存在しない存在を愛してやまない

Pixivで掲載した作品をこちらにも載せました

ここに1つの部屋があるとしましょう
さて、ここで質問です。

見上げた天井には何が浮かび上がっていますか?
貴女の目には何が映っていますか?

さて改めてここで質問です

貴女の目に映っている私は誰でしょう?


分かりましたか?
正解は、この後で。

さて"私"が愛したのは何処のどいつでしょう?


ぷつり、ぷつり

安定したリズムで、その音は部屋中に広がる。
私は目を開けて見るけれども、視界に映るのは白い天井。ただそれっきり。

「ねぇ」

そう一言呟くと、また私の意識は遠退いた。

ぷつり、ぷつり
また、『あの時』と同じように、安定したリズムが私の聴覚を支配する。
目を開けてみれば、今度は青い色が広がっている。

「ねぇ」

また、声が聞こえる。うっすらとしか認識できないが、ソレはとても低く、落ちついた声だった。

「今は、眠りなさい」

そんな声を聞いた瞬間、また私の意識が途切れた。

ぷつり、ぷつり
三度目に聞いた安定したこの音で再び目を覚ます。
また再び、天井を見上げれば次は赤一色に染め上げられていた。

「ねぇ」
三度もあの安定した音で目を覚ますことが気になって、私は訳もわからず口を開いた。
すると、あの低い声の主は答える。
「今は眠りなさい、貴女はまだ起きてはなりませんよ。」
と、まるで子供をあやす様な声で囁いた。

ぷつり

今回もここで、私の意識は途絶えた。


ぷつり、ぷつり
四回目、またこの安定したリズムで私は目が覚める。
そしていつものように天井を見上げれば、今度は黄色一色に染まっている。

「ねぇ」
私は天井を見上げたまま、またあの低い声の主に尋ねるように呟いた。
今度は明確な質問を持って。
「なんでしょう?」
低い声は、優しげな声音で答える。
「一体、ここはどこなのですか?」
すると、低い声の主は私の額に手を置いて優しそうな声音で答えた。
「何故、貴女がそんな事を気にしているのか私にはわかりません。」
くすくす、と笑いながら額から手が退けていく感覚がした。

「まだ、起きてはなりませんよ」

そう言うと、私の意識はまたそこで途絶えた。


ぷつり、ぷつり

まただ、そう思って目を開けてみれば天井は黒一色に染まっている。
「何なの……これ……?」

ぷつり、ぷつり
また、あの安定したリズムが聞こえる。

ぷつり、ぷつり、ぷつ……
何度も何度も繰り返されるが、途中で音が途切れた。
すると、ぐちゃと「何か」が自身の体を這っていることに気がつく。

ぐちゃ、ぷつ…ぐちゃ、ぐちゃ……。
「い、いやぁあああああああああああああああああ!!!!」

あまりの気味の悪さに私は絶叫する。
そこで、私は初めて「ある事」に気がつく。

逃げようとしているのに、腕が、足が動かない。それどころか、起き上がることすらできない。

「な、何で……」
「おや?起きていたのですか」

恐怖のあまりパニックを起こしたせいか、またあの低い声の主に会えた事にほっとする半面、助けを求めた。

「ね、ねぇ……私、何が起こっているんです……?」
「知りたいですか?」

今の状況から考えて、そう言われると「はい」と頷くことしかできなかった。

「あれほど起きてはならないと言ったのに」
「え……?」

突拍子な言葉に私は絶句した。
「それでも、貴女は最期まで私を愛してくださったのですね。私はそれがとてもとても嬉しくて堪りません。」

何を言っているのかが分からない。
困惑している私にその低い声の主は、匣から何かを取りだした。

「これが……『貴女』ですよ……」

そう言って見せられたのは、青褪めた足、赤く染まった腕、白くなった毛根。

「ねぇ、それって……」

そう言うと、低い声の主は嗤う

「ええ、貴方はとっくのとうに死んでいるのですよ。」
そう言った瞬間、私の視界に何かが映った。
そう、さっきから体を這うものの正体。

白く、自分の体の中からうじゃうじゃと湧いてくる。
その横で低い声の主は優しそうな声で、私に話しかける。

「青が修羅」
「え……?」
「赤は餓鬼、黄は畜生……そして最期は黒。これこそ六道輪廻。貴女はこれら全てを巡り、今ここに在る。」

意味がわからない、何故自分が?死んでいる?先程まで生きていたはずなのに

「ええ、貴方は先程まで生きていましたよ。私の愛しき人『イザナギ』として。」
そう囁くと、その大きな掌で首を絞められ、骨が軋む。

「ようやく逢えた……ようやくまた巡り会えた……」
「う……っ、くっ……」

ぷつ、ぷつ、ぷつ

ぷつ、ぷつ、ぷつ

ぷつ、ぷつ、ぷつ

ぷつ、ぷつ、ばきっ……


「愛していますよ、未来永劫 貴方を・・・・」



存在しない存在を 愛してやまない

例え、それが神による罪であったとしても



Fin.

存在しない存在を愛してやまない

連投失礼致します

これも『色褪せた残像』と同じく、4年近く前に書いた物で、実は私が二次作品以外で初めて書いた小説がこれです。
一応、小説とは言っていますが、この長さでは詩に近いですね(苦笑

この頃何故か私の中では安倍定ブームがきておりまして、突発的に書いたのも事実です。
また天井の色も一応これも妖怪の知識としては、一般的だそうで……

少し改良はしてありますが、そこまでガラッと変わってはいません
今の書き方とはまた違いますが、これもまた私の側面という事で受け取ってもらえたら幸いです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました

15.5.15 常世誓

存在しない存在を愛してやまない

いくつかここで問題があります 問題はたったの2つ 貴女ならどう答えますか? グロテスクな表現がございますので、閲覧の際にはお気をつけ下さい

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • ホラー
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-05-15

CC BY-NC-ND
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