空の音

僕の思い出。

彼女は空から舞い降りた。

ふわりと風の様に前に降り立った彼女は汚れなく、黒く短い髪以外は肌も服も何もかもが白かった。
彼女は私の目の前に立ち、目を開くと同時に小さな口からモゾモゾっと音を発した。
「君なかなか面白そうね。」
全てが唐突で、僕の頭の中は白くなった。と同時に僕が求めていた言葉だったので歓喜した。歓喜して、より頭は白くなった。
そして、忽然と彼女は消えた。

彼女は空からふわりと僕の前に現れ、言いたいことを言うと、空へふわりと消えてしまう。
存在を保てない音色の様なひとだった。

その日、彼女はある告白をした。
「実は、私は魂だけの存在なの。体はちゃんとあるから、幽霊とは違うけど。」
それは僕も薄々感づいていた。うんうんと僕は話を促す。
「それで、私の事情でしばらく会えなくなると思う。」
彼女の姿はノイズが混じり、空に溶け出していた。
「またいつかは会えると思うから。」
彼女の命の灯火はか弱くなりつつあるように感じた。
魂の出力が弱まり、ノイズは混ざり、かなり姿がおぼろげになっていた。
「またね。」
僕はそこで我に帰った。
頭の中が真っ白になっていた僕は何か言わなきゃと思いとっさに口から音をもらした。
「またね。また……いつか必ず会おう。」
これが精一杯だった。
彼女はいつもの様なふわりとした消え方ではなく、ブツンと消えた。妙な虚無感を感じた。
私の頭はまた白く塗り潰された。

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何度、季節をまたいだか分からない。
ふわりと風の様に前に降り立った彼女は汚れなく、黒く短い髪以外は肌も服も何もかもが白かった。
彼女は私の目の前に立ち、目を開くと同時に小さな口からモゾモゾっと音を発した。
「君なかなか面白そうね。」
全てが唐突で、僕の頭の中は白くなった。と同時に僕が求めていた言葉だったので歓喜した。歓喜して、より頭は白くなった。

空の音

ある方との思い出を綴った話です。

空の音

彼女は僕の前に風の様に降り立った。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-17

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