死神さんの女神様④
第4話です!
是非読んでね☆
謎の美少女転入生
ホームルームが始まる前、教室は騒がしかった。
涼しさがまだ残るこの季節の教室に、ある噂が立っている。
「転入生?」
クラスで作った唯一の友達、
ナツちゃん、通称ナッツちゃん(仲良くなってきたら呼ぶ予定)
が言うには、どうやら今日、転入生が私たちのクラスに来るらしい。
その子がまた、とんでもない美少女だという目撃情報もある–––––––らしい。
「ね、ティナちゃんはこの学校に転入とかしてきたの?」
「ううん!私は入学したよ♪ナツちゃんは?」
「私は去年の3学期に転入して来たの。パパの仕事の都合だったんだ。」
「そっかー」
「あたしもそーだよ!」
「へ?」
「ちょっとルリ!」
「何よー、いーじゃん!」
ルリと呼ばれるその子は、どうやらナツちゃんの友達らしい…。
私の苦手ジャンル『明るすぎる天然』にハマっている。
「初めましてティナ!あたしルリナ♪よろしくね☆」
ニコッとピースサインをしてみせるその子は、どうやら私と友達になる気らしい。
困るんだけどな…勝手に友達ぽくされたくない。
でも、友達作ってて損はないか…。
私はしみじみ
「よろしくルリナちゃん」
と呟いた。
すると、
「やだなーもう!そんな固っ苦しい呼び方やめてよねー。」
「ルリ!この子人見知りなんだよ!?」
「いーのいーの、ナツちゃん。ごめんなさい、なんて呼べばいいかな…。」
「なんか、ごめん。いーよ別に。好きに呼んで。」
「ルリ〜!」
スタスタと自分の席に戻っていくルリナちゃん。
なんで怒ってるの…。
もう、やだ。
だからリス達と離れたくなかったのに。
「座りなさーい。ホームルーム始めるわよー。」
「「「はーい」」」
クラス全員が一斉に席へ戻る。
もちろん、私も。
「みんなもう知ってるでしょうけど、転入生がいるの。まずはその子を紹介するわね。さ、入ってー!」
ガラガラガラ…
美少女と噂されるだけあって、その顔立ちはモデル顔負けだった。
スタイルも良く、長い黒髪をなびかせながらゆっくりと歩いている。
男子達の目はもちろんその子に釘付け。
みんな目がハートになっている。
確かに綺麗だし(色んな意味で)、どちらかというと美人。
スラリとした手足に、スッとした背。
まるでモデルのようなその体は、高い身長で先生の背も追い越してしまいそう。
教卓に立つと真正面から見える顔。
凛とした目は真っ直ぐに私たちを見つめている。
少し高い鼻は、その綺麗な顔立ちをより一層引き立たせる。
私から見るその子の第一印象は、
《クールな子》。
「リンです。今日からよろしくお願いします。」
その声は、澄み切った湖のように綺麗で、クラスのあちこちから歓声やら拍手があがるほど。
「リンさんはあっちね、ティナさん!手を上げて!」
「え?あ、はい!」
ピンと伸ばした手も、その子に釘付けになっているみんなの目には止まらない。
「あの子の横ね。」
先生がそう言った途端、みんな一斉に私の方を睨んできた。
そりゃそうだ。
あんな美少女の隣の席だもん、羨ましくないわけがない。
「よろしく」
「よ、よろしく…!」
緊張と不安で胸が張り裂けそう。
みんなは羨ましいかもしれないけど、極度の人見知りの私にとってはとんでもない一大事。
「あ、あのぉ…」
「なに?」
「あ、いえ、何でもないです」
「そ。」
なんか、返事が素っ気ないような…。
いやいや!クールだもんね!そりゃそう。
ホームルームも終わり、休み時間になると私の周り…ではなくリンちゃんの周りにはあっという間に人だかりができた。
私は横に押し倒され、なんと私の席まで占領された!
「大丈夫?」
「あ、ナツちゃん…。大丈夫だよ、ありがとう」
「うん♪」
「それより、ナツちゃんはリンちゃんに興味とかないの?」
「え?あー、何だかあの子嫌な感じがするんだ。私ね、そういう勘とか当たっちゃう方で。ティナちゃん、気を付けてね。なんか、隣になったのも偶然なのか不安で。」
「リンちゃんは普通の子だよ、たぶん。確かにクールで話しにくいとこはあるけど。」
制服のホコリをパタパタと払いながら私は言った。
自信もなければ確証もない。ただの私の勘でしか過ぎなきいが、リンちゃんは悪い子じゃないと思う。
「そっかなぁ。そうだといいんだけど…。考えすぎだよね。」
「うん!」
このとき私たちは、人だかりの隙間からリンちゃんがこちらを睨んでいるのを気づかなかった。
次の日
「はぁー、やだなー」
今日の朝、ナツちゃんからメールがきた。
その内容がこれ。
【ごめん(>人<;)昨日の夜から風邪気味で、今日も咳が止まらないからママが学校休みなさいって(T ^ T)だから今日は休むね(´・_・`)ごめんねー(つД`)ノ」
「はぁ…」
で、私が返事した内容がこれ。
【了解( ̄^ ̄)ゞ大丈夫だよー( ´ ▽ ` )ノゆっくり休んでね(o^^o)明日は来てねー(≧∇≦)】
全然大丈夫じゃないし…。
はぁぁ……。
今日学校休もうかな…。
うちのお母さんたちは、親バカすぎて私が頼んだことはなんでもしてくれる。
ズル休みも何度したことか。
「おかーさーん」
「なぁに?どうかしたの?」
「あ、うん…あのね…」
ピロリロリン♪ピロリロリン♪
「あ、メール…」
この歳でまだガラケーという幼すぎる私は、メールしかしていない。
LINE?とかいうのも、ガラケーで出来るんだけど機械オンチな私には向いていないだろう。
「ん?なになに?」
【お前は学校を休むべきじゃない。今日の昼休み、体育館裏で待ってるぞ。ケイ】
「は、はぁ!?」
「え!?どどどどうしたの!?」
「あ、ううん。友達がね、今日も学校来いよーって。なんで決められなきゃいけないのかなー。」
「休みたいの?」
「え?あ……う、ううん!行くよー♪」
「そう。で?どうしたの?」
「へ?」
「さっき呼んだでしょ?」
しまった…。
メールくるタイミング悪すぎる…。
「な、何だったかなぁー。また思い出したら言うね!」
「そう?わかったわ。」
ふぅ。
なんとか時間は稼げたか。
…にしても、なんであいつが私のアドレス知ってんの!?
教えた覚えないんだけど…。
まさか、リスorリーorナツちゃん!?
「あ、もうこんな時間よ。キース君達と待ち合わせじゃない?」
「え?あ、いけない!行ってきまーす!」
バタバタバタバタ…
ガチャン!
私は、横断歩道を渡り階段を駆け上がり広い歩道を全速力で突っ走った。
「ごめん!おまたせー!」
「おっそい!3分遅刻!」
「3分くらい許してよー。」
「ダーメ!私たちはそんなに甘くないからね」
「はいはい」
息を整えてから、3人で歩き出す。
学校に着くのは、話をしてたらあっという間。
靴を履き替え、リスたちと別れた後は私一人で階段を上がりクラスへ向かう。
普通なら入ったところで『おはよう』とか挨拶するのがお決まりなんだけど、私の場合そうはいかない。
なんてったって人見知りだからね☆
今日はナツちゃんがいない。
その事実と現実を突きつけられた私。
「お、おはよう…」
一応、リンちゃんには挨拶をしてみる…。
しかし…
「おはよ」
話終了。
はぁ…。
ほんと、話題持たないなぁ。
「おはよー!ティナ!」
「え?」
リーとリスの声じゃない。
ナツちゃんは今日は休み。
その3人以外に私をティナと呼ぶのは…
「ルリナちゃん!」
「昨日はごめんよー。勝手に怒っちゃって」
「いーの。私の方こそごめんね。」
「なんでティナが謝んの!」
「だって…」
「じゃあさー。あたしのこと、ルリナかルリって呼んで。それで全部チャラ!」
「…いーよ!ルリちゃん!」
「んー、まぁ、いっか。自分から呼べるようになるまで待つよ!」
「?」
「慣れてきたら、ルリナかルリって呼び捨てにしてよね☆」
「うん…うん!」
素直に嬉しかった。
呼び捨てにしてもいいなんて。
そっか。
ナツちゃんがいなくても、ルリちゃんがいるんだったね。
そして私は、そう遠くないうちに友達の大切さを思い知らされ、友情を試されることをまだ知りもしなかった––––––––。
死神さんの女神様④
最後まで読んでくださりありがとうございました!
次話も読んでくださいね(o^^o)