近未来小説「 Neo Border - The near future -」
The near future <ワインとシャイニングキャンディー>015
3人は"仮想地球(Globe of Virtual Reality)"の濡れ衣をはらすため、 各地域で情報などを集める事にしました。
Williamはアメリカ地域に、Johnはアジア地域、Markはヨーロッパに向かいます。
このころ世界中の膨大なデータは徐々に復旧していきましたが、まだまだ完全ではなく世界中がいまだ混乱していました。
Mark はその状況の中で、ネットの深層部の端々からもれてきた、公式発表されていないヨーロッパ地域での 現実の各国家の特別管理区域や、 急にセキュリティが最高レベルに上げられた構造群。
閉鎖、隔離されたトップシークレット情報を確認することからはじめることにしました。
ヨーロッパ地域の国家変遷の特質から、鉄壁の情報セキュリティにほころびが生まれると読み、 現実国家群がやろうとしていることを調べることで今回の流れをさかのぼれると思ったからです。
そうしている間にも、次第に現実の各国家は国際ネットワーク条約に沿い、 旧インターネットワークから、人民と国家群の安全のためにと徐々に"国境システム「Neo Border Gateway」" への切り替えをすすめていきました。
それに伴い旧ネットワークを使う守護妖精システムなどは時々通信障害を受け始めます。
「早くしないと、まずいな」
しかしMarkは持ち合わせの情報からヨーロッパのあちらこちらを飛び回っていましたが、 なかなか有益な情報を得ることが出来ないでいました。
比較的行動は自由ですが、基本、公式発表の無い情報を、今の混乱しているネットワークから探し出し、 確認していくことは困難を極めていたのです。
そんな状況の中偶然ある山間部の道路の通行禁止情報を得ました。
よくある情報でしたがこのあたりの遥か上空に通過する"Shining Candy"
( "Neo Border Company"が打ち上げた "国境システム「Neo Border Gateway」"を搭載したインターネットワーク用通信衛星。
「Cloud Energy System」という、エネルギー供給システムも備えている。
地表映像なども収集する総合情報収集機能を持ち、現在までに6衛星軌道上で稼働している)
関するいくらかの書き込みで、
「・・・光の矢が古城を射し、幻想的な瞬間を目撃しました」に、何か引っかかるものをかんじます。
「ここからそう遠くないな」
大きな街から数時間のどかな田園風景の中を走っていると、道路が封鎖されているため転回を促す標識や、通行止めの看板がありました。
「まあ、古城マニアにはたまらないシチュエーションということで、この柵をちょっと移動してと・・・」
Noah
「旅は人をタフにしていきますが、 Mark も時々びっくりするほど大胆になりますね。」
「ただ、近隣住民対策でしょう一見軽い通行止めを模していますが、あちらこちらに防犯システムがはられています。」
Mark
「だって、古城マニアなんだもん! 手で動かせる柵は柵じゃなくて、アート作品、モニュメントかもしれないし。ま、だからまったくノープロブレム。ハハハ。」
「それに、せめてNoahが情報を集められるところまでは行かないと、ただのドライブになっちゃうじゃん。」
Noah
「それはそうですが、構造群の有視界まで近づけそうもありませんね。
近隣に警備員はいませんが、尋常でないほどのセキュリティがかけられています。
いつもの約束は忘れないで下さいよ。
見た目は普通の山道ですが、引き返せなくなる可能性が見えたら合図します。 次の瞬間すぐにターンしてください。
いつものように何も考えずに反射的に逃げること。
私たちはそうしてこれまで何度も危機を紙一重でかわしてきました。だからまだここに生きている」
Mark
「そう、俺たちは生きている。これからも」
そう話しているうちに道幅がはるかに大きくなり、遠い先に巨大なゲートがみえました。左右のフェンスははるかに延びています。
Noah
「本格的にサーチされました。ちょっとまずいですね。引き返しましょう」
Mark
「了解」
遠くゲートあたりに警備員の姿が見えた瞬間転回し、もどることにした。
Noah
「相手が本気ならばあまり良くない状況ですね。車は早急に返してください。
ホテルも少し離れた場所に変えましょう。まあ画像はとられていますが識別できないでしょう。」
Mark
「さすが、Noah」
帰り道、付近の人は
「今は主のいない貴族の宮殿の敷地に、数年前から新型の発電所の研究施設を建設しているらしいが、 最近不具合があったらしく、念のために周囲を閉鎖しているんだよ。」
「こんな山の中に警備が異常に厳重な発電所か」
ホテルをうつり、さっそく情報の整理を始めた。
Noah
「私たちが引き返したあたりの道路ですが、
そこから巨大フェンスまで1km以上、そのフェンスの巾も100m以上、 舗装は特殊で一部灯器装置らしきものが見受けられることから、大型機の発着が可能な航空施設があるようです。
擬木、擬石も多いことから、誘導システムや、鳥獣対策も万全のようで・・・
そう・・・異常なほどに野生の動物がまったく見当たりませんでした。
また、構造的に新旧航空機に対応できると考えられますから、多様なオーソリティ、ラグジュアリクラスなど招待できるパーティも可能でしょうね。
Mark
「俺には縁がないから入れてもらえなかったわけか」
Noah
「つづけます。
フェンスも、ゲートも警備員も一見普通の施設レベルですが、フェンス手前数百メートルから不審者ならば近寄れませんね。
ゲートも低めですが仕掛けがあるようです。
警備員は動きから特殊軍人と思われます。それにあの顔はオリジナルの顔ではありません。
なにより危険なのは、もう少し進んでいたら、モバイルなどの機器は完全にダウンします。
つまり私もダウンします。 そしてその瞬間、あらゆる防犯システムが作動し、車は横転か自走不能、ドライバーは怪我をしたうえ拘束。
まあ、発電所というより司令官クラスの基地ですね。」
民間の精度が落ちるとはいえ天空からのリアル映像が提供されているサイトから確認したが、 このあたりはただの山間部と、あまり知られていない古城が見られるだけで、現実ある舗装された大きな道路は、ローカルな道のままだ。
「今一番ほしいのは"Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)"が "仮想地球(Globe of Virtual Reality)"から発生したという、虚偽の証拠と、 その真相を記したデータだが、それが絶対にこの発電所もどきにあるのならば攻め方もあるけど、 何か別の件での最高秘密施設とするならばリスクが大きすぎる。
怪しいには怪しいがあまり今回の件に関係ない施設だとしたらアタックは避けないと命がいくつあっても足りないな。」
その夜、緊急ミーティングでWilliam、Johnもそれぞれに怪しい地域や構造群の情報を得ていたので、 意見の交換など今後の展開を遅くまで話し合いましたが、もう少し確証を得たうえで動こうということになりました。
解散後、一応特殊パソコンを使いブラックネット経由で 何度かこの地点十数か所のサーバーにアタックをかけてみたが相変わらず遮断してあるのか見つけ出せません。
あきらめて電源を落とす一瞬パソコンがもたつきました。
それは一秒にも満たなかったのですが、なにかひっかかります。
Noahと顔を見合わせていると突然モバイルに一件の受信メールが。
「なにかいいのこしたのかな」
このアドレスには特殊な経由やプロトコルをつかっているので送ってくるものはWilliam、Johnのほか、 仮想国家議長など信頼の置ける者しかいません。
だけど送信者は黒鼠というID。聞き覚えが無い。
「道標がほし~の~ならneoフォルダの2025.09.30.docだって☆」
うーん、しかしこの緊迫した状況の中この内容はありえない。ていうか、このスパムがありえない。
Neoフォルダとはモバイルに入っているフォルダだが2025.09.30.docには記憶が無い。ゴミにする?
しかしこの違和感。それはやがて胸騒ぎにかわっていきました。
近未来小説「 Neo Border - The near future -」