いるかのほし15 矛盾の墓場

矛盾の墓場

 「家族っていいですね。家族万歳!!今日は、子だくさん一家のYさん宅より、お兄ちゃんおむつ替えに初挑戦のドキドキと、初めて行けたよ末っ子Tちゃんのお買いもの、小さなママは大忙し・・・・。を、お送りしました・・・。では、引き続き、ニュースをご覧ください。」

 ここは、ポコの家。お昼のテレビで夜やった番組の再放送をやっている。

 食後、つい、だらだらとつけっぱなしてしまったテレビに、やれやれ1時間もつきあってしまった・・・・。肩には、空虚な疲労感がのっかている・・・・・。

 「・・・・・ったく!!!!これって、ほんとなのかな・・・。家族は、みんな助け合うみたいな・・・。家族家族って、家族賛美、家族信仰、家族神話・・・・・。・・・・うそだろ~~~~。絶対うそだ!すくなくとも、うちの家族には、あてはまらんわ。」

 ポコは、家族を称賛するテレビは、なんだか違和感があって、なるべく見ないようにしていたのに、これは、間でうまいこと動物の子育てなんかもはさんできたもんだから、それが可愛くてつい、つけっぱなしてしまったのだ。動物の親が、子供を虐待していじめる話なんか、聞かないな・・・・・。人間は、どうなってんだか・・・!!

 むなくそわるいイライラをかかえたまま、ポコはソファーに横になって、思いっきりのびをした。はあ~~~、なんだか頭痛い。ちょっと昼寝しよ!!ほどなくポコはうつらうつらと眠りに入った。手を抜くと、お弁当を食べない長女のミーコに、きもちをこめて朝からお弁当を作る。それに便乗して甘えてるのか、「ぼくもお弁当にする。」なんてだんなさんも言うもんだから、ポコは、けっこう早起きなのだ。

 そしてポコは夢を見た。
うしろむき~~うしろむき~~~~。次の駅は、うしろむきでございます・・・・。うしろむきでございます・・・・・。

 ポコは、電車に乗って、うしろむきという駅で降りた。そこは終点みたいだ。降りた人は、みんな同じ方向に歩いて行く。看板に、「矛盾の墓」と書いてある。「いやだ、このお墓、うちのご先祖さんじゃないよ。」ポコは、引き返そうとするけど、気が付くと動く歩道の上を流れていて、いくらすすんでも、お墓に近づく・・・・。私、うしろむきに進んでる!ポコは、少し怖くなる。
 すいこまれるように、うしろむきのまま「矛盾の墓場」に入ると、想像していたのとは違って、そこはお花畑だった。黄色やオレンジ、うすい水色・・・。小さい花が、一面風にゆらいでいる・・・・。きれい、と思った瞬間、花畑は、真ん中からまるで砂のように、陥没していく。陥没にのみこまれないように、精一杯「いやだ!」と思ったら、ポコの周りの景色が、洪水のように陥没してゆく大きな穴の中へすいこまれた。足元を見ると、自分は中に浮かんでいる。ほっとした瞬間、「あふれる矛盾の墓場を用意しなくてはならない。おまえは、墓場の墓守をしろ。」という声が響いた。墓場の墓守!!ひっっと寒気がはしった瞬間、・・・・!夢・・・・・。ポコは目が覚めた。

 うえっ。最悪。なんちゅう夢じゃ・・・・。ポコは、気分を変えるために、愛犬ラビンの散歩に出た。

でも、なぜか、「矛盾の墓場」というキーワードが、頭に浮かんでくる・・・・・・。どこやねん!!!思いっきり一人でつっこみをいれながら、ポコは夕日の中を、ふだんより少し焦った気分で散歩した。

 15へつづく

いるかのほし15 矛盾の墓場

いるかのほし15 矛盾の墓場

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-13

CC BY-NC-ND
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