ロストメモリー 2

はじまり 1

「おっはよー!」朝から元気な顔で、リーチはアンナに声をかけた。「あっ、リーチ!おはよー!今日は公園で自転車で遊ぶ?」アンナは今から学校なのに、もう放課後のことをリーチに話している。「鬼ごっこ?いいね、アキラとカイトにも、声かけとかないとな。でも、カイトは今日は習い事だっけ?学校着いたら、聞いてみよう!」リーチは、早くもやる気でいてる。
リーチとアンナの家は学校から歩いて、十分くらいの所にあり、家から坂道を下っていくと、かすみ海第三小学校に辿り着く。比較的、道路が広い割には、交通量が少ないので、二人は通学中に、ランドセルを振り回したり、道端に生えている花を摘んだりして、学校へ向かっていた。
そんな時、ふとアンナがリーチに「そういえばさ、昨日ママがさ、アキラとカイトのことをさ、新しいお友達?みたいなこと言っててさー、バァバみたいだったよ。」と、田舎の物忘れが激しい、おばあちゃんのことを思い浮かべて言った。するとリーチも、「え?マジ?おれのパパもママも、アンナのことは知ってたけど、アキラとカイトのことは、アンナのママと、同じようなことを言ってたよ。」と返した。「なんでだろうね?なんでだろう?」…なんでだろ~、なんでだろ~、ななな、なんでだろう~と二人は声を合わせながら、特にそれを気にするわけでもなく、学校にたどり着いた…
リーチとアンナは、四月から小学三年生になっていた。クラスは三組で、校舎の二階にある。階段を上がって、右に曲がるとすぐだ。「おはよー!ギッリギリ、セーフ!」と、リーチとアンナは自分の席に着いた。それと同時にチャイムが鳴り、いつもと変わらない学校生活が始まる。
ホームルームに来た先生は、挨拶をすませて、出欠を取っていく。普段と変わらない、全く変わらない日常のはずだった。先生の出欠確認が終わったとき、リーチとアンナがあることに気づく…
あれ???アキラとカイトが呼ばれていない?っていうか、アキラとカイトの席がない…え?分からない??リーチが疑問に思ったと同時に、「先生、中島くんと、森くんは?」とアンナが先生に聞いていた。
先生は、「中島くん?森くん?このクラスじゃないでしょ?中島くんは四組で、森くんは五組でしょ?」と先生は当然のように答える。
「違うよ。四組と五組にも、同じ名前の子がいてるけどさ、アンナが言ってるのは、中島アキラと森カイトのことだよ。」リーチがすかさず、先生に言い放った。
だが、先生はともかくクラスのみんなまでが、誰のことを言っているのか、分かってない様子だった。
リーチとアンナは顔を見合せ、鳥肌がたった。当然、二人にとって、この日の授業は授業にならなかった…
その日の終業のチャイムが鳴り、帰り道リーチとアンナは二人寄り添いながら、今日のことを振り返っていた。
「アキラと、カイト、結局来なかったね。」
「なんで、先生とみんな、アキラとカイトのこと、知らないふりするんだろ?」
「分かんない。でも、リーチと私しか知らないってことになってるんだね。」
「昨日も、四人でいっぱい遊んで、その前もさ、アキラの家でゲームしてたんだぜ。」
「ねえ、ねえ、リーチ、一回家に帰ってから、アキラの家に行ってみようよ。」
「そうだな。じゃあ、4時に西かすみ海公園で、待ち合わせな!」そう言って、リーチは家に向かって走り出した。
「絶対、来てよー。私一人だったら、行きたくないからね!」アンナはリーチと別れるだけでも、少し不安な様子だった…

ロストメモリー 2

ロストメモリー 2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-10

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