サイテ~男の旅・フィリピン編

▼あらすじ
今から20年以上も前でしょうか・・・。
ひょんな事から、急にフィリピンに行くことになりました。

が、行ってみたら、これがナント美人の宝庫!

愉快な南海の楽園で、予定の期間を大幅に越えての滞在となり、いつの間にやら無一文・・・。

横浜一(?)のサイテ~男が、現地で繰り広げた珍道中を過去の日記を元に、思い出せる範囲で書いてみました。
(不正確な部分があったり、オーバーに書いてる所も多々ありますが、適当に笑ってやってください!^^!)

タイトル: 第1章  ジョエル

当時オレは20代の半ば過ぎでした。

それまで進学塾に勤め、総務兼臨時講師をしていましたが退職をし、次なる生きる道を模索中と言えば格好がいいが、正直何をしていいのかもわからず、悶々としていました。

そんな時、建設会社を経営する義兄からお声が掛かり、運転手兼作業員としてアルバイトを始めることになったのであります。

毎日泥まみれで働いていましたたが、そこでやはり働いていた、出稼ぎ労働者のフィリピン人、ジョエルという名の、同い年のヤツとコンビを組んで仕事をするようになりました。

フィリピンの日常会話は、タガログ語という主言語がありますが、アメリカやスペインの統治時代の名残で、アジアで唯一英語が通じる国なのであります。

日常会話はタガログ語。
トランプなどをすれば、数字はスペイン語が出てくるし、アメリカ人が買い物などをすれば、雑貨屋のシワだらけのオバアチャンが、流暢な英語を話したりする国なのであります。

建設作業員の中には、大学卒の技師なども多くいましたが、英語はまったくダメという人ばかり!
それまで彼は、片言の日本語でやっとコミュニケーションをとっていたらしいが、オレが入って来たことで彼の片言の日本語と、オレの片言の英語で会話がはずみ、大の仲良しになりました。

半年も過ぎた頃だったでしょうか。

ジョエルが、「Mさん(オレのこと)、オレ、そろそろ国に帰る。お金も貯まったし、結婚したいよ」 と言いだしました。

彼は国に帰ってから、アパートを建て、オーナーになるという夢がありました。

場所にもよりますが、当時のフィリピンは土地も安かったので、日本で2年も働けば、2階建て8部屋くらいのアパートが、簡単に建てられたのであります。

そしてその年の暮れのボーナスが出た、クリスマスを1週間後に控えた頃に、いよいよ彼は帰国することになったのです。

「Mさん、いろいろアリガトね。 ねえ、アナタ、フィリピンに来ない? ニューイヤーにおいでよ! ワタシぜんぶ面倒看るよ! カワイイ子たくさんいるし、アナタ絶対モテるよ!」

こんなやり取りがあり、アドレスや電話番号を聞いておきました。




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新年を迎えましたが、当時つき合っていた彼女と別れたばかりのオレは、ただ友人達と酒を飲むだけの正月でした。

面白くもないTVを、酔った頭でボーっと観ていた時に電話が掛かってきました。

「Mさん!ジョエルです。 国際電話高いからすぐ切るけど、アナタ、ホントにフィリピンに来ない? アナタと結婚したい女いるよ!、カワイイよ!」

「エッ? 結婚って!」

なんでいきなり結婚になるのかわかりませんが、とにかく彼は遊びに来いの一点張り。


時期が合っているかは定かではありませんが、当時、三井物産の若王子支店長とかいうビジネスマンが、フィリピンのテロリストに誘拐された事件があったりして、日本ではフィリピンに対する印象は最悪の状態でした。

友人達に、「オレ、フィリピンに行くかも」などと言ったら、
「バカじゃね~の」とか、「首切られるぞ」などと言われ、「フィリピンって、ヤリ持ったオジサンが一杯いるんだろ?そんなヘンな所に行かないで、伊豆にナンパに行こ!」なんて言われる始末。

しかしオレは、生来アマノジャク!
みんなが怖いの汚いのと、言えば言うほど「ホントかな?」
って思っちゃう困ったタイプです。

結婚はともかく、カワイイ女の子と聞けば行きたくなるじゃん!
当時はまだフィリピンパブなんて数えるくらいしか無かった時代だから、外国のオネ~チャンなんてつき合ったこともないし・・・。

小麦色の肌に、クリクリっとしたオメメ。
小柄でもキュッと締まったナイスバディ・・・。
国は違うけど、アグネスラムみたいなカワイイ子だったらどうしよう・・・!

想像はどこまでも膨らみます・・・。

「行っちゃお~~~と、フィリピン!」

てなワケで、正月が明けバイトが始まって数週間後、オレは成田空港の出発ロビーにいました。

サラリーマンだった進学塾時代に、欧米には何度か研修で行っていたのでパスポートはあったし、オフシーズンということでチケットは簡単に、しかも安く取れたので、バイトは1週間の休みを取り、いざフィリピンヘ行くことに決めたのでした。



さ~て小麦色のオネ~チャン、待っててけろ!




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章タイトル: 機内の恋
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フィリピン航空PR431便は、朝9時頃成田を飛び立ちました。

隣席には、最初ヤッチャン風情の日本人のお兄さんが座っていましたが、ベルトサインが消えた頃に、何故かいなくなってしまいました。
(ラッピ~!)

そしてしばらくすると、オレと同年代くらいの綺麗なフィリピン人と思われる女性が、オレの隣の空いている席に座りました。

自分の席が喫煙席に近く、タバコが苦手なので替えて欲しいとスチュワーデス(古い?)に案内されてきたのでした。

フィリピンの女性は、いわゆる現地系のタイプと、スペイン系の顔立ちの人や、チャイニーズ系、日本人にそっくりな人などがいますが、彼女はスペイン系の彫りの深いエキゾチックな顔立ちでした。

ビールを飲んでいたオレは何度かトイレに行きましたが、「すみません」と言うオレにニッコリ微笑む、愛想の良い女性でした。

オレが読んでいたフィリピンのガイドブックを見ると、「フィリピンは初めてですか?」と流暢な日本語で話しかけてきたので、一緒に働いていた友人に会いに行く話しなどをしている内に、だんだん打ち解けていきました。

彼女は、やはりオレと同い年のフィリピン人で、日本で半年間タレントとして働いてからの帰国だということでした。
(あ~、なんかジョエルの所に行かなくてもいいから、このオネ~チャンと遊びたい!)

「マニラエアポートに、ちゃんと迎えに来る人はいますか? 来ないと、危ないですよ。 悪い人が一杯いますよ、エアポートは」

セシールという名の彼女は、ホントに親切でした。


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4時間後マニラに着き、飛行機から出た通路を歩くと、ムッとした日本の真夏の様な蒸し暑さを感じます。
カラッとした暑さを想像していたオレは、ちょっとガッカリ。

セシールと並んでイミグレーションに向かうと、オレ達にカメラを向け、パチクリ写真を撮るオヤジがいます。

セシールって、もしやフィリピンの芸能人?

あとで判ったことですが、日本人とフィリピン人のカップルと見るや写真を取りまくり、何処でするのか判りませんが、イミグレーションを出て荷物を受け取る十数分後にはプリントアウトしていて、その写真を見せ、「買ってくれ、いい記念になるだろう? アナタのために撮ったんだから!」 と迫る、押し売りをするヤツらなんです。

イミグレーションを出てからならともかく、まだ内部にいるっていうのに、一体コイツらは何者なんだ?

もうこの手のヤツらは空港内にゴロゴロしていて、トイレに入れば「荷物を持って差し上げます!」 と言ってチップを要求するヤツ。
カートの有る場所に案内します、と言っては「チップ頂戴!」

セシールの言う通り、本当に気を抜けない所でした。




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さて、荷物を受け取り空港外に出てみると、フェンス越しには黒山の人だかり。

金網に両手を掛けて、こちらを見つめる人人人・・・。

どうやらこの空港は、利用客以外の人間はロビーにすら入れないらしく、飛行機から出てきた人を待つ出迎え者が、外で溢れるほど待機していたのです。

この中からジョエルを探し出すことが出来るのか、なんだか不安になってきました。

「友だちはいる?」 
心配そうに、セシールが声を掛けてくれます。

彼女とて、早くこの場を去って自宅に向かいたいのでしょうが、なんとも頼りないオレを見捨てるワケにもいかず、近くにいて一緒に探してくれているのです。

その間にも「タクシー?」と声を掛けてくる男達が後を絶ちません。
これらも皆、ボッタクリタクシーだから乗っては絶対にダメだとセシールは言います。

やっぱりホントにそんな国だったのかよ、ここは・・・。


一時間ほど待ちましたが、ジョエルは現れません。

「いいよ。悪いからもう行って下さい。待っていれば来ると思うから・・・」
あまりにも悪くてそう言うと、「大丈夫かなぁ」と言いながら時計を見る彼女。

「ねえ、ワタシのホテルに、一緒にチェックインしますか?」

「えっ!?」

彼女の家は、マニラから長距離バスで更に南下する場所にあるのですが、マニラに用事があるため、2日ほどマニラ市内のホテルに滞在するとのこと。

「ジョエルの家に電話して、そのホテルにいるって言えば?」

「う~~ん、グッドアイデア!」
(ジョエル君来なくてもいいみたいな、天にも昇るような気持ち・・・!)

タクシーで30分程の、小さいけれど、小綺麗なホテルに到着しました。


なんか・・・、好きかもフィリピン・・・。

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章タイトル: 妖艶
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フロントで彼女がチェックイン手続きをしてくれたものの、生憎オレが泊まれる空き部屋は無く、彼女の部屋に泊めてもらうことに・・・・。
などというオイシイ話しにはならず、淋しくシングルルームを取ってもらい、その部屋からジョエルの家に電話をしてもらって、事情を話してもらいました。

彼女にお礼をしなくては、と言うことで彼女の部屋代はオレが持ち、更に食事に行くことにしました。
(ジョエルよ、キミ、ずっと来なくていいから・・・!)

お互いの部屋でシャワーをしてから、夕方の5時頃ロビーで会おうということにしました。


再びロビーに現れた彼女は、先ほど着ていたTシャツよりも、かなり身体にフィットしたシャツを着て来たため、大きな胸が強調されて、目のやり場に困ったほどでした。
(あ~ジョエル、死んでてもいいですから、キミ!)

ホテルから歩いて10分ほどにある、リサールパークと言う有名な公園内にある、海に突き出た桟橋状のレストランに案内されました。

ちょうど夕陽が落ち始める時刻でした。
「マニラ湾の夕陽」というフレーズがあるくらいで、そのサンセットはまさに雄大で美しく、これだけでも来て良かったと思うほどの素敵なものでした。

太陽の下弦が、海の波間にジュっと音をたてて沈むのを合図に、ビールで乾杯。

料理は、彼女にお任せです。

レチョン(ブタの丸焼き)・ヒポンシニガン(エビの酸味スープ)などなど、どれも空腹であったこともあり、二人で美味しく
平らげました。

レストランを出ると、あれだけ蒸し暑かった昼間が嘘の様に肌寒い夜となっていて、公園の路に出ると、ほろ酔いもあったのか、どちらともなく腕を組み、恋人のように寄り添いながら歩き出しました。

組んだ腕に、彼女の胸を感じる時があります。
息苦しいくらいの感情を、どうして良いのかわりません。

キスでもしたら、嫌われて終わってしまうのか・・・。
抱きしめるくらいなら、許してくれるだろうか・・・。

考える間もなく、ホテルに着いてしまいました。


そして、そこに見たくない光景が・・・・!


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章タイトル: バカ!
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ホテルに入ると、なんとロビーのソファに、ジョエルが満面の笑みを浮かべて数人の男女と共に座っていました。
(テメェ!生きてやがった!)

ジョエルと再会の握手をし、セシールを紹介してからいきさつを話しました。

話しながらも、男たちはセシールの胸をチラチラ盗み見しています。
(見るんじゃないよ、バカ!)

そしてバカの代表ジョエルが、一人の女性を指して言ったんだよね!

「Mさん。彼女が、アナタに紹介するエレンです。」
(ジョエルよ、ここにトンカチがあったら、アタマかち割ったる!)

エレンもカワイイのは確かなのですが、オレのハートはセシールモードになっていて、なんだか離れたくない気分にまでなっていました。

なのにセシールは、「Mさん、いろいろありがとね。美味しかったね。バッバ~イ」と部屋に戻ってしまいました・・・。


「ゴメンねMさん。今日、車が混んでいて遅れたよ。エアポートでずっと待っていたら、ワタシのお兄さんがバハイ(自宅)に電話があったって教えに来てくれたんだよ、エアポートまで。」
とジョエルが言います。

そう、ロビーにいたのは、ジョエルと二人の兄。
それにエレンと、エレンの友人だという女性2人の計6人でした。

セシールの事が気になりながらも、全員オレの部屋に入り、紹介をし合ったりしゃべったりしていましたが、部屋が狭いのでツインに変えてもらい、外で買ってきたという、日本でいうヤキトリみたいな物を食べながら飲んでいる内に、全員部屋で雑魚寝してしまいました。


寝る間際にも、頭に浮かぶのはセシール、君なんだよ・・・。


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章タイトル: 初夜?
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ホテルのツインルームに、7人で泊まったのは生まれて初めてです。

後にわかった事でもありますが、この国のホテルは、余程の超一流ホテルでもない限り、部屋に友だちや親族が集まったりするのは当たり前であり、それをいちいちホテルマンが文句を言ったりすることは少ないようです。

そう、翌朝雑魚寝から目覚めたみんなは、順番にシャワーを浴びて、それぞれ用事のある者は帰って行ったのであります。

残ったのは、ジョエル、エレン、エレンの友人のロリーだけです。

仕事をしていないという彼女たちはともに22歳。
高校のクラスメートだったそうで、今でも時々頼まれアルバイトをする程度で、とにかくヒマなんだそうです。

エレンは、この国の女性としては色白で、あどけない顔をしたおとなしい女性です。
友人のロリーは、ブラックビューティー。
デビュー当時の南沙織のような、長い髪が似合います。

4人で今日の予定などを話し合っていましたが、正直なことを言うと、オレは、いわゆる観光地や名所旧跡などには興味が無く、現地の一般家庭の生活を見たり、食事をしたり普通のマーケットで買い物なんかをしたかったのです。

そんな話しをジョエルにすると、気を遣ったつもりか、
「Mさん。 ワタシ、今日ロリーとデートしますから、Mさんはエレンと二人でデートして下さい」 と言い出しました。

「いいけど、オレの英語じゃあまり通じないじゃんか!」

「ダイジョブ! セックスに言葉はいらないね!」
(バカ!いくら彼女が日本語がわからなくても、ハッキリ言い過ぎ!)

そんなことで、午後から別行動をすることになりました。


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ジョエルに、オレはエレンの家に行ってみたいと言ってもらうと、ちょっと困ったような顔をするエレン。

父母の問題かと思いきや、そうではなくて、とにかく家がボロイから、見られるのが恥ずかしいとのこと。

なんか、そういうの聞くと、すごく愛おしくなっちゃう、オレ。

彼女の家は、名前さえも覚えていませんが、LRTとか言う、フィリピン唯一の電車に乗って、4~5駅目くらいの所で下りたスラム街で、物珍しいのか、すれ違う人にジロジロとオレは睨まれます。

薄暗い路地に入りました。

両手を広げると、届いてしまうような通路の左右にそれぞれの家があり、エレンの家はその一番奥にありました。

外観からはわかりませんでしたが、中は思ったよりも広くて清潔な感じです。

居間と思われる所にソファーがあり、3歳くらいの子どもが寝ていました。

「ターイ!、ナーイ!」
(お父さん、お母さん)

彼女が大声で呼ぶと、二階から両親が下りてきました。

彼女がオレを紹介すると、ニッコリ微笑んで握手をし、寝ていた子どもを追い払って、オレをソファーに座るように招きます。

英語とタガログ語のミックスをタングリッシュと言いますが、早口のそれで話されるとギブアップ!

ゆっくり話してくれれば英語ならなんとか・・・と言うと、どうにか会話にはなりました。

そして二人で近所でも散歩したらと言われ、教会や商店街をブラつき、最後に日本で言う、安い呑兵衛の居酒屋みたいな所に、オレのリクエストで入りました。
こんな店に入るのは彼女も初めてだそうで、緊張した表情をしています。

この町に外国人が来ること自体珍しいことらしく、最初は店員も客もドギマギしていましたが、アドボという、肉じゃがのような料理を食べたオレが
「マサラップ!マサラップ!」
(オイシイオイシイ!)
と大声で言うと、みんな安心したように大喜び。

客や店員がオレのことを日本人だと知ると、これを食べてみろ、これを飲んでみろと大騒ぎになりました。











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店にカラオケがあり、ヨッパのお客が、オレに唄えと言います。
カラオケは好きではないのですが、国際親善のつもりで仕方なく・・・。
英語圏の人前で、英語の歌を唄うほどの度胸はありません。
そこで見つけたのは、長渕剛の「乾杯」でした。
エレンが、「これ知ってるでしょ?」と英語で言ってくれたからです。

字幕はタガログ語でしたから、これは無視。
いい加減に同じ歌詞を歌ってもわかりはしないと、覚えているかぎりの日本語歌詞で歌いました。

拍手喝采!

でもその後で、「何でこの歌を知っているんだ?」の質問責め!
「これは日本の歌なんだ」と言っても、誰も信じません。
エレンは知っているので、苦笑いをしています。


オレはサンミゲールビールをしこたま飲み、エレンもほろ酔い加減で、マドンナなんか唄って上機嫌です。



そうだ・・・・。
そう言えば、オレって今夜どこで寝るんだ?
エレンは帰るんだろうなぁ、父母にオレといるところを見られているんだから・・・。

なんか、酔っ払ってから気付いたけど、今日エレンの両親に会ったのは、チョビット失敗!?

エレンに、今夜オレはどこで寝るのと聞いたら、
「ワタシの家でもいいし、ホテルに帰ってもいい」とのこと。
(ホテルって・・・、それって、一緒ってことか・・・?)
聞かない方がいいか・・・。
成り行きににまかせましょ!


店を出たら、ごく自然に腕を組む二人・・・!
なんだか、久々の幸福感を味わいます・・・。
(オマエ、夕べも言ってたって!)

なんか、好きになりそうな予感・・・。
(勝手にどうぞ・・・・・。)


「ホテルに帰ってもいい?」と聞くと、目を合わせずに頷きます。
タクシーを拾ってホテル名を彼女が告げると、運転手は荒っぽく発車しました。

彼女の腿の上で手を握っていると、オレの胸と股間に熱いモノがこみ上げてきました・・・。
(神様、ホテルに帰ったら、ジョエルがいるなんて事が絶対にありませんように・・・!)

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章タイトル: サイテ~男
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幸いホテルにジョエルはいませんでした。

「今頃、ロリーとジョエルはキスでもしてるかな?」

オレが言うと、首を横に振るエレン。

ロリーには長くつき合っている恋人がいるそうで、近々結婚するんだそうです。


部屋の窓から外を見つめるエレン。

オレはその彼女の肩を抱きながら、海岸沿いにある、ロハス通りを走る車のテールランプを目で追います。


さて・・・。

こちらに向かせ、キスをするか・・・。
いきなりお姫様抱っこをしてベットに行くか・・・。
「シャワーをしよう」は、オヤジ臭いか・・・。


後ろから抱いて、彼女の頬にキスをしました。

こちらを向かせ、唇にキスをし、胸に手を這わせると、オレを軽く手で押し退けようとするエレン。

そしてソファーの方に行ってしまいました。

彼女を追い、後ろから再び抱きしめると、早口の英語で何かを言いますが、よく聞き取れません。
が、「まだ、私たちは恋人じゃない」というようなことを言いたいのだけは解りました。
(恋人じゃなくても、オレのムスコは大丈夫そうだけど・・・)


そっか・・・・。

まあね。
昨日の今日じゃ、何となくね・・・。

女心は、国の南北は違えど中身は同じってか。

嫌がる女性を強引にするのは、騎士道精神に反する!
(エ~~~~?)

しょうがない・・・。
明日以降のお楽しみということで、今日のところはキープしときまっしょ!

一つのベットでエレンと寝ましたが、こんなに苦しかった夜はありませんでした・・・。





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翌朝目覚めた後、シャワーのあとで朝食をしに最上階のレストランへ向かうエレベーターに乗り込むと、途中の階で、なんとあのセシールが乗り込んで来ました・・・。

「おはよう!」
日本語で挨拶をしてきました。

「今日、家に帰ります。 Mさん、よかったら二人で家に来ないですか? いいビーチがありますよ。 案内します。」

一緒のテーブルで食事をしながら、アドレスや電話番号を教えてくれるセシール。

「今日はエレンの買い物に行くので無理だけど、滞在中に行けるようなら連絡するね!」
オレが言うと、嬉しそうに頷きます。

反対に、「機嫌が悪いぞ!」と言わんばかりに、露骨に無口になるエレン。



オレ、セシールの家に・・・、行きたいかも・・・・。



第1章 完結

ま~た読んでね~!

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章タイトル: 第2章 愛楽園
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エレンは、姪っ子の誕生日のプレゼントと、自分の化粧品を買いたいということでバクラランという、活気のある商店街に連れて行ってくれました。

オレもほとんど手ぶら状態で渡航して来たので、Tシャツやショートパンツ、サンダル等を買いましたが、彼女の全ての代金も含めて、¥1000にも満たない金額にビックリ。

貨幣価値の違いがあるのだから当たり前なのですが、なんだか、カネモチになったような気にさえなってしまいます。

夕方近くになり、ジョリビーというファーストフード店でコーヒーを飲んでいると、エレンが、
「今夜は自宅に帰ります」とのこと。
そして、
「セシールの所へ行きたいんでしょ?」と聞いてきました。

「うん」と頷くオレ。
「一緒に行かない?」と聞くと、
首を横に振り、
「姪っ子のバースディパーティがあるから」と・・・。


タクシーでホテルまで送ってもらい、そのままエレンにタクシー代を渡して別れ、遂にオレはこの国に来てから、初めて一人になりました。



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セシールの家は、カビーテ州・プエルトアズールという、マニラからシャトルバスや車で、3時間ほど南下した所にあるリゾート地であることが、ホテルマンの話しでわかりました。

明日に備え、近くのコンビニで水や軽食を買い込んでから、セシールと行ったレストランに一人で行って、食事をしながら計画を練ることにしました。

海上の夜景が美しく、一人で飲むビールもまた格別です。

店内を、立ち歩きながらギターの弾き語りをするヤツがいて、チップ欲しさに、外国人の客を中心に渡り歩きます。

オレを日本人と見るや、途端に日本の古い演歌を歌い出します。
(外国でそんなモン聞きたくないわ!)

オレが、「ビートルズのバラードを」とリクエストすると、
「ジャンバラヤ」を歌い出します・・・。

ビートルズもバラードも判らんオジサンは無視して、ガイドブックを読みまくります。

オレが一生懸命読んでいると、オーダーしたオニオンスープを運んで来たウェイトレスが覗き込み、何処に行くのかと聞くので、カビーテ州だと答えると、彼女は驚いた表情をします。

彼女の実家がカビーテ州で、オレが行こうとしているプエルトアズールは、隣町だと言うのです。
まあそれはどうでもいいのですが、この彼女が、日本人のアイドル顔負けの愛くるしさで、なんともカワイイ!

ネームプレートに、「アイリーン」と書いてあるので、
「アイリーンと一緒に行けたらいいのにな!」などと、いい加減な英語でアタック!
(オマエ!エエ加減にせ~よ、ホンマ!)

ビールを再びオーダーして、彼女が運んできた時にオレの宿泊しているホテルのマッチを渡して、
「店が終わったら電話ちょうだい!」としっかりナンパ・・・。

さ~て、またお楽しみが増えちゃった~!


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章タイトル: 行くぜ・・・
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飲み足りないオレは、レストランの帰り道にセブンイレブンでブランディーを買い、ホテルに戻ってからも飲み続けました。

電話を見つめ、窓からの夜景を見、時計を見つめるということの繰り返しをしている時、遂に電話が鳴りました!

フロント経由で繋がった相手は、ジョエル・・・。
(もういいですから、アンタは!)

明日、カビーテ州にセシールに会いに行くことや、エレンとの今日のこと。
レストランのアイリーンのことを話すと、ジョエルは嬉しそうに、「Mさん、来て良かったでしょう?楽しいでしょ?お金も掛からないし、最高でしょ!?フィリピンは、ヘブンなのよ!」とまくし立てました。

「あっ!ジョエル、切るわ! アイリーンから電話が来ても出られないからさ。 じゃあね!」

我ながら気持ちがハイになっているのがわかるほど、この国は面白い。

ハワイとかグアムのような安心感がまるで無く、怪しいオヤジや、気を抜けば騙される事ばかりの緊張感一杯の街だけれど、今まで来た外国の中では、ダントツの面白さであることは間違いなしでした。



11時近くになった頃でしょうか、再び電話が鳴りました。
待ちに待ったアイリーンからです。

「お腹空いてない?食事でもどう?」と言うと、
「行きたいけど、今日は疲れて眠いから帰る」とのこと。

電話をくれたことがホントに嬉しかった。
それに、オレがまたマニラに戻ってきた時に会ってくれる約束も出来たし・・・。

よし!
安心して眠りましょう・・・。


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翌朝チェックアウトをしてから、教えてもらったバス乗り場までタクシーで向かいました。

セシールには、何の連絡もせずに行くことにしました。

バスは平日だというのに結構混んでいて、遅めに乗り込んだオレの座れる席は、2つの選択肢のみ。

一つは、目つきの悪い泥棒風のオヤジの隣。
もう一つは、中年だけど上品そうな女性の隣。

言わずもがな・・・。

女性に軽く会釈をしてから座りましたが、これが大失敗であったことが後でわかった・・・。

走り出すや否や、
「アナタはチャイニーズかコーリヤか?」
「ハポン(日本人のこと)? それは嬉しい! ワタシの娘は日本人と結婚していて~~~」

とにかく話しがエンドレス・・・。

外の景色を楽しむ事も出来ず、寝ることも出来ずで半ベソ状態のオレ。
が、やがてオバサンのノ~ミソに睡魔が襲いに来てくれて、大人しくなってくれました。


アジア各地の共通と言っても良いと思うけど、このドライバーもまた然り。
ワイルドそのもの!
なんでそんなに飛ばすのよ!ってくらいに豪快にスピードを出します。

揺れに揺れるもんだから、隣のオバチャンが目覚めたと同時にゲロッペ・・・。

オ~マイゲッ~!



そして数時間後、ついに到着。


セシール!
キミに逢いに来たんだぞ。



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章タイトル: リビドー
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到着したバスターミナル内にあるカフェで、ビールを飲みながら休憩。

若いウェイトレスにセシールのアドレスを見せると、行き方を書いてくれました。
チップを多めに渡すと、嬉しそうにポケットに仕舞い、店の出口まで送ってくれ、
「サインを下さい」と言い、メモ帳をオレに渡します。
「???」
漢字というものを生で見たことがないから欲しいのだと・・・。

なるほど!
そこで、オレの名前と住所を日本語と英語で書いて、
「手紙でも頂戴!」としっかりココでもツバ付け!
(いい死に方はしないね、オマエは・・・)


この辺りまで来ると、タクシーもノンビリした運転手が多くて、マニラのような極悪ドライバーは少ないらしく、安心して乗れるらしい。

「そこに行くにはタクシーに乗り、ドライバーにこの紙を見せれば行けるはず」
と言って、先ほどのウェイトレスがメモをくれたのであります。


タクシーに乗り、海を眼下に見渡せる丘の中腹を走ること30分ほどで、小さな村落に着きました。

商店らしきはほとんど無く、時折サリサリストアー(個人宅の窓辺を利用した、食品でも何でも売っている雑貨屋)がある程度で、人気もありません。

子どもが買い物をしていたサリサリストアーで、ビールを立ち飲みしながら店員にセシールの家を聞くと、この店の裏手であることが判りました。

ついに来た・・・。


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家はすぐ判りドアをノックすると、60過ぎくらいの男性が出てきました。

この人は、英語がオレ並にほとんど出来ないらしく、覚えたてのタガログ語を使い、なんとかセシールの友人で、マニラから一人で会いに来たんだと言うことをジェスチャーを交えて話しました。

そんなやり取りをしているウチに、更に裏手に住んでいるという若い女性が出てきて、解りやすいゆっくりした英語で話してくれました。
彼女は、セシールのいとこだそうです。

そして、この男性がセシールの父上であることも判りました。

セシールは、家族で隣の大きな街へ買い物に行ったそうで、夕方には帰るだろうとのこと。
それまでは、家に上がって待っていて欲しいとのことでした。

オレの息が酒臭かったのか、父上が気を利かしてビールを買ってきてくれました。
それを飲みながらセシールの写真などを見て時間をつぶします。

そして夕刻に、ドアの外で複数の声が聞こえてきました。

最初に入ってきたのは、彼女の母親らしき女性。

そして遂にセシールが入って来て、オレと視線が合いました。

「ウッソー!なんでぇー? 来てくれたんだー!」と言いながら抱きついてきました。
(またその胸を感じちゃうし・・・)

「エレンは?」
「用事があるから、オレ一人で来たんだ」
「連絡してくれたら、迎えに行ったのに!」などと言いながらも、ホントに嬉しそうだったので、オレも、来て良かったと実感したのであります。



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「セシール。オレが泊まる所を紹介してくれない?」

「ウチじゃイヤかな・・・。狭くて汚いけど・・・。」

「えっ!ぜんぜん大丈夫。 汚くなんてないし広いじゃない」
と言ってみたものの、後でわかったことですが、確かにそれほど狭くはなかったのですが、その家族の多いこと・・・。

家は日本でいう3LDKって感じですが、そこに住む家族は、全部で14人。

確かに狭かったのでありました・・・。

セシール家族は、父母と7人兄妹で、セシールが上から3番目で長女。
その他、ジジババ姪っ子等々、何度教えられても覚えられない兄弟関係・・・。


今夜は泊めてもらうお礼代わりに、全員を連れて大きな町にあるレストランで、食事をすることにしました。

親戚だのいとこだのも来て、ジプニーを借り切り、21人で町に繰り出します。
40分ほど走って着いたのは、ピンスという町。

小ぎれいなフィリピンレストランに入りましたが、いきなり21人もの人数で、予約もなしに行くこと自体驚きですが、それでも入店出来てしまうことにも驚きました。

皆それぞれ好きな料理を注文し、味も大変美味しかったですが、この店は、コックやウェイター、ウェイトレスがいきなりグラスやお皿、包丁やボトルを持ちながら、アカペラで歌い出すんです。

それがホントに上手で、うっとり聞き入ってしまいました。

食事を終え、請求書が父上の所に置かれました。

うんうんと頷きながら隣の息子に渡し、その息子が同じように隣に・・・。

やがてオレの所に来ました。

料金は、日本円で¥8000ほど・・・。

安い、安過ぎる・・・。
と言っても、この国では大金なのでしょう。
レストランのオーナーが、わざわざオレの所に挨拶に来てくれ、滞在中に是非もう一度来て欲しいと言います。

来てくれる日が判れば、特別なショーをお見せすると言ってくれました。



さあ、これから帰ります・・・。

夜は、どうやって寝るのよセシール・・・。

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章タイトル: 相寝
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オレが泊まるということで、2階の一部屋を空けてくれることになったようです。

これにより、兄弟たちはかなり窮屈な状態で他の部屋に寝るようになったみたいです。

そしてオレに与えられた部屋で寝るのは、セシールだけ・・・と言いたいところですが、5歳くらいの姪っ子二人が、用心棒として一緒に寝ることに・・・。

オレはベットで、セシールはそのベットの下でマットを敷いて、姪っ子たちと横になりました。

11時過ぎに灯りが消されました。


「Mさん、今日はありがとね。 ウチ、貧乏だからみんなレストランなんて行ったことがないし、とても喜んでいたよ。」

「うん。 オレの方だって楽しかったよ。 あんなに大勢で食事をしたのなんて初めてだったし。」

「ねえ、セシール。 こっちに来ない・・・。」

あっという間に姪っ子たちは寝入ってしまったので、彼女に声を掛けました。

返事はしませんが、ベットに来てくれました。

どれだけの長い時間キスをしていたでしょうか・・・・。

「エレンは恋人じゃないの?」
「ううん、違う。 友だちだよ、普通の・・・」
(イ~~?)

「セシールはいないの、恋人とか。」

「もう日本に行く前に別れた。」



(姪っ子たちよ。 起きたら、グーで殴るからね!)



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章タイトル: 別世界
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あ~あ、ついにヤッチャッタ・・・。

チョビっとだけエレンに対する罪悪感があったものの、
「まだ私たちは恋人じゃない!」の彼女の言葉をイイワケにして、目をつぶることにしました。


翌日から、セシールの態度はガラッと変わりました。

完全に恋人。

オレもそれが嬉しくて、朝から夜まで一緒にデートをし、街を歩き回りました。
そして街にあった、ツーリスト向けのカフェの店内で、近くにいいリゾート施設があることを知り、そこに予約を入れたのであります。


「ケイラブネ・ベイ・リゾート」

一泊の予約を入れて、セシールと二人、翌朝タクシーで行きました。

1時間ほどで到着しましたが、ここはまさにパラダイス!
南海の楽園でした。

ココナッツの木が覆い茂る小径を抜けると、ブーゲンビリアの畑の中に、連棟した白亜のコンドミニュアムが見えてきます。
プール・ゴルフ場、テニスコートがあり、長い桟橋の先に、ポカンと浮かんだ海上レストラン。

ハワイのワイキキと同じ方法で、人工的に白い砂が蒔かれたホワイトビーチ。

客は欧米人がチラホラ見えるだけ・・・。

レンタルボートにヨット。
もちろんヨットハーバーにヘリポート・・・。

よくよく聞けば、ここはあの悪名高き、故元マルコス大統領のワイフ、イメルダマルコスの私邸だったそうです。

政権崩落後、政府に没収され、民間に売却された物件ですから、とにかくそのすべてがゴージャスの一言!

オレ達の泊まった部屋は、2ルーム2ベットで、とても大きなバスルームです。
一部屋だけでも30畳は軽くあるようなアメリカンスタイルの部屋で、本皮のソファーに身を沈めると、とてもここがマニラと同じフィリピンとは思えませんでした。

イメルダマルコスが80年代以前、ここで各界のハイソ連中と毎夜、乱痴気パーティをしていたのかと思うと、今のセシールファミリーやエレンファミリーの貧困も、頷けてしまうのですよね・・・。


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ここが気に入ったこともあるし、セシールとの組んずほぐれつの戦いが連日続き、延泊を繰り返して帰国予定の日になってしまいました。

飛行機の変更はなんとかなりますが、懐具合がヤバクなってきました。

ホテルの支払いはクレジットカードで済ませられますが、キャッシュをなんとかしなければ、マニラに帰る事も出来ません。

カードでキャッシュの下ろせる機械は、マニラに行かないとありません。

結局、セシールからマニラへ帰るまでのお金を借りて、金を下ろしたら送金することにしました。

10日ほどの滞在でしたが、ホントに幸せな日々だった。
これほどのゆったりした気分の中で、女性と過ごしたのはオレにとって初めてだったのでしょう。


別れ際、バスターミナルで泣いていたセシールとは、その後、一度も会うことはありませんでしたが・・・・・。

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章タイトル: 自己嫌悪
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マニラに戻ったオレは、日本に電話をして帰国が遅くなることを告げ、もう少し遊ぶことにしたのであります。

ジョエルに電話をして、マニラに戻って来たので、
「遊~びましょ!」コールをしますが、仕事が入ったのでそちらには行けない、こっちに来いなどと面倒くさい事を言われたので、一人で遊ぶことに・・・。

よ~し!
早速例のレストランに行って、あのカワイイ彼女、アイリーンと遊ぼっと!
ということでレストランに行きましたが、彼女はお休みとのこと・・・。

あ~ショック!

仕方がないので、リサールパークのベンチでボケ~っとしていると、いろいろな怪しいヤツらが声を掛けてきます。

「馬車に乗らないか?」
「トランプをしないか?」
「いいビジネスがあるんだ!」
「若い女を紹介する」等々・・・。

あまりにもうるさいので歩き出すと、
「あのう、日本人の方ですか? ワタシはフィリピン人ですが、日本語を勉強しています。 少しお話してもいいですか?」
と、20代前半くらいの女性が日本語で声を掛けてきました。

この手の詐欺師や、危ない所に連れて行かれてのヤバイ話しは散々聞いていたので、相手にしませんでした。
が、・・・・。
悪いことにこの子、結構オレのタイプ・・・!
(はじまった!)


カワイイのよ彼女!

それに、アイリーンと会えなくて淋しかったし・・・。

ベンチに腰掛け、彼女と話し込むオレ・・・。


夕方、「KKピザ」なるお店で、彼女と一緒にビールを飲んでいるオレ・・・。


夜、「私の部屋に来ませんか?」と言われて、大喜びでシッポを振りながらついて行っちゃったオレ・・・。


そしてその夜・・・・・・。
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彼女は、ミンダナオと言う田舎から出てきた、マニラの大学に通う学生で、現在は友だちとアパートで共同生活をしていると言います。

ピザ屋で一緒に日本語で話しながら飲んでいる内に、だんだん酔っ払ってきたオレは、彼女の言うままタクシーに乗り、彼女の部屋に行ってしまったのでした・・・。

2段ベットがある6畳一間くらいの、女の匂いが充満する部屋でしたが、オレ達以外は誰もいません。

酔っていたオレは、部屋に入るなり速攻、ライオンとなりました。

ガオ~~っと抱きつき、ベットに連れて行きます。

キスをするまでもなく、荒っぽくTシャツをたくし上げ、ブラの中から胸を掻き出そうとする、その手を彼女に掴まれました。

そして彼女は言ったのですね・・・。

「1万円ください。 100ドルでもいいです。」

「えっ!?」

「・・・・・・・・・・・・・・。」


最高にムカついた・・・・。

人の気持ちを弄んで・・・。
(そう言うエラそうなことを言えるキミじゃない!)

とってもとってもシラけちゃって、無言で帰ってしまったけど、ひどく落ち込んだんですよね、この夜は・・・。


だって、1万円払ってでもヤレばよかったって思っちゃったし・・・。





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章タイトル: 第3章 エレン
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ホテルを日系のものに変えました。

さすがに日本人が多くて、日本食レストランもたくさんありました。

久しぶりに、ウドンや天ぷらを食べてから日本の新聞を読んだりしていると、里心が出てきたのか、そろそろ帰国したいような気分になり、ジョエルにその旨を告げる電話をしました。

「Mさん、帰る前に、エレンにもう一度会って下さい。彼女、会いたがっています。お願いね!」

彼女に、ホテルに行くように言うそうです。

何というのか・・・・、オレは、彼女に対して顔向けがし難くい、と言うのが本音です。

オレがセシールに会いに行ったことは彼女は知っていますし、滞在が長引いた事がどういう意味なのか、当然解っているでしょうから・・・。

「まだ恋人じゃない」が頭に引っ掛かっています。

「もう少しすれば恋人になれる」とも言いたかったのかな・・・。


当時のフィリピン人は、男女とも、アメリカや日本に憧れを持っている人が本当に多かったのです。

男性は、日本で働くこと。
女性は、タレント(ホステスさん)として日本で働くか、日本人男性と結婚すること。
これを憧れとする人はたくさんいましたから、日本人でありさえすれば、そこにラブ感情など無くても親子共々、大喜びで結婚を望んでいたんですね。

逆に考えれば、オレの事を何一つ知らず、
「日本人だから」というだけでつき合いたがる。
それだって不自然ではないか!

確かに、「恋人じゃない」のに抱こうとしたオレだけど、オレの事を何も知らないのに、「恋人になろうとした」事は、オレに言わせれば同罪。

うん!抱いたって罪悪感を感じることは無いんだ!
(そうくるか~・・・・)



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翌日の朝、エレンはオレの部屋に来ました。

とてもおしゃれなワンピースを着て、小さなマンゴーを山ほど買ってきてくれました。

深々としたソファーに座り、マンゴーの皮を剥いてオレに食べろと勧めてくれます。
向かい合って座るオレからは、彼女の膝元から下着が見え、朝の欲情を刺激します・・・。

朝でしたが、シャワーのあとでビールを飲んでいたので、またライオンになりそう・・・・。
(ハイハイ・・・)

「エレン。 オレ、明日か明後日に帰ると思うよ」
そう言うと、黙って頷きます。

急にエレンは、家族や、これから将来の自分のことなどを、ゆっくりと、オレでも解る程度の英語で話してくれました。

彼女の家族は、兄一人がドライバーとして働いているだけで生活が苦しく、彼女は、日本かサウジアラビア、香港で働きたいのだということ。

それで、オレとつき合うことで、もし日本に行けるチャンスが出来たら最高だと思っていたことなどを話してくれました。

国民の95%は貧しくて、ほんの5%のカネモチがいるこの国に於いて、この手の話しは当たり前のような珍しくもない事なのですが、妙にオレをおとなしくさせてしまったのですね。


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ライオン君は、チョビットしょぼくれてしまいました。
(ニャ~オン)


なんだか今抱くと、日本行きをエサにしてヤッちゃう、ハラグロ人身売買ブローカーみたいで、ちょっと嫌悪感が芽生えたのですね。




でも、やっぱりヤっちゃいました・・・。
(テメエ・・・!)


だって~・・・。

エレンの下着チラチラは相変わらず刺激的だったし、酔っ払うと、すんごくオレってヤリたくなる性癖(?)があるし、疲れていてベットに横たわったら、彼女、足とかをマッサージなんかしてくれたもんだからさぁ・・・。


ライオン君を蘇らせてしまったエレン、キミが悪い・・・。




ガオ~・・・。
また書く気持ちになった時、「タイ編」でもブチかましましょうか・・・・。

サイテ~男の旅・フィリピン編

章タイトル: 終わりに


こうしてサイテ~男の3週間あまりの旅は終わりました。

これは20年以上前の話しです。


フィリピンは今、アキノ大統領やその後のアロヨ大統領の尽力で空港も整備され、昔のようなヘンなヤツらもいなくなりました。
もちろん気を抜けば、危ない事に巻き込まれるのはどの国でも同じですから、旅行の際には十分ご注意された方が良いのは言うまでもありません。


小泉首相時代、フィリピンからの出稼ぎ労働者の規制があり、フィリピン人女性がタレントとして来日することは、原則出来なくなりました。
日本からフィリピンパブが消えたのはこのためです。


それまで出稼ぎ女性が家計を支えていた家庭は崩壊し、更なる貧困が襲っているそうです。

日本で働くことが何故悪い。
単純にそう思ってしまいますが、日本とて貧困で苦しむ時代に突入したのですから、甘いことばかりは言ってはいられませんね。


その後エレンは、スケベ悪徳ブローカーであるオレが書類を用意して、沖縄のホテルで就職することができ、その後、日本人の客と結婚したという話しをジョエルから聞きました。

セシールは今頃どうしているのだろう。
アイリーンは・・・。

あの売春女は、今も現役か・・・・・?


長らくお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

もしこの駄文をお読みくださった方々の中で、これはフィリピン国に対する偏見だ、フィリピン人女性に対する侮辱だとの印象をもたれた方がいらっしゃったのなら、それは私の稚拙な文章力や、おふざけ的な書き方がもたらした誤解であり本意ではありません。

私はフィリピンという国・フィリピン人の方々が大好きであります。
その上での書き物でありますから、どうかご容赦のほどをお願いいたします。

サイテ~男の旅・フィリピン編

  • 随筆・エッセイ
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  • コメディ
  • 成人向け
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更新日
登録日
2012-03-16

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