心はいつもすぐ側に 本田良物語1
今日は高校入試だった。
得意な国語・社会・理科は完璧であるが数学・英語はさぱりだった。
昨日はなぜか眠ることができずテストが終わったバスの中でウトウトし始めた。
俺が受けた八神高等学校は中の上のレベルだからそこまで心配はしていなかったし、入試と言う名の大イベントが終わったことでほっとしたのかすぐに眠りに付いた。
ふと、目が覚めるとちょうど1個手前のバス停だった。横に乗っていた大野和也はバスから降りていた。
俺たち二人だけが八高を受けた。大野和也と言う男はシャイな男だ。 去年の修学旅行では好きだった女と同じ班になっても、話しかけられても話返さないようなシャイと言うかチキンと言うかどちらもぴたりな男だ。
そのせいか和也は俺に何も言わずにバスから降りやがった。しかし、別にそんなことで怒っているのではない。単純に乗り越し料金がもったいないから起こしてくれても良かったんだ。まあ、俺はケチと世間で言われるような男だ。
そんなこんなで、乗り越しをせずに俺は目的のバス停まで到着することができ家に帰ることができたのだが、この後に俺の運命を変える出来事にあってしまった。
それは、家に無事に到着し家のドアの鍵をあけ家に入った瞬間だった、目を疑うような光景が目に入ってきた。
朝、家を出た時の様子と今の家の様子が全く違うのだ。なぜなら、親は年老いてるし、妹二人は俺よりも年上の女の姿になっていた。
俺は全く今の状況が理解できなかった。自分が浦島太郎になったかのように思えてきた。
しかし、実の息子や兄が受験から帰ってきたのに親兄妹の反応がおかしいのだ。
親父は腰を抜かしているし、お袋は固まっている。妹らは完全にパニックになっている。
そんな事を重大な事と認識していない俺は自分の部屋に入った。だが、この部屋も朝とは全く違った姿になっていた。女物の服や下着、女性雑誌など女物であふれかえっいた。
慌てて1階に駆け下りると皆が仏壇の前で拝んでいる。たしか、朝まで家の中に仏壇がなかった。仏壇の中には俺の慰霊があった。
俺がパニックになりそうだった。俺は今日、八高に受験しに行った。そして普通にバスに乗って帰ってくると、親兄妹は完全に年老いてる。
仏壇に俺の慰霊と理解不能である。
慌てて和也に電話をしたが電話番号が使われていない。
ふと、前を見ると鏡に自分姿が映っていないのである。後ろに女の人立っていた。 おそらく長女の夏樹だと思ったが朝とは別人であった。
朝は同じ中学に通っている中二の姿だったのに見事10代後半から20代前半の姿に変わっている。
夏樹は悲しそうなまた不思議そうな顔で小声ではなしかけてきた。
「あにき・・・7年前にバスの事故で死んだんだ・・・覚えている?」
何を言っているのか分からなかった。
「いや、まて、俺は今日受験でバスに乗って帰ってきたんだ。7年前に死んだって・・・」
言葉が頭に浮かんでこない。
すると、親も次女の亜樹も目の前に立っていた。
あっちも信じられないと言う感じだった。
しかし、俺は家のTVから流れてくるニュースを聞いて確信した。
俺は朝まで2012年3月16日にいた、だがニュースでは2019年3月16日で見覚えのある光景が目に飛び込んできた。
俺がバスの中で起きたあの場所でペチャンコになったバスの映像が流れていた。
俺は間違いなく死んだんだ。
だが、今は物や会話は出来るしお腹も空いている。おかしいのは鏡に映らない事と現在では存在しないということだ。
だから 別に日常生活では問題無い。 ただ、近所や知り合いの人と出会うことは出来ないだろう。
その事故で死んだのは俺を含めて7人。原因は前方から来た大型トラックの運転手の居眠り運転だそうだ。
第1部 完
心はいつもすぐ側に 本田良物語1
次回 日常生活はどうなるのか!!
幽霊として生きていけるのか?
本田良はどうなるのか?