ちょっと怖かった話①

夜に乗った電車。自分だけでなく、集団で体験した奇妙な話。

電車はどこで停まったのか

 ちょっと怖かった話

 その日の夜、私は一人で野球観戦に行っていた。試合半ばでひいきのチームがボロ負け確定になったので、腹立ち紛れに結構な量の酒を飲んでいた。
 苛立ちながらも最後まで試合を見届け、不機嫌なファンの波に押されながら電車で岐路についた。
 私の家から最寄駅は三つあり、歩いて十分のJR線、十五分の私鉄、五分の市営線があった。JR線の駅をA、私鉄をB、市営線をC駅とする。いつもは野球場からJR線でA駅まで帰るのだが、酔っていたことと、夜は乗り継ぎが悪いこともあり途中下車して市営線を使いC駅へ帰ることにした。
 市営線に乗り換える人は案外多かったが、運よく座ることができた。私は目を瞑り音楽を聴いていた。乗り換えた駅(D駅とする)からC駅までは、二つ目のターミナル駅で乗り換えなければならない。一駅目で停車した時、目を開けてそこが駅であることを確認した。駅名は見えなかったが、確かに停車して扉も開いていた。
 ほどなくして、二駅目に着いた。私を含め、多くの客が乗り換えのため立ち上がった。だが、そこの駅名は一駅目だった。最初、私は自分が酔っているせいだと思った。しかし周りの客もきょろきょろしたり、首を傾げている。明らかに、停車した駅は二つ目だったのだ。
 それから、ターミナル駅に着くまで目を見開いていた。何事もなかったように電車は到着し、まだ首を傾げている人達と一緒に私は乗り換えた。C駅に着くまで、私が目を瞑ることはなかった。
 D駅の次の駅は、役所以外住宅も何もないため夜に下車する人は皆無だ。実際、一つ目に泊まった駅で下車する人はいなかった。だが、もしあそこでうっかり降りた人がいたら。間違いに気付いて戻る前に、列車が発車していたら。その人はどこへ置き去りにされるのか。そう考えると、背筋が寒くなる。

ちょっと怖かった話①

降りてたら、どうなっていたんでしょうか。二度と帰って来られなかったのでしょうか。

ちょっと怖かった話①

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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-13

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