言葉と花

兎魅

あるところに、言葉に反応する花がありました。「こんにちは」と話しかけると嬉しそうに花びらをオレンジに染めたり、いつもいじめてくるあの子の話をすると悲しそうな青色に変化したり、という具合です。花はいつも町の人々の話相手になり、心の支えとなっていました。
夏がすぐそこまで来た頃のことです。いつものように花は人々の話を聞いては、くるくると色を変えていました。
「お花さん、隣町のあの子知ってる?さっきね、そこで私が転んだとき、声をかけてくれて、ぶどうのキャンディーまでくれたんだよ。」
花はすがすがしい空色になりました。
「聞いてくれよ、あの子と結婚すること、親父が許してくれたんだ!」
花は幸せそうなピンク色になりました。
「今日ね、あたし、かけっこでクラス1番になったのよ。昨日、お花ちゃんにかけっこのこと話したからかな?」
花は元気な黄色になりました。
かけっこの女の子が去ったあと、ひどくいらだった男が花の正面にやって来ました。
「お前は言葉に対して変化するが、見た目しか変わらない。こんな花にしゃべって何があるっていうんだ。」
花は色をにごらせました。次に少年が来て言いました。
「ある人の話で悲しそうに青色になる。でも次の奴が来て話すと、前の話なんかお構いなしにのんきなオレンジやらピンクやらになる。自分の意見なんか持っちゃあいない。楽そうでいいよな。」
花はぶわっと破裂しそうな赤色になったかと思うと、すぐに灰色になり、花びらにはいくつものしわが走りました。
いつしか花に話しかける人はいなくなり、町の人が気付いたときには、花びらは真っ黒く、全て茎から落ち、枯れていました。
人々は、最初こそ心配に思ったり、かわいそうに思ったりしましたが、今では気にかける人は誰もいません。

言葉と花

言葉と花

童話第二弾。八方美人は嫌われると言いますが、上手く世を渡るためには必要な気がします。

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