こえ部企画。蔭たんちゅー 1(単発になるか長編になるかはこえ部のメンバーしだい)

とある静かな森の中。陰たんはいつものように毛布を持ちのんびりと過ごしていた。それはいつもと同じ風景。いつもと同じ空気。いつもと同じ雰囲気で。そうやって陰たんが毛布を持ちのんびりと過ごしていると徐々にみんな集まってきた。
「おーい陰たーん!一緒に遊ぼうよー!」
 普段はこんな態度はとらない陰たんちゅーがやってきた。毎回思うことだがかわいい。女の私から見てもかわいい。
「あらあら……お二人ともまだそんな低俗な遊びをしていらしてるのですねぇ……あなたたちはいつになったら大人の遊びというのに目覚めてくれるのですか?」
 相変わらず意地悪なミカマルがやってくる。ちょっとめんどくさい性格をしていたりもするのだがミカマルのいいところは私がよく知ってる。だが陰たんちゅーとは全く仲良くなれないのだ。
「また来たなッ!私の陰たんは渡さないからねっ!!!」
「あなたみたいな低俗な遊びより私ともっとお嬢様が遊ぶものをしませんか?」
 しばらく喧嘩をしていると
「あんたら二人こっちから見てると悲しくなるからやめろ……」
 二人の頭を軽く小突く。刹那だ。突っ込み役を毎度やってくれて突っ込みのできない私にとってはとても助かることなのだ。この二人の仲は刹那がいるから成り立ってるに違いない。そして最後に必ず来る唯一この森での男の子。
「ご、ごめん……遅くなっちゃったかな……?また俺が最後か。残念。今日こそはみんなを驚かそうとしたのに……」
 ヤマトミカンは唯一の男の子。実をいうとヤマトミカンはもともとこの森に棲んでいたわけじゃない。そう、ここに迷い込んでしまったのだ。だから私がこの子達を紹介してみんな仲良く遊んでいるのだ。

そのごみんなで遊んで、遊んで、遊びまくった。森というとても使いやすい遊具を使い自分たちでブランコを作ったり、秘密基地を作ったりして遊んだ。そして楽しい時間はすぐに過ぎる。そしておなかがすくのも早い。ということで
「じゃじゃーんっ!みんなのためにお弁当作ってきましたー」
 料理がうまいヤマトミカンは私たちのためにお弁当を作ってくれたのだ。
「うわぁーおいしそうじゃない?ありがとーヤマト!」
 刹那は素直に喜んでお礼を言っている。だが私は言えない。なぜならどうしてもヤマトミカンが相手だと素直になれないのだ。
「べ、べつにヤマトのためにた、食べるんじゃないからなッ!!!」
「わ、私だってヤマトのために食べるんじゃないんだぞッ!!!」
私と陰たんちゅーはいつもこうだ。私と陰たんちゅーは幼馴染でなぜか性格も同じような感じだったのだ。それで問題なのはこの森のお嬢様の立場にいらっしゃるミカマルなわけで……
「わ、私はヤマトのためだけにお弁当作ったのよ?ちゃんと食べてくださいね。」
 そのミカマルの手にのっかていたお弁当の中身はとてもきれいに整えられて食べ物が入っていた。正直言ってこれ自分で作ってないんじゃないかというくらいきれいに。もしかしたら作ってないのかもしれないが……
「そんなこと言ったら私もッ!!!」
 陰たんちゅーもお弁当を作っていたらしい。ここまで来るとヤマトミカンが弁当を食べきれるか心配になってきた。だから私は手に持っていた弁当を私の背中に隠す。
「どーせみんなお弁当しか作らないだろうと思ったから私はクッキー焼いてきたよ。」
 やっぱり刹那は分かってる。この二人はいつもこういうことになると弁当で勝負をするのだ。それをわかってかぶらないようにクッキーにしてくれたのだろう。刹那が弁当作ったら間違いなくこの二人以上に上手に作れるであろう。刹那は何でもできるすごい子なのだ。
「あ、ありがと!ちゃんと全部食べるよ~……」
ヤマトミカンはちゃんとお礼を言っていたがあからさまに苦しそうな顔をしていた。私だってお弁当を作ってきてる。だけどヤマトのつらい顔は見たくない。だから私はおとなしく見守ってることにした。見守ってることしかできなかった。

そのごちゃんと二人の弁当、刹那のクッキーをすべて食べきり芝生の上で横になっていた。普段は見せない苦しそうな顔。だけど私の前では見せてくれているような気がする。私はこっそりヤマトの隣に行く。
「大丈夫?おなか。胃薬あるけど……飲む?」
 ヤマトは黙ってうなずき私は胃薬とお水を差しだした。
「助かったよ……あの二人の弁当はうまいんだけど偏ってるんだよなーどちらかが油っぽいか味がない。どっちかだからなー食べきるのが意外と疲れるんだよ。刹那のクッキーはうまいんだけど量が多いから食べきるのが大変なんだ……」
 ヤマトの珍しい弱音。これはチャンスかもしれない。
「ヤマト、わた……」
「なぁ陰たん。」
 私の声はヤマトの声にかき消されてヤマトには届かなかった。
「ん?な、なぁに?」
「お前もお弁当作ってくれたんだろ?俺に渡そうとしてなかったか?」
 ヤマトはちゃんと見てくれていたのだ。私が弁当を差し出そうとした瞬間を。
「ちゃんと食べるから俺にくれないかな?俺陰たんの弁当食べてみたいんだよ。折角胃薬で調子は戻ってきたからさ。」
 そういう言葉を聞いて私はほっとして弁当を差し出す。ヤマトは笑顔でこう言った。
「陰たん。お前の弁当が一番『好き』だ」

こえ部企画。蔭たんちゅー 1(単発になるか長編になるかはこえ部のメンバーしだい)

こえ部企画。蔭たんちゅー 1(単発になるか長編になるかはこえ部のメンバーしだい)

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更新日
登録日
2012-03-17

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