どーしてもタイトルが思いつきませんでした。

好きに読み取って頂ければ幸いです。
こちらの話は『小説家になろう』にも投稿しています。

 「あんたねー、母親だろ?ちゃんと見てないと」
 「はい。本当にすいません」
 お母さんが謝ってる声が聞こえる。
 「あんなさー、車椅子の子をなんで一人にさせるかなー」
 車椅子の子?僕の事だ。
 僕は今玄関隣の居間のソファーで寝ている。だから声が筒抜けで聞こえてくる。
 「丁度俺が通ったからいいよ。そうじゃなかったら息子さん死んでたよ」
 そうだ。僕はこのおじさんに助けられた。川原で体勢を崩し、車椅子から落ち、川に入ってしまったのだ。
 「はい。本当に有難うございます。おかげさまで助かりました」
 「本当に分ってるのかなー?俺がいたから良かったけど、また一人であんなとこいたら、命幾つあっても足りないよ」
 「分ってます。。本当にすいません」
 またお母さんが謝ってる。しつこいおじさんだ。僕が悪いのに。
 「あのーこれ、少ないんですが」
 「いや、俺はそういうつもりじゃ」
 「いえいえ、そういう訳にはいきませんから」
 「いや・・・」
 二人の声が小さくなってく。良く聞こえない。お母さん、あのおじさんに何か渡したのかな。
 「それじゃー、お大事に」
  バタン
 急に大きな声が聞こえたと思ったら、玄関の閉まる音がした。
 そしてお母さんが居間に入って来た。

 「どうやって川原まで降りたの?あんな高い土手」
 横になっている僕の隣に立ってお母さんが聞いてきた。
 「丁度、高校生のグループが通ったんだ。四人。だから頼んだ」
 「その人達は?あなたを川原に下ろして帰ったの?」
 お母さんが呆れた口調で言う。
 「優しいいい人達だったよ。丁寧に降ろしてくれたし。上に上がりたい時は通る人にまた頼みなよ。って、言ってたし」
 「そお?無責任じゃない?車椅子の子を川原に降ろして行っちゃうなんて」
 「そんなことないよ。それにそんな事言ってたら僕は何処にも一人で行けないじゃないか」
 「なんで一人で行きたがるの?お母さんとかボランティアの人がいる時に出かければいいじゃない」
 「僕はもう中学生だよ。日本中に車椅子で色々な所に行ってる人達がいるんだ。僕も一人で色々行けるようにならないといけないじゃないか」
 「それにしてもあなたのは危ないのよ。危険な所に行って」
 お母さんは責める様な目で僕を見ていた。
 「危険か危険じゃないかを見極めてるんだよ。そうしないと僕はどこまでなら出来るのか、分らないじゃないか」
 「あのね、そういうことはお母さんか、ボランティアの人がいる時にやりなさい」
 そう言うお母さんの目は厳しかった。
 「一人じゃ、いざという時どうにもならないんだから」
 僕は悲しかった。お母さんは僕は一人では生きていけないと思ってる。
 「じゃあさあ、お母さんが死ぬ時は僕も殺してよ」

  「何を言ってるの」
 お母さんはビックリした顔をした。
 「何言ってるの。お母さんが死んでもちゃんとあなたの事を見てくれる人はいるのよ。行政にも民間のボランティアにも。皆があなたを助けてくれるわ」
 「分んないよ、先の事は。世の中ドンドン世界が変わって行くんだ。僕は毎日ネット見て、色んな事を見てるよ。僕らにとって住みにくい世の中になるかも知れない」
 「まさか」
 「分らないよ。良い世の中になるかも知れないし、要らない人間はドンドン捨てて行く世の中になるかも知れない。皆いつまでも同じ日々が続くとは限らないと言ってるよ」
 「インターネットの話でしょ?お母さんも知ってるわよ。いい加減な事言ってる人多いんでしょ。そんなの信用しないの。さあ、とにかくもう危ない事はしないでよ。中学生なんだから」
 そう言うとお母さんは居間のテレビを付けて、夕飯の準備をするのか台所の方に向かった。
 お母さんは分っていない。
 「一人で生きていけるようにならなきゃいけないのに」

 テレビでは内閣府が発表した年間20万人の移民受け入れのニュースが流れていた。
 これにより人口の減少を食い止め、一億人の人口を保つと・・・

どーしてもタイトルが思いつきませんでした。

読んで下さって有難うございます。

どーしてもタイトルが思いつきませんでした。

ちょっとした事があった日の母と車椅子の少年のちょっとした対話です。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-21

CC BY-NC-ND
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