ロストメモリー 6

世界

「ねえ、リーチ何してるの?早く、外に行ってみよう。私とリーチの家に行って、ママに話してみようよ。」アンナはこの状況が堪えられなくなり、いても立ってもいられない状態だ。だが、リーチはゲームをもう一度セットしてみる。するとさっきと変わらぬ形でゲームが始まった。ただ町の設定はできるが、年齢の設定画面などは全く出てこない。リーチは、黙ってゲームを終了させ、「アンナ、行こうか。」とだけ言った。部屋を出て、一応念のために、家の中を徘徊する。階段を降りて、一階にはダイニングキッチンや、バスルーム、リビングがあるが、特に変わった様子はなかった。キレイに掃除され、整理されてる感じだ。アンナは、すぐに外に行きたいと思っていたが、外がどういう状態なのか考えると、億劫になるところもあって、躊躇いを隠せなかった。そんな時、部屋に何か違和感を覚えた。ん?何かが違う?「ねえ、リーチ。前に遊びに来たとき、アキラの家ってこんな感じだったっけ?模様替えでもしたのかな?なんだろ?なんか変な気がしたんだけど…」「ん?どこが?」そう言って、リーチはリビングの辺りを見回す。アキラの家のリビングは、白い大きなレザーのソファーが置いてあり、その前には木目のモダンなテーブルが置いてあった。そして、テレビ台、その上に40インチほどのテレビが置かれてある。リビングに特に違和感は感じないが…そう思いながら、リーチはもう少しだけ、辺りを見回す。ん?そういえば、この部屋にはグレーの座椅子が置いてあったっけ?よく、アキラの家に遊びに行った時に、アキラのパパがソファよりも、座椅子の方が落ち着くなんて言って、座椅子に持たれかけたり、枕がわりにして、テレビを見てたっけ?でも、そんなこと言い出したら切りがない。古くなったから捨てたのかも知れないし、結局ソファーの方が落ち着くからって、どこか別の場所に置いてたかも知れないし…そういえばやけにこの部屋、整理されてるな。毎回アキラの家に来ると、テーブルの上に、アキラのママがよく見てたファッション雑誌や、郵便物なんかが置かれていたっけ?それにアキラのパパはタバコを吸うから、灰皿も置いてあったし、なんか散らかっていたようなイメージがあるけど…ん?よく見ると、この部屋には子供が使うようなものばかりが、置いてあるような気がする…「アンナ、この部屋って、やけにスッキリした感じだよな。アキラとユーセーが読んでた漫画とかオモチャは、あそこに転がってるけど、パパやママのモノが見当たらないよな。」そうアンナに声をかけると、「んー、だから変なのかな?でも、そんなのキレイに片付けただけかも知れないし…」そう言いながら、アンナはバスルームへと向かった。リーチも、その後に続いて行く。「アキラのママは、どこかに出かけたのかな?」バスルームの扉を開けながら、リーチに話しかけた。リーチはバスルーム近くの脱衣所で、首をかしげていた。「どうしたの、リーチ?」リーチは、洗面台を指差した後に、「アンナ、違和感がありすぎだぜ、これ…歯ブラシにしても、歯磨き粉にしても、子供用のモノしかないし、それに化粧用品や、大人が使うようなモノは一切ない。だいたい男の人も、この辺りに髭剃りとかを置くものだけどな。これじゃあまるで、子供しか住んでないみたいだぜ。」とアンナに言った。リーチが言った通り、洗面台には子供が使うモノしかなく、生活感も感じられないみたいだった。アンナはリーチを促し、再びダイニングキッチンの方へと向かう。キッチンはシンクが二つ並んであり、キッチンカウンターも広く、料理するのに適していた。キッチンカウンターの後ろに、食器棚があったので、アンナは一つずつ開けていった。すると驚くことに、大人用の食器がまるで見当たらない。ただ、なぜか鍋やフライパンといった調理器具は、存在していた…アンナは、これ以上は開けずに、「リーチ、もういいよ。外に行こう。」とだけ言った。アンナにとって、この家はあまりにも気味が悪く、一刻も早くこの場を離れたいという気持ちでいっぱいだった。リーチもアンナに「ああ、そうだな。とりあえず一つ一つ見ないと分からないからな。」と言った。

ロストメモリー 6

ロストメモリー 6

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-20

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