目の前に死神が立っていた 2

士道 きのふゆ

2話目です。
待っててくれた人いますかね...?
とにかく読んでくださる方、ありがとうございます。

天界からの来訪者

 俺がそいつと出会ったのは四月のある日のこと。
 高校生の俺はトラックに轢かれ、死んだ。

 ...しかし、そこでお世話になった死神が少しアホだったおかげで何とか成仏は免れた。
 かといって、幽霊な訳でもない。
 ...分類は霊になるらしいけど。

 まぁ、そんなこんなでその死神『ルミア』と仲良くなり、俺は平和な日常を送っていた。

 今回は、そんな日常が壊れていく話をしよう。



 1.
「...ふ、ふふふ、、、ふはははは!!!」
「我にひれ伏せ!人間ッ!」
「死神のチカラ...とくとみよ...」
「我がオリジナルソードスキルッ!ムーンバーストストリーム!」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 俺は『川上 奏也』
 俗に言う高1男子。
 先程からの声は、別に俺が日本男子ならかかるであろうあの病にかかった訳ではない。

 いや、確かにかかってはいた。だが、それは昔の話だ。
 とにかく俺の声は最後の「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」だけで...

「おい奏也!続きは!?続きは無いのか!?」
 そう、最近居候する事になった電波ロリ...じゃなくて、死神ルミアの声。

 続き、とは、俺がサブカルに没頭していて、ラノベや漫画、ゲームを沢山持っているのだが、それを勧めてみたらドハマリしたのだ。
 先ほどのセリフからもそれが伺える。

「続きなんて無いよ。その作品の続編まだ発売してないし」
 ルミアが読んでいたのは『ソードアートオフライン』という大ヒット作。
 主人公が沢山の女性といちゃこらいちゃこらしながら、ゲームの世界から脱出する有名ラノベ。
 多くの人を虜にした『ソードアートオフライン』だが、虜になったのは、『死神』も例外ではないようだ。

「なにおぅ!?クソっ...こうなったら『雷撃文庫』に押し入って...」
「無理無理。というか、長く執筆時間をとるから面白いんだろ。待っただけ面白くなる、と考えればいいじゃないか」
「くっ...わかった...」

 ちなみに俺の家の家庭環境について説明すると

 普通に親2人、ひとりっ子の家庭。
 裕福でもなく貧乏でもなく。
 だが、勤務時間のせいで親とは顔を合わせることはない。
 というか、家に来ない。

 まぁ、だからこそ見た目中学生くらいのロリを家に居候させられるんだが。

 あ、そう言えば...
「ところでさ。最初会ったとき、顔隠して声も変えてたじゃん」
「あぁ。顔を隠したのは普通に用心の為だな。死神の敵は『この世ならざるもの』。
 奴らの中には『コール』を使えるものもいるからな。」

 んん?またなんか知らない単語が...
「声は...その...」
「言いたくないのか?」
 まぁどうしても聞きたいわけではないしな。
「言いたくないわけでは無いんだが...」
 何だっていうんだ...
「取り敢えず買い物に行ってくるよ。話はその後で」
 もう面倒くさいから、取り敢えず今日の夕食を買いに行く事にする。
 ...余談だが、ルミアは肉が嫌いらしい。
 なんか、俺の中の死神のイメージが崩れていく気がする。
「...なんか失礼な事考えてないか?」
 ...おっと、契約したせいで、大体の心の声が筒抜けなんだった。


 2.
「ジャガイモ、人参、鶏肉ミンチ、『アーモンドカレー』の辛口、後卵も買ったしもう買うものはっと...」
 外に出ると、雨が降っていて少しガックリする。
「傘は持ってきてないしなぁ...走るか」
 そうして走ろうとした瞬間...

 バシッ

 白いフードを被った奴が店から出てきて、俺の買ったモノ達を袋ごと奪い取って...バイクに乗って去っていった。

 雨の中ひったくりご苦労様です
 きっと今日の夕食はアーモンドカレーの辛口なのでしょうね。
 なんてどうでもいいことを考えていた。
「ちくしょぉぉ!!こんな天気でひったくりかよっ!」
 あいつぜってぇろくな死に方しねぇ!
 周りの人が警察を呼ぼうとしたが、今更呼んだところで無駄だろう。
(ルミア...聞こえるか?)
 心の中で家にいるはずのニートに語りかける
(...あぁ荷物を盗まれた訳か。どんくさいやつめ)
(なにおぅ!?あんなことがあるなんて予想できるか!)

 俺は使い方のイマイチ良く分からない魔術を使わなくても契約によってテレパス可能だし、ルミアも「テレパスくらいいつでもいける」らしい。
 それを利用した緊急連絡手段である。

(とにかくなんだ。私がそいつをとっちめればよいわけか?)
(ダメだって!死んじゃう)
(...今はあの戦いのおかげで魔力がスッカラカンだからな。私が出来ることなんてテレパスと、この前のような融合のようなものだ。)
(...ならいけるか?)
(後は武器召喚くらい...)
「それが危ないんだよっ!!」

 うおっ...しまった、声にしてしまったせいでめっちゃ目立っとる...

(まぁ、だったら何故私を呼んだ?こうしているあいだも逃げているのだろう)
(融合が出来るってことは、俺を死神化させることも出来るんだろう?)
 試したことがあるが、どうやらルミアにその気があればあの時のように俺も死神化する事は可能らしい。
(そんなことしてみろ...今度こそ私は『これ』だ。)
 親指で首を切る仕草をするルミアが脳裏に浮かぶ。

(まぁいい、飯抜きはキツイからな...仕方無い。)
 その瞬間、体全体が凄く軽くなった。
(運動神経の強化、探知能力の付与、スタミナを無尽蔵なものにした。...これで取り返せなかったら今度こそ魂を頂くからな...)
(さんきゅ!じゃあ行ってくる!)
 そして走り出した瞬間、自転車を凌駕するようなスピードがでる。
 周りから「おぉ...」と言う声がきこえた。

 バイクの車輪の跡なのか、地面に線がひかれ、それが薄く光っている。これが探知能力とか言う奴だろう。
「...マジでやべぇなこれ」
 陸上選手並みのスピードで走ってるのに全く息切れしない。
「っと、ここか...」
 バイクがコンクリの建物の中に止めてあった。
 そしてひったくり犯は..
「多分建物の中...か」
 正直、ないとは思うが武装なんてされたら終わりだ。銃火器は無いとしてもバットや鉄パイプ、もしくはナイフなど、一般人でも簡単に人を殺せる世の中。警戒しすぎるくらいがちょうどいい。
 ルミアを呼んだら怪我なんかじゃすまねぇし...

「助けてあげようか?」
 不意に後ろから声が掛かる。
 見るとそこには白いフードを被った奴が。
 一瞬犯人かと思いきや、フードのデザインが違う。
 それに、どうみてもコイツは女の子だ。
 俺と同年代だろうか、少なくともルミアよりは歳上だろう。
「ボクなら彼らを傷つけずに事を済ませられる。」
「...?」
 どこか不思議な雰囲気の少女だ。
「...恩を売っておきたいし、ボランティアと言うことでやらせてもらうよ?」
 ...なぜコイツは事情を知ってるいるのだろうか。現場にいたとしてもこの短時間で追いつくのは不可能だ。しかし...もし取り返せなければ飯抜きどころじゃない。魂をとられるのだ。
「本当に出来るなら...頼む」
「りょー...かいっ」
 そういうと、飛び上がって消えた。
 数秒後...

 .........バシュッ!!!!

 ...何か爆発音と共にコンクリの建物が消滅していった。
「うあぁぁぁ!何があった!?」
「『白天ノ葬』...ボクの能力で彼らを全員記憶を消し、どこか遠い空間へ送ったのさ」
 能力。その単語のニュアンスからして、多分ルミアの同類なんだろう。
 だが、いつの間にか戻ってきてるフード女にもその言葉にも反応出来なかった。

「お前...俺の荷物は...?」
「...あ」

「ねぇねぇねぇねぇねぇ!?一体何してくれちゃってんの!?あれないとしばらく飯ないんだけど!?ってか家で腹すかせてまってるやつもいるし!!いや、それはいい!魂俺取られちゃったらどうしてくれんの!?」
「建物破壊よりもそっちなのか...」
「あったり前だっ!!」
 フード女を木に向かって押すようにする。
 今時流行りのイケメンに対して許される、暴行を幸せに変える超絶奥義『壁ドン』に見えなくもない。まさか本当に自分がするとは思ってもいなかったのだが。
「な、なにをする!?こんな真昼間からハレンチな...」
「そんなんじゃねぇ!」
「いいだろう..そっちがその気ならこっちもそれに答えてやる...」

 その後、この周囲に「アッー!!!!!!!」という絶叫が響いたのはまた別の話。

 3.
「...遅い」
 ルミアは1人ぼやいていた。契約主である川上奏也が荷物をとられたとかで連絡してきた。その時点で帰りは遅くなると予想はついていたのだが、あまりにも遅すぎる。
 それにもっと気がかりなのは、テレパスが通じないことだ。
 何回もテレパスを試みているものの、向こうには全く届いていない。
 ...もしかして
『この世ならざる者』にでも遭遇した...?
 奏也には人間離れした運動能力こそ与えたものの、人間の力ではどうやっても奴らは倒せない。
 ...しかし奴が死んだら何かしら自分にも影響がでるはず。

「あれ?ど、どうして?」
 目から、一滴雫が落ちた。それを皮切りに涙が流れ始める。
「な、私は...死神なのに...」
 力をほとんど失ったルミアは、力を得て死神になれるようになった奏也とは逆に人間になってしまった。
 といっても奏也がほとんど死神になれないのと同じよう
 に、ルミアも寿命や、微弱ではあるが魔力を扱えるなど、完全に人間にはならないようだ。

「はやく...帰ってこい...ばか」
 呟いた瞬間

 カチャン
 と、鍵が開く音が。

「ッ!!!」
 無意識に玄関へ駆け出していた。ゆっくりと開くドア。そして開ききったドアの前には

 何故か前かがみになっている奏也と
 白いフードを被り、奏也を支える少女の姿があった。


「...ということでな。」
「なるほど。...掘られたのか」
「違うよ!?」
 あの後ハレンチな行為とやらと勘違いしたフード女は、俺を思いっきり突き飛ばし、よろめいたところに...木の葉秘伝体術奥義『千年殺し』をぶちかましたのだ。

「だ、だって君もその後お詫びをしたら『もっとしよう、まだ物足りない』って求めて来たんだから同じだろう?」
「言葉を切り貼りすんのやめてくれませんかねぇ!?」

 もっと買い物しよう。(独り言、ねだってるわけではない)まだ買っていたものに足りてない。(ジロっと見てやったがねだってるわけではない)という事だ。なにか色々やったわけではない。

「で、貴方は何者なのですか?」
 俺は取り敢えずフード女に問うた。
「馬鹿め...どうみてもコイツは...」
 ルミアが何か言おうとしたが、フード女がたしなめる。
「自己紹介くらい自分でやる。
 ボクは大天使ウリエルの化身。名前はフォン。死神ルミアに伝言があって人間界に降り立った。」

「 ...は?」
「ボクは大天使ウリエルの化身。名前は
「もういいから!!!」
「フォ...わかったよ。」
「ルミア、化身って?」
「...そこのそいつに聞け、」
「天界にはね、大きく分けて4つの神がいるんだよね。八百万の神っていうのはそこに住む、いわば神界に住む住民たちを指しているのさ。
 で、超大昔に神界は滅亡しちゃったの。」
「ゑ?」
 まて、なら神が死んだということか?
「滅亡した神界で、神の残留思念が消滅する寸前にあるオーブを作った。
 で、そのオーブが神界を完全に消去して新たな世界に作り替えた。」
「馬鹿をいうな。魔王サタン・ベオグラードに神界を滅ぼされただけだろう。魔王の力を認めたくないあまりに天使が作った眉唾物だ。」
 ルミアがため息を付きながら言う。

 まてよ?ルミアは『常闇の王グラン・ベルゼブブ』とやらに仕えているとか言ってたような...ならそのサタンとやらは何者なんだ?

「...とにかく新たな世界でオーブは生命を持った。そのオーブが生命をつくり、島を作り、あらゆるものを
「魔王サタン・ベオグラードが神界を我がものにした証に完全に作り替えたのだろう。オーブが行った事などほとんどたかが知れてる。」

 ...なんだ、こいつら仲悪いな。

「とにかく!新たな世界でオーブは自らに名前をつけた!そして自分の家族として天使、後に大天使と呼ばれる存在を四人つくりました!化身というのはその大天使の魂の力を受け継いだものです!はい終わり!」
 半切れ状態でフォンが説明してくれた。

「魂の力ってなんだ?」
「人間でいう生まれ変わり。大天使様の能力とかを一部受け継いでるのさ。別に血筋は関係ないみたいよ。」
 フォンが簡単に説明する。
「神はもういないのか?」
「さっき言ったオーブが今の神だよ。他にも神はいるけど、それってほとんどが超常的に生まれた特別な天使や、悪魔がオーブに選ばれたって話しさ。」
「死神は?」
「オーブが生み出しし生命の1つ。生まれながらに神に近い能力を持っているのさ。グローツが今の冥王だったかな?」
「グランベルゼ様だ。」
「へぇ...今度見に行くかな。」
「とにかくだ。聞いててわかったと思うがこんな話確証もなければ証人もいない。それに余りにも大雑把すぎる。こんな伝説風情信じるだけ無駄だ。」
「...言ってくれるねぇ。まぁとにかく今日は死神とやり合う気はないんだ。要件を済ませてもらうよ。

『...死神ルミアよ。手はず通りなら天使の口から我の書きし文が放たれているのだろう。
 そして手短に要件を伝える。この文は二死機能封印を施してあるので一回で全てを理解しろ。』」

 いつの間にか手に真っ黒い紙を持ち、それをゆっくりと読み上げるフード女。
 二死機能封印とやらは何なのか気になるが、きっと『2度目はないぞ』的なやつだろう。

「『まず、君を玄界...そちらの言葉に合わせて以後人間界と呼ぶが、まぁそこで契約したという少年とは会えただろうか。
 正直君が人間と契約など評議の時も信じられないのだが...。
 まぁとにかく、その少年とはきっちりと関係を決めろ。人間界にいつまでも世話になろうとしている訳ではないだろう?」
 ...あぁ、そっか、あいつも...いつかは帰るんだよな。

「『人間界滞在の理由として命じたこの世ならざる者の駆逐及び契約者の傾向観察は成功しているだろうか。力を失った、らしいが、それでも君の才能なら武器を出したりくらいはできるだろう?
 良い結果を祈る。

 少年よ。異世界の事情に首を突っ込ませたのは本当にすまない。しかし...君の力が必要なのも事実。申し訳ないが力を貸してくれ。

 そして、...しばらく魔界には戻ってくるな。』...終わりっと。長かったね〜」
 そういってフード女は黒い紙を放り投げる。驚くことにその黒い紙は空中でチリになって消えていった。
「とりあえず用も済んだし帰るかな。お邪魔しました〜」
「ま、まて!いろいろ聞きたいことが...」
「奏也ッ!!!」
 今まで、いや、あのこの世ならざる者から俺を助けた時のような殺気を放つ。...なんでだ?
「...惜しいね。後一歩進めば痛みなく死ねたのに。」
 なにか気のきいたギャグのようにへらっとした様子でそんなことを言うフード女に、俺は戦慄してしまった。
「どうせ君とはいつか会うだろうから名前だけ教えるよ。ボクは『フォン』人間名は『潤江 ひいらぎ』。以後よろしくね」
 そういって帰っていくフード女...フォンを俺はただ見送るしかできなかった。

 4.
「いただきます」
「...」
 フォンに弁償してもらった材料で改めてカレーを作ったはいい。だが...
「な、なぁルミア」
「...なんだ。...」
『魔界へ戻ってくるな』
 その言葉のせいだろうか。あれからずっと様子がおかしい。明日が平日でなければとことん付き合うのだが...
 だが、それでも最低限きけるようなことは聞くことにした。
「あの手紙、差出人は誰かわかるのか?」
「...わかる。多分冥王ベルゼブブ様だろう。」
 冥王ベルゼブブ。儀式では『グラン・ベルゼブブ』、会話では『グラン・ベルゼ』。様々な呼び名を持つ。
「そのベルゼブブってのは誰なんだ?」
「私達死神の王にして、『七つの大罪』の悪魔。つまり魔界6王の1人だ。」
 ...多分、因数分解の説明の時、方程式がわかる前提で説明するんだろうが、こっちはまずその方程式がわからねぇ。そんな感覚。
「サタン・ベオグラードってのは?」
「七つの大罪の悪魔にして現魔王だ。6王を統べ、神と同等の権限を持つ。」
 ...まぁ大体はわかった。
 だが、わからないのはルミアの元気がない事だ。
「一丁前に死神の心配か?人間め。いい加減寝ろ。なんだかんだでそろそろ9時だ。」
「まだまだ9時なんだが...」
「寝ろ。」
 正直九時に寝るなんて普段の俺なら狂気の沙汰だと否定するんだろうが、何故か俺はその言葉に頷いた。
「...わかったよ。食器、片付けないでも水につけときゃいいからな。」
「...あぁ。」


「なんとまぁ、余計な事をしてくれたもんだよ。まさか僕の他にも天使が来てるなんて予想できなかったボクもボクだけどね。」
 川上家の屋根の上、フードをかぶった女が誰ともなく呟く。夜の光が辺りを照らす。月夜の晩だった。
「...まぁあっちに先に奏也クンに接触されたのは...痛いなぁ。早く動いとけばよかったよ。まぁあっちも僕の存在には気付いていても奏也クンには教えてないみたいだし...」

「教えて欲しかったの?」
「っ!?...へぇ...最近の天使はなかなかだね。」
 不意を突かれた。まさか後ろを取られるなんて。何年ぶりだろうか。
「君は天使じゃないんだね。何者なんだい?僕の邪魔だけはやめて欲しいんだけど。」
 気配、というか自分と微妙に似ているが、デザインが少し違うフードを被った天使だ。

「なんなら、武力で制してもいいんだ。」
 相手がなにか武器を構える気配。
 ...穏便には、進められないね。これは。
「武力で、制す。......ねぇ。やってみな。」
 言い切る頃には自分の頭があったところの空間がまるごと削られていた。
 ...なるほど。天使にしてはなかなか厄介な能力だな。
 とっさによけたのだが、体制的にはそこまで不利でない。
 振り返って相手を確認する。
 ...なるほど。あの武器は......薙刀...いや、薙刀と、もう一方は棍棒のようになっている。つまり空間削減以外にも能力があると見た方がいいだろう。
 薙刀による横一文字。
 それをあえてよけずに手で受ける。
 思ったとおりだ。この武器ではボクは切り裂けない。
 服は切り裂いたモノの、ボクは切り裂く事は出来なかった。それがよほど意外だったのか相手は顔をゆがめる。しかし咄嗟に刃を捻る。その結果服の切り口が広がって...なに?
「驚いた?ボクの力のひとつだよ。」
 捻ったと同時に、空間までもが捻れる。その結果...
「腕が折れちゃったよ。はぁ...百年間無怪我記録まで後少しだったのに。」
 どうやら薙刀には空間を自在に削ったり捻る力があるのだろう。
「大天使ウリエルの名にかけて、お前を滅する!
 くらえ!『天玄滝』!」
 薙刀が紅く光をおび始める。
 ウリエルが元大天使ルシファーと戦った時、使ったという奥義の、汎用型だろうか。
 だが...
「それくらいで...一介の天使がそれでボクを倒したつもりかい?」
 相手の薙刀が迫る。
「『光蠢 二式』」


「...んん?爆発音?」
 どこかちかいところで爆発が起きたような感覚。
 本当に...今日はいろいろ多すぎる...
 ルミアもだ。まずアイツがなぜ様子がおかしいのか俺には全く見当もつかない。ただ...頼りにされていないということだけはわかる。
「取り敢えず外を見るか...」
 そして窓を開けようとした瞬間...
「!?うおぉぉぉ!?」
 ばん!と音を立てて窓が叩かれた。
 慌ててカーテンを開ける。そこには...
「ふぉ...フォン?」
 俺の荷物を光の中に消しさった挙句、家に上がり込んできて良く分からない異世界の状況をベラベラ話していきやがった女の子がほんの少ししかない窓枠に捕まっていた。
 川上家は二階建て。それも俺の家はその二階にある。
 天使ならそれでも大丈夫なのだろうが、今の彼女が落ちて無事とは思えない。なぜなら...
「な、なんでそんな苦しそうなんだ!?」
 窒息。というより過呼吸...?とにかく物凄く苦しそうで今にも意識を失いそうだ。
「...はぁ。気づかれちゃったか。まぁこの続きはまた後でってことで。」
 頭上で、声が聞こえた。
 ...これはどこかで...
 なにか聞き覚えのある声だ...
 いや、とにかく...
「くそっ!大丈夫かよ!ほら、まだ意識はあるか!?」
「す...まな...い」
 急いで一気に窓から部屋に引っ張りあげる。
「はぁ...はぁ...はぁ...」
 頭上からの声の主の正体が気になるところだが、今しがた気配は消えてしまった。だからまずは手当に専念しよう。
「あ...りがと...。アイツが居なくなってから...楽になってきたよ...。」
 相当苦しかったのか、よだれを垂らしながら必死で呼吸し、赤くなった顔で上目遣いでこっちを見る。
 ...なんか違うことしてるみたいだな。いや、もうそんなエロい格好されたらアレがいろいろ大変なことに...って俺はなんてこと考えてんだよ!!!
 そして、自分の垂らしたよだれをみて
「...いっぱいでたね」
 ...わざとじゃない!?
「お前絶対もう苦しくないでしょ!なんだ!?俺をそんな...なんだ...欲情させて何がしたい!」
 正直物凄くいうのが恥ずかしいのだが言ってやった。多分コイツならセクハラとか騒ぐことは...
「な、なんだい?ボクをここに招き入れて...その卑猥な棒でソレ無しでは生きられない身体に変えてしまおうという魂胆かい!?」
 予想を斜めどころじゃなく貫く勢いで返答が帰ってきたよ。
 なんだよそのエロゲとかエロ漫画みたいなシチュ...
「というかお前天使の癖になんでそんなシチュに思い至るんだよ!」
「い、一応人間換算だと15歳!君と同い年だ。それに...その...そういうことに興味があってね...。思春期なんだから当たり前だよ!!!!!!」
「そうなんの男の子だけだから!」
「違いますー。女の子もなりますー。」
「な、なんだ...と...」
「きっとみんなそうだ!ルミアちゃんだって人間換算で12歳!約中学一年生なんだから、奏也くんの肉棒を弄びたいはずだ!」
「やめろぉ!!もう既に禁止ワードでてるから!」
 いや...手遅れか。
「というか...ルミアちゃん?」
「うん。ボクたち異世界でも会ったことあるんだよね。
 ルミアちゃんは『暁の子』と呼ばれる、言わば天才なんだよ。」
「そう...なのか...。」
 最初あった時の走馬灯の件は何らかのミスだったのだろう。
 いくら天才でも完璧な訳ではない。という事か。
 戦いぶりを見れば誰でも彼女が天才だと納得するだろう。
「で、同世代の『暁の子』と『大天使の化身』を戦わせてみよう。ってことになって...当時無敗でブイブイ言わせてたルミアちゃんをボッコボコにしちゃったんだよね〜」
「...え?...あ、あのルミアを!?」
 あの時のあの化け物戦の時だって不意打ち及び怪我さえなけりゃ瞬殺できたような実力の持ち主だぞ!?
「うん。ルミアちゃんは『速さ』と『正確さ』でワンターンキルを狙うタイプ。対してボクは...なんていうかな。某有名カードゲームで例えると。『マナブースト連続からの大型獣祭り』って感じかな。」
「...なるほど。ならルミアの攻撃を交わすことさえできれば圧勝出来るな。」
「まぁ能力使えばそうしなくても瞬殺だったけどね。ルミアちゃんが使ってこないからこっちも術式系統で応戦したのさ。」
「...能力?」
「うん。能力。死神 天使 悪魔 神はもれなく一人に一つ能力を持ってる。だけど神の持つ能力は正直別格。詳しくは知らないけどチート級らしいよ。
 それに、悪魔の中でも七つの大罪や、大天使の化身は唯一無二の能力なのさ。」
「というと、能力が被ることも?」
「まぁ沢山いるのに被らない方がすごいよねー。」
「...ルミアが能力をもってないってことは?」
「ルミアちゃんが?そんなことはないね。」
 即答される。なにか根拠があるのだろうか。
「1つ天界にも彼女の能力使用の情報を持っててねぇ。
 どうやら何があったか知らないけど魔界の土地約縦横
 3km程を消し飛ばしたらしいよ。地面ごと。」
 何と言うか...月のクレーターを連想する。
「多分クレーターを想像しただろうけど。あんなもんじゃない。
 そこが全く見えないっていうか...こんど魔界に行けたら連れてってあげるよ。」
「正直本気で遠慮させてもらう。」
 ...まぁお遊びはこれくらいにしておこう。
 本題に入ろう。
「お前ら、俺んちの上で何してたんだ?」
「...まぁ結界張ったのがボクだから、ボクがノックアウトされた後の爆発音くらいは聞こえたのかな?」
「あぁ、そこくらいからだ。」
「OK。ボクが天界に来たのは...

 君を殺すためだ。」

「.........何のために?」
「おお、驚かないのか。」
「もう何言われたって驚かないようにしないとな」
「死神と契約した人間。
 こういう人達はね。基本的に力に飲まれて、『この世ならざるもの』とも違う。言わば...『死帝』と呼ばれる存在になる。」
「じゃあ俺も?」
「ううん。違うよ。『力に飲まれたのが』死帝。君は飲まれてないじゃん」
「どういうものか分からないんだけど...」
「いずれ目にするよ。人間界に少なくとも1人死帝が混じってる。
 とにかくボクは死帝になる前に君を殺せって言われたの。」
「...なるほど。」
「ほかにもさ、ガブリエル様なんて君をどうでもいいから殺せって言い続けてるからね〜」
 わーお!初めから俺には全く平和なんてなかったんだね!
 オラ、すっげぇモヤモヤすっぞ!
「まぁ、それでボクはここに来たんだけど...聞いてた話と全く違ったの。君は普通に人間だし。まぁルミアちゃんの力を借りてた節はあったけどさ。それと...何者か分からないんだけど気配を感じてね。」
 それが、先程の来訪者ということだろうか?
「あの後ずっと君の家の近くを監視しててね...後は戦闘になって...って感じかな。」
 で、先程の状態か。
「多分アイツは天使じゃない。衣装は似てたけどね。」
 その衣装をよく見てないのだが...

「とにかくボクは...」
「泊まってけ。」
「帰...え?」
 当たり前だ。謎の敵の言葉。
『この続きはまた後でってことで。』
 つまりは帰り道にでもまた襲撃する。ということだろう。
「だ、だけどそうしたらこの家に襲撃してくるんじゃないの?」
「それに関しては大丈夫。...最悪俺が戦ってみるさ。」
「つまりは一応死神の力も使えるの?」
「まぁな。」
 もちろんハッタリだ。でもこうでもしないとフォンは帰ってしまうだろう。...まず住んでる所も知らんが。
「わかった。...あのさ...」
 フォンらしくない。俯いてモジモジしている。
「?、なんだよ。」
「その...ありがとう。」
「...!! おぅ!」
 フォンの得意な茶化した言い方ではなく素直な気持ち。そうわかったからこそ思いっきり笑顔で答えてやった。


「...何者だ?」
「いやぁ、気になってねぇ。かつてのライバルと出会った死神ルミアがさ。どんな様子なのかなって。」
 ルミアは川上家の庭で星を見ていた。そして不意に後ろに気配を感じたのだ。
「...なるほど。神、か?」
「...君は本当に天才だよ。天使のフリして服まで似せたのがバカみたいだ。」
「多分フォンだって気づいてる。」
「でもまさか神だとは思ってないはず...だよね?」
「......何のようだ?」
「いや、勧誘でさ。『川上 奏也』と契約しているのは知ってる。で、君がベルゼブブのお気に入りだから今の魔界には戻れないのも知ってる。」
「...なぜそこまで知ってる?」
「さぁね。で、とにかく。川上奏也をさ、殺さなきゃいけないんだ。」
「理由は?」
「秩序の回復。
 わかるかい?イレギュラーな霊、そしてイレギュラーな復活のせいで世界の秩序やバランスが崩れつつある。」
「権力の話ならうんざりなんだが。」
「...エネルギーの話さ。
 それに天界や魔界はお互い契約者を作らないことで均衡を保ったろ?」
「ならお前らもフォン辺りに契約者を」
「だめだね。それで収まる問題じゃない。
 だって今、天界ではメタトロン主導である計画が成されててね。神界も協力的なんだ。」
「...きいたことないが。」
「当たり前だよ。教えてないもん。
 まぁ提案にも関係してる話だから教えてあげるよ。
 実はね...............」

「......ば...かな...」

「本当の話だよ。どうするかは君の勝手。じゃあね。」
「ま、まて!フォンはこれを!?」
「...知ってる。多分彼女は『実は奏也くんを殺しに来た』なんて言ってるだろうけど本当は守りにきたんだよ。」
「な、なんで...あいつと奏也はなんの関係も...」
「ある。いや、厳密には君のためか。
 彼女は、君のライバルとして。親友として君を助けに来たんだよ。」


 5.
「帰ったのか。」
 昨夜フォンを泊まらせた部屋には書き置き
『ありがとう。多分また会うからその時にでも御礼はするね!奏也くん、だいすきだよ!なーんてね!(笑)』
 ...実にアイツらしいが...昨夜の素直さは何処へやら...

 とにかく学校だ。四月ももう最終週。もうすぐ待ちに待った『黄金週間』!!!!!
 つまりはGWだ。...まぁゆっくり出来るとは思ってないけど。
 着替えを済ませ、下へ降りてパンを焼く。我が家はパン派だ。
 ほどなくしてルミアが降りてくる。
「...おはよう」
「おはよう」
 どこかテンションの低いルミア。やはり昨日の件か...。
「なぁ、奏也。」
「なに?なんでもきくよ?」
「私は...私は...
 どうしたらいいんだ?」


 ルミアは何かあったのか『どうしたらいいんだ。』と仕切りに聞いてきた。
 何をどうしたらいいのかきいても頭を抱えるだけ。
 そしてパンを食して部屋へ戻っていった。
 そんなことがあったのが約一時間前
 今は学校でもうすぐHRという時間。ちなみに月曜ということで、HRの時間が長く取られている。

「なぁなぁきいたか!?どうやら転校生らしいぜ?」
「どーせ男だろ。」
「それがさぁ!すっげぇ白髪美人なんだってさ!うちのクラスだぜ!?」
 朝からうるさいな...俺の日曜は全く休日じゃなかったんだよ。
「よ!奏也、元気ねーじゃん。」
 親友、というのだろうか。とにかく仲の良いクラスメイトが声をかけてくる。
「ん、おはよ。『亮吾』。」
 コイツの名前は『大村 亮吾』。幼なじみにして、先程言ったように『親友』。
「なんだなんだ?日曜日はなんかあったのか?元気ねーじゃん。」
「察しがいいな...。まぁ忙しくてな。」
「へぇ。まぁご苦労様。
 雪乃が心配してるぜ?『奏也くん、大丈夫かなぁ...』ってさ!」
「あぁ...大丈夫って言っとけ。とにかく転校生か?」
「あぁ。高校に転校生ってなかなか珍しいよな。しかも、こんな微妙な季節に。」
「そうなんだよ。」

「はいはい。席につけー!」
 30代半ばなのだろうに22歳と言い張る女性教師が部屋に戻ってくる。
「転校生を紹介しますね!」
「いえぇぇー!!」
「だれだれ!?」
「おとこ?おんな?」
「うるさいよ!ほら、転校生どうぞー」
 物凄く雑な進行で進んでいくが、とにかく転校生とやらはドアの外へ待機しているようだ。ありきたりだな...
「賭けをしよーぜ。もし男だったら俺はハーゲンガッツのチョコ味を奢ってやる。だから女なら...」
「いいぜ。お前はいちご味か?」
「よくお分かりで」
 席が三つ程しか離れていない俺と亮吾はそんなどうでもいい話をしていた。
 そしてガラガラ...と扉が開かれ
 俺は絶句した。

「天界第五高校から訳あってやってきました!
『潤江 ひいらぎ』です!よろしくお願いします!」

「...は?」
 という俺のつぶやきは歓声に押しつぶされた。
「よっしゃぁぁ!!噂通りの美人!」
「天界第五?きいたことないな」
「ハーゲンガッツのいちご味きたァァァ!!!」
「か、かわいすぎる...!」

 ...まぁ当然の反応だよな。こいつ美人だし...ってそうじゃない!
「なんでここいるんだよ!お前絶対フォ...」
 と言ったところで口が何故か閉じた。
 よぉく見ると、何か転校生から妙なプレッシャーが...
「奏也くんは、ボクの個人的な友達です!
 みんなよろしく!」
「ボクっ娘...だと!?」
「ぐはっ...」
 男子生徒のほとんどはこの瞬間砕けちっていった。

「はいはい、潤江さん。慣れないところで不安だと思うし、知り合いの近くに席を用意したから座りなさい。」
 そう言って指さしたのは...
 うん、だよね。俺の隣だよ。
 いつも、というか昨日会ったばっかだが、白いフード付きの服(パーカーではない)を来ていたせいで分かりにくかったが、子供のようにサラサラしていそうな真っ白く美しい髪だ。この学校の制服は黒なので、なんというか...ミスマッチしてるな。
「これからよろしくね。奏也くん。...あ、これからは公私ともに『ひいらぎ』でよろしく。」
 そう言って笑うフォン、いや、ひいらぎの声とともに、俺の中の日常が砕けちった音が聞こえたような気がした。



 エピローグ

『天界は魔界を吸収しようとしている。それにいち早く気付いた『色欲』のアスモデウスが天界の使徒と戦ってるんだ。まぁそろそろ決着はつくらしいけど。...だって神はほとんどが天界派についたからね。』
 昨夜、白い来訪者に言われた言葉がルミアの頭をぐるぐると回る。
『ベルゼブブも気付いたみたいでね。そのために君を帰らせないようにしてる...ってこれはわかってたかな。』
『まて、天界の侵攻計画の発端はなんだ!』
『簡単だよ。君とあの少年の存在だ。』
『...!!』
 会話の内容が、頭に蘇る。
『死帝とならぬ少年が現れ、暁の子と契約す。
 これだけで神界は揺れ動いたんだ。天界が今のうちに魔界を滅ぼさんとするのもわからなくはないだろう?』

『そこで提案。君だけでもさ。天界に来ない?』
『何を言っている...?』
『そうすれば戦争は起きないって話。』
 まぁそうなんだろう。原因となった私が寝返れば戦争は起きなくなる。しかし...
『やるわけないだろう!偉大なる死神をバカにするな!』
『...そう。残念だよ。この後魔界がどうなるかは...想像に任せるよ。』

「はは...七つの大罪だけではない。『神話の妖魔』や『堕天使』だって魔界にはいる。...負けるはずは...ない...」
 自分のせいで、ここまで魔界と天界が揺れるなんて。

「私は...どうすればいいんだ...奏也...?」

 四月も終わりに近づくこの日。異世界の混沌を予知するかのように暗い雲が辺りを包んでいた
  ––––了––––

目の前に死神が立っていた 2

面白かったかなぁ...
面白かったら良かったです。
呼んでくれてありがとうございました。

目の前に死神が立っていた 2

あの事件のあと、川上家に居候することになった、死神ルミア。 だがそこに新たな異世界の来訪者が...? 新キャラ多数登場の2話目です

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-17

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