ロストメモリー 4

はじまり 3

アンナは、苛立ちを押さえられずにいた。さっきまでは、恐怖しか心の中に存在しなかったが、今ではリーチに怒りさえ感じる。あの時…そう、玄関で断って帰っていたら、こんなことにはならなかった。リーチの 単なる遊び心でこっちは、付き合わざるを得なくなってしまった。こんなことなら、一人で帰っていたらよかった。ユウセーが戻ってくる間、私たちは、何もせずにただ、ぼーっと待ってたら良いのか?リーチは一体、何を考えてるのか?アンナには、全く理解できないでいた。どうせ、リーチは気楽に、アキラのママがおやつを出してくれるんじゃないか?ゲームをして待ってて、と言われたら、喜んでゲームをしながら待つんじゃないか?色々なことを思いながら、ふとリーチを見た。リーチは一点を見つめている。その表情がどことなく、アンナには大人っぽい雰囲気に感じた。リーチが普段は見せない、どこか冷めた表情をしていたからだ。リーチは、おもむろに無造作に置いてあったモノを拾い上げた。アンナがそれに目をやると、リーチが拾い上げたものは、ただのゲームソフトだった。なんだ、結局ゲームしたいだけか…次はアンナがリーチに対して冷めた表情をする。だが、リーチはそんなアンナの表情には目もくれず、テレビをつけて、ゲームを始めようとしている。「ちょっと、リーチ。勝手にゲームなんてしたら、ダメだよ。それならユウセーが戻ってきてからにしようよ!」アンナがそう言ってから、しばらく沈黙が続いたあと、リーチはアンナに、冷めたままの表情で言葉を返した。「アキラとこのゲームをした次の日いなくなったんだ。ただ、このゲームのキャラクターとしてだったら、アキラはいるんじゃないかな?って思ってさ。」そう言いながら、ゲームの開始ボタンを押す。さらに、セーブしているデータを起こし、画面に目をやると、リーチはあることに気づく…こんなモノなかったぞ?!通常ならば、セーブデータを起こすと、すぐにこのデータでゲームを開始しますか?というアナウンスが出てくるが、今リーチとアンナが目にしてるものは、それとは違っていた。《あなたは、なんさいでプレイしますか?》とだけ書かれている…アンナにはよく分からなかったので、リーチに聞いてみた。「何これ?なんさいで、ぷれいしますか??って、どういうこと?」
リーチはすぐにアンナに答えた。「たぶん、好きな歳を入れたらいいんだよ。前はこんなのは、なかったのにな。なんだろう?そうだな、好きな歳は…おれなら大人になってみたいな。そういえば、ママがよく高校生になったら、留学して世界を知るのが絶対いいよなんて、言ってたっけな。たぶん高校生って大人なんだよ。何歳だっけ?まあ、いいや17歳にしとこうっと。」そう言って、リーチは17と入力し、決定ボタンを押す。続いて名前を決めてくださいと出てきたので、リーチと入力して、さらに決定ボタンを押した。すると、画面には一人でプレイしますか?人数を増やしますか?と出てきたので、アンナの分も追加した。アンナもリーチと同様に17歳とした。アンナは何か言いたそうだったが、とりあえずリーチは無視しておいた。ゲームのことまで、とやかく言われたら、たまったもんじゃない。追加はこれで終了し、続いて住所の登録が出て来たので、リーチとアンナが住んでる町を登録した。すると、画面には、よみこみ中と出てきたので、画面が変わるのを待っていた。
少しの時間が経過したあと、パッと部屋が暗闇につつまれた。そして、静寂な時が流れる…リーチもアンナも、しばらくの間沈黙したがやがて、どちらともなく声を発した。「え?停電?なんで急に?たかがゲームしてただけで、ブレーカーが落ちるわけ…」そして、再び暗転して明かりがつく。二人はお互いの姿を見て、驚愕した…お互いが急激な成長を遂げたのか、設定通りの17歳になっていた。それだけでも、驚きを隠せないのに、お互いが服も着ていない、全裸の状態で座っていた。アンナがとっさに叫ぶ!「キャー、誰よ、あなた!変態!近寄らないでよ!」と言いながら、近くにあった座布団を抱き締めた。リーチは、混乱しているアンナとは対照的に、冷静にこの場の状況を把握しようとしていた。17歳のリーチは、冷静かつ、頭脳明瞭だった。思考を回転させ、すぐに目の前の女性がアンナであることに気づいた。「アンナ、おれだよ、リーチだよ、リーチ…他のことはまだ理解できないけど、おれらは17歳になったみたいだぜ。よく顔を見てみろよ。」アンナは少しずつ冷静になり、リーチの顔をじっと見ていた。そして、ようやく自分が今置かれている状況を把握できた。「リーチ?なんで?私たち一体…」アンナは、なんとかその言葉を発し、ゆっくりと思考回路が回り始めたので、この状況になった経緯を考えていた。あの時、ロストメモリーのゲームを開始して…えーっと、それから…リーチが、設定画面に17歳って入力して…え?これゲームの中なの?そんなはずない。とりあえず、落ち着こう…子供から高校生になって、着る服が小さくって、裸に…裸!?ギャー!」アンナが再び叫びだしたので、そんなアンナを見て、リーチはとりあえずアンナをそのまま部屋に置いて、出て行ってしまった。

ロストメモリー 4

ロストメモリー 4

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-13

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