いるかのほし 16 矛盾の墓場2

かるいいるか

矛盾の墓場2

「・・・・・・!!!ええ~~!なにこれっ、ミーコの塾の夏季講習、おすすめコースの料金、いくらと思う?!!よ、よん、40万やで、40万!!!」

 ラビンの散歩を済ませ、夕食の支度をして、置きっぱなしにしてあったミーコの塾からのお知らせの郵便物を開いたポコは、思わず叫んだ。
 ポコの長女ミーコは、今年高校受験で、先月から個別指導塾に通っていた。

 ミーコと弟のカタロは、無表情にご飯を食べながら一瞬だけこちらに気をとめただけで、後は何も聞こえなかったように、テレビに映る芸能人が大きなオムライスをほおばる姿に、再びひきこまれてた。

 せっかく、こころをこめて、ご飯を作っても、「おいしそう~~。」と反応するのはテレビ画面の中のご馳走にだった。

 拷問・・・・。慣れようと思っても、なかなか、本音では厳しいなあ・・・・・。そりゃ、プロの作った料理のほうが、おいしそうだわ・・・。今更、子供たちを責める気も失せて、あきらめてはいるのだが、なぜこの時間にテレビは、どのチャンネルも食リポを放送するんだろう・・・・。「弱いものいじめ」、だよね・ほんとに・・・・。

 このところ、クモク島の家族旅行も大成功で、ミーコの反抗期もそろそろ落ち着きそうで、良い感じになってきてたのだ。旅行の後は、覚悟を決めて、受験生モード。早めに旅行を済ませたのは、そのためだった。
 心療内科を訪ねて、呼吸法と自律訓練法を知って、自分なりに実践してから、もう、2年・・・。そのかいあって、パニック症状もだいぶ落ち着いてきていた。クモク島に行けたくらいだもの、もう、大丈夫。ミーコの受験を、支えてやりたい・・・・。ポコは、そう思っていた。それなのに、支えるったって、上限ありよね・・・・!子供のためだか、塾の経営のためだか・・・・・。このプランの根拠はなんなの・・・。親ごころに便乗するかのようなやりかたに、ポコは腹が立った。

 明けて、週末の昼下がり・・・・・。受験の相談をと、ポコは、リビングでパソコンゲームを楽しんでいる夫さんに話しかけた。
「どうかしてるよね。足元みてるとしか思えない。塾、何て言ってきたと思う?講習料金、40万やってよ。」
いきなり、お金の話しになってしまったけど、気の置けない夫婦の間、まずは、ムラムラを吐き出したのだ・・・・。
当然、「そりゃ、ないなあ・・。ホントに?」の反応が返ってくるものと返事を待つポコに、夫さんから帰ってきた言葉は、意外にも、「うん?40万だろ・・・?」だった。

「ええっ!!!!」非常識じゃないってこと???それも、ありってこと!!!!!!
ポコは、意表をつかれてあんぐりと夫さんの顔を凝視した。

 当然と予想した答え、それがまったく違っていた・・・・。
大げさなようだけど、「人生ではじめて」くらいの驚きだった。いや、初めてではない・・・、前にもあった。「当然よいこと、だから、うけいれられること」いままでは、そうだったことが、「そうではなくなる瞬間」・・・・。

 ポコは、なぜか、思い出した・・・・。「矛盾の墓場の墓守になれ。」と響いた、あの夢の中の声・・・。自分の周りの景色が、砂のように陥没して、ざああ・・・・・・・と崩れてゆく・・・・。あの時の胸の奥の、プラムジュースのような甘酸っぱさ・・・・・・。

いるかのほし 16 矛盾の墓場2

いるかのほし 16 矛盾の墓場2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-14

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