いるかのほし22 クックとコイン3

クックとコイン3

「相手のおばさんが、悪い人でなくて良かったわ。」

その夜は、警察にも連絡して現場検証をしてもらい、全部終わって帰宅したら、11時を過ぎていた。

出張先のホテルで連絡を待っていた夫さんオカキに、電話をかけながら、クックの夕飯を温める。
ココは、クックが1回目に帰ってきた時点で、たいしたことがなかったと直感していたと見えて、先に1人でお風呂を済ませて髪にドライヤーをかけていた。チラっとリビングの帰宅した2人を確認して、「けがなかったんやろ?ドジしたらあかんで。」と、2階に上がって行った。

解ったことは、こうだった。塾帰りのいつもの道、ちゃんと、信号が青なのを確かめて、交差点を特に慌てることなく直進して渡ったところ、右側から車が進入してきたという。次の瞬間のことは、よく覚えてないそうだが、自転車のカゴからは、塾のバックが吹き飛んだ。車を運転していたおばさんは、クックがショックを受けていないか心配して、悪かったと謝るのだが、自分も信号は青だった、と言うのだ。クックは、かすり傷ひとつ負っていなかったし、ピコは、クックが見間違ったりしないことに確信はあったけど、不思議とおばさんも、悪い人には思えなくて、まあ、そのことについては、済んだことなのだからこれ以上、追及してもしかたないと言及しないでおいた。
警察も、お互いの状況を詳しく聞き取っていたが、どちらが良い悪い、という視点の検証ではなかった。

夫さんオカキも、「ほんまに、びっくりしたな、でも、よかった。」と言って、クックを責めたりはしなかった。電話を切ったら12時近くだった。

そして、そんな次の日に、コインの不思議な出来事があったのだ。

次の日の朝、クックは「むちゃ、良く寝たわ。」と言って、なんだか元気に起きてきた。なんなら、今日は学校休んでもよい、くらいに思っていたので、ピコは面食らった。夕方、学校から帰って、塾へも普通に行けると言う。そう言うなら止めることもない、と送り出したピコ。そうできるほど、はれぼったさは消し飛んでいたのだ。どちらにせよ、どこへ行くのも、ついて回る訳にはいかないのだ・・・。

そして、当然だけどクックはちゃんと帰ってきた。しかも、「さっき、自転車置き場で、面白いことがあったよ。」という。
「自転車を預ける100円を、財布から出そうとしたらね、なんと、カバンの中から、勝手に飛び出したよ。50円玉が2枚。」
へえ!!不思議。なんだか、よくわからないけど、とっても「いい感じ」のこと、とそのエピソードは、特別な何かを感じさせた。
それが証拠にその日を境に、クックの不眠症は軽くなってゆき、学校のこともクックに合う学校を探しなおそう、という方向に気持ちが変わって、程なく「ここがよさそう」と思える学校が見つかったのだった。、

いるかのほし22 クックとコイン3

いるかのほし22 クックとコイン3

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-22

CC BY-NC-ND
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