ…まだ!もう少しで…)
「ドレスチェンジ!聖女!ドラゴンヴァルキリー!!パープルドレス!!!」
今度は紫の姿になり腐食ガスをぶつけようとする。
「ゲッーソ!スミがなくともそのテイドのフショクがすなら!!」
イカ魔女は魔法を使わずに腐食ガスを払った。
(もう少し…)
「ドレスチェンジ!聖女!ドラゴンヴァルキリー!!イエロードレス!!!」
黄色い姿になり、自分に電撃をぶつけ強化して突っ込んだ。
「ゲッーソ!ゴリラ魔法ニクタイキョウカ!どうした、サキほどよりもイキオいがないぞ!!」
あっさり、イカ魔女に受け止められ吹き飛ばされる。
「ゲッーソ!ダブルドレスでなければこのテイドか…ジツにキョウミがワかない。」
そこに志穂が駆け寄る。
友知は変身を解き言った。
「もういいよ、志穂…分かったから。」
そう言って金の十字架のネックレスを志穂に渡した。
イカ魔女は言った。
「ゲッーソ!センシュコウタイか?」
「違う。」
友知が立ちあがって言った。
そして体が金と銀に輝きだした。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
友知は十字架を使わずに赤と黄の姿に変身した。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」
そう叫ぶ両手には剣がなかった。
驚いてイカ魔女が言う。
「ゲッーソ!ジュウジカなしで変身するためにあえてフルいスガタにカわっていたとでもいうのか…!?しかしジュウジカもナシでドレスアップすればおマエは…」
「ええ、死ぬでしょうね。今も体中のあちこちが痛くてよ。」
友知はフラフラとしながら言った。
「でもね…」
そう言ったと思うとイカ魔女の体に素早くしがみついていた。
「こんな体じゃ戦えませんけど…あなたをかかえてお星様になることぐらいはできてよ!!」
イカ魔女は驚く。
「!ゲッーソ!ジバク魔法か!?」
友知はイカ魔女を抱えたまま天高く飛んで行き、すぐに見えなくなった。
「ねっ、夜葉寺院だめだ!」
コーチが叫ぶ。
「志穂さん、あんたこうなる事が分かってたんスか!?」
香矢が詰め寄る。
志穂は冷めた顔で言った。
「…分かっていましたよ。」
「だったら何で止めなかったスか!?」
「あの子の気持ちも分かるから…私も聖女ドラゴンヴァルキリーだから!」
(大丈夫ですわ…)
「これ…夜葉寺院ちゃんの声?」
ユリが呟く。
「そんな、あんなに高く飛んで声なんか届くわけないのに…」
マリが目に涙を浮かべながら言う。
しかし、その声は確かに聞こえた。
(ワタクシはいつでも皆さんとご一緒ですわ…またお会いしましょう…)
そして空に一つ大きな光があって消えた。
全員、それを見上げながら泣きじゃくるのであった。
志穂を除いて。
(友知…あなたの想いは私が確かに受け継いだよ!!)
そう強く思い、二つの十字架を握りしめる志穂であった。
第Ⅲ部完

聖女ドラゴンヴァルキリーⅡ

聖女ドラゴンヴァルキリーⅡ

あらすじ ※第Ⅱ部http://slib.net/4291の続きです。 富士山での最終決戦から半年… 志穂は姿を消した。 しかし、ウィッチの魔女の暗躍は止まらない。 そんな中、新たな聖女が現れる…! ※自ブログにて連載中小説の転載です。 http://ameblo.jp/balu-r/ よろしくお願いします!

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted