ふたりが出逢えた奇跡

伊藤遥

 ぎゅっと、抱きしめる。
「お前に会えてよかった」
 顔を合わすなりいきなり抱きしめたせいか、腕の中の小柄な身体がちょっともがく。
「どうしたの? ……なんだか、らしくないよ?」
 言ってろ。
 俺だってそう思う。
 だけど、今日だけは。
 全ての事に感謝する。
 俺とお前を巡り逢わせてくれたすべての奇跡に。



 時間も場所も遠く離れたところで生まれて、何もなければ出会うはずなど無かった。

 もしも、俺がブラックゴーストの誘いに乗らなかったら。
 もしも、俺の改造がまるっきりの失敗だったら。
 もしも、戦闘実験の段階で俺が殺されていたら。
 もしも、第一世代のサイボーグ化技術が充分だったら。
 もしも、冷凍睡眠が途中でなんらかのエラーを起こしていたら。
 もしも、ブラックゴーストが、ジョーと一緒に逃げ出した別の奴を捕まえていたら。
 もしも、ギルモア博士が反乱の意を起こさなかったら。
 もしも――。

 いくつも連なる分岐点。
 その一つでも変わっていたら、俺たちはこうしてここにいなかったかもしれない。
 俺は、ジョーと出会えなかったかもしれない。
 だから、その全てをクリアした奇跡に。
 俺とジョーを巡り逢わせてくれたこの人生に、俺は感謝する。

 でもその前に、一番最初の奇跡。
 この世に生まれてきてくれてありがとう。
 それがまず数億分の一の確率。
 ジョーがジョーとして生まれてきてくれたことが、どれだけの幸せを生み出したことか。
 だから今日は。
 どんなに祝っても足りないくらいに、幸せが生まれた最初の日。



「ねぇ、ジェット。どうしたの? なにかあったの?」
 ジョーの声がする。
 耳元で、心配そうな声で。
 俺はジョーを抱く腕に力を込めた。
「幸せを、実感してんの。……お前に会えて良かったなあって」
 笑ったのか、ジョーの身体が少し揺れて、その手が俺の背に回る。
「それは僕もだよ。君に会えて、本当に良かった」
 抱き締める、あたたかさ。
 この幸せがいつまでも続きますように。
 二人がこの世に生まれて、巡り逢えたこの奇跡を。

 ――Happy Birthday!



20150516_HARUKA ITO

ふたりが出逢えた奇跡

ふたりが出逢えた奇跡

平成版サイボーグ009 らぶらぶ29。 ジョー誕生日おめでとう!

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-16

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