目の前に死神がたっていた

どうぞ、見てってくださいね

邂逅 少年と死神少女

目の前に死神が立っていた



1.
目の前に死神が立っている。

比喩的な表現ではない、だって俺、ついさっきトラックに轢かれたんだから。

『それ』が構えている鎌はまるで絵の具でベタ塗りにしたように見事な黒色。

だからこそ『それ』がこの世の存在ではない、ということを俺に印象付ける。
そして、『それ』はふかくフードを被り、顔は全く見えない。

....だがそんな時でも俺はあることが気になった。
「こんな時になんだけど、走馬灯って無いんだな」
俺は多分、死んだのかもしれない。
違うとしてもトラックに轢かれてるんだ、走馬灯くらい見てもいいはずなんだが

「....キサマ、イマナントイッタ?」
「うおぉっ!?喋った!?!?」

もし俺の思念が届いてる奴がいるなら、心して聴け。死神は喋る。

「ナントイッタァ!!」
キレてるし!
「ニンゲンゴトキガサカラウキカ!アァン!?」
...いやいや、最後の方田舎のヤンキーみたいになってるし。

というか
「死神って案外怖くねーのな」
すると、何故か『それ』はマンガとかでよくある「グサッ」みたいな反応をとる。

あ、気にしてんだ。

「おい人間っ!貴様言っていいことと悪い事があるぞ!あまり調子にのるなよ!」

...お分かり頂けるだろうか。

『それ』の声は、今まで(というか殆ど話したこと無いけど)まるで機械で声を作っている...というか、すっげぇ棒読みのボカロ、と言えば分かりやすいだろうか。

勿論既存のボカロの声ではない。...むしろそうだったらこえぇよ。

とにかく、ラノベだったらカタカナで書かれるような声。

なのに、今のはひらがなで書かれるような、よく言えば人間っぽいっていうか...

「女の子?」

そう。女の子の声なのだ。

しかもまだ幼さの残る中学生くらい?とにかく、大人ではない。よく見ると、身長もそれほど高くなく、もしかしたら小学校高学年から、中学生くらいの女の子なのかな、と予想する。

「ま、まさか貴様...ッ!人間の中でも『えすぱー』と呼ばれる種族か!?」

A.違います。

...まぁ、反応の限りだと女の子らしい。きっとあれが末期症状ってやつだろう...

だとすると、死神だなんだって言ってるさっきの俺がすっげぇイタく思えてくる...

「まぁ、俺今学校行く途中なんだ。急いでるから」
「え?ちょ、ちょ!まっ!へぶぅ!」

追いかけてくる気配があったが、それは途中で無くなった。最後の奇声が気になるが...



俺は

『川上 奏也』
『男子高校生』

4月のある日、登校中、トラックが突っ込んできた。猛スピードで。

いや、俺が突っ込んだのか?

とにかく俺は轢かれた。

学校に着くまではあの電波死神(仮称)のこともあり、トラックに轢かれたなんて事実はない、と思っていた。

しかし、どうやらそうではないようだ。学校に着くと、先生の話がすぐ始まった。

...おれの通学路で人身事故。

それも、被害者はこの学校の男子生徒、ということらしい。

目撃情報では、轢かれた痕跡はあるものの、遺体は発見されていないらしい。

–––––俺じゃね?


2.

「どうなってんだ?...ったく...」

学校は散々だった。
もちろん遅刻で説教され、多分轢かれたってのに反省文を書かされるわ、事故現場ではどうやら俺の持ち物が見つかったらしいわで...

全部あの電波ロリ死神のせいだ。うん。次あったら慰謝料請求してやる。

「ヘェ...シニガミニタイシテイイドキョウダナ」
「な、!?」

振り返ろう、として、やめた。

首にあの真っ黒な鎌が添えられている。

そして、言いようの無い恐怖が俺を包み込もうとした時

「わた...ワタシノフテギワデ走馬灯を見せてあげられなかったことはあやま...ゲフンゲフン....アヤマル。」
「...その声を維持し続けるのは義務かなんかなのか?」

吹っ飛びました。えぇ、恐怖なんて吹っ飛びましたとも。あの声で喋る事に何か誇りでもあるのだろうか

「マァ、オマエノセイデ今、私達ハ大変いれぎゅらーナ状況ナノダ」
「ま、まて!話せばわかる!...お前、何者なんだ?」
「...自分デ言ッタデアロウ。ワタシハ死神」
これでもか、というくらいの簡潔な自己紹介だった。
「なんで俺を殺す?あの時トラックに轢かれて生きてるのならいいじゃないか。俺は死にたい訳じゃない...」
「ダマレッ!!!!!」

死神は俺の言葉を途中でさえぎって、声を張り上げた。

「....できれば、地声で喋ってよ。聴き取りにくいんだ」
「いいだろう。...か、かなり本気で嫌だが...こうなった責任だ」

死神から発せられる女の子の声。エラいギャップだ。だが、やはり素顔を晒す気は無いようで、フードは深くかぶったままだ。

「まずお前に説明しておく死神とはなんたるかを

死神。一口に言ってもその仕事は一つ一つが責任のある仕事。
恥ずかしい話だが...私はこれが初めての仕事でな...。死神の1番の大役『魂の運び手』に私は任命された。貴様はこれがどのような仕事かわかるか?」

いきなり話を振ってきた。多分、名前のニュアンス的に...

「魂を天まで送り届ける?」
「違う。それは天使のしごとだ」

ま、まて。それだと俺は天使に迎えられていないということではないか!?

「...我々『魂の運び手』は魂の管理がほとんどの目的だ。寿命を全うした魂を、安らかに眠らせ、天使に引き渡す。または、処分を下す。
貴様のように、不慮の事故の場合、せめてものなさけということで走馬灯を見せなければならないのだが...」

そう、俺は走馬灯なんて見ていないのだ。

「魂が目覚める前に、走馬灯を見せるか、永眠の儀を行わなければならなかったのに...」

心底悔しそうに、いや、本当に取り返しのつかない失敗をしたかの様に地団駄を踏む死神。

「そ、それで何故そこで俺を殺そうと?」

別に俺はまだ生かしてくれるならありがたいし、死ねといわれて死ぬようなことと出来ない。

「それは....

死神がそう口にした瞬間だった。

民家を、突き破って何かが突っ込んできた。
そう、化け物が。白く、巨大なゾウのような体の左右に体よりも巨大な大腕を携えて。

一直線に俺に向かって。

そのとき

「丁度いい。お前にも見せてやる。お前の存在の悪影響と...この私の実力をッ!!」

どこからか声が聞こえた。

次の瞬間、少女が化け物を切り倒していた。

3.

「あれは...何なんだ....!?」

幾ら何でもフィクションにしてはおぞましい化け物が俺に突っ込んできた、と思いきや、...真っ二つに切断されている。

「あれは『この世ならざる者』だ。...よかったな。私がいて」

いつのまにか、先ほど化け物を切り倒した少女が目の前に立っていた。

そして、地面に落ちたフード付きローブを羽織り直す。

...まさか、この子が『死神』なのか...?
それに、『この世ならざる者』...だって?

「私達死神は、走馬灯や永眠の儀を行なった後、魂を審判する。そして天使に引き渡すか、お前らの言う地獄へ連行するか、決める。
だが...ごく稀に、その魂が目覚めることがある。...お前のようにな」

「魂が...目覚める?」
「そうだ。
目覚めた魂は基本逃げようとする。しかし、時間が経つにつれ、記憶も全て失われていき、しまいには霊とよばれる存在するとなる。だが...

ごくごく稀に、魂は死神を襲う。

そして、死神の力を奪う。

また、霊は人間の要素を喰らい、取り付こうとする。」

『死神のチカラ』?『要素』?

「そして、そうなったものを『この世ならざる者』と呼んでいる。まぁ、先程のやつは霊が元なのだろう。」
「まて、そ、それだと...おれは...」

その話でいくと俺は...!!!

「あぁ、そうだ。
お前は霊だ。
つまり私の討伐対象。
しかし...何故なのだ?

何故お前は他の人間に目視でき、物を触れ...とにかく人間のように生活できる?

これ程時間が経ったのだ。
記憶は消えているはず、と思ってここに降り立ったのに。」

こいつの話がウソ、という可能性は先程消え去った。

ただの厨二があんな化け物を一撃で屠れるものか。

「...まぁ、安心しろ。
原因は分からなくともお前は霊だ。
討伐した後は他の魂達と区別などしない。」

「出来ればほおっておいてくれません!?」

まったくだ!
霊である事がバレてないならいいじゃないか!
社会に変な影響も与えてないし!
た、多分!

「...そこまでして生きたいのか?
何故だ?
何故そこまでして生に執着する。」
「は?
そ、そんなの当然だろ?
学校で友達と遊んで、
女の子とも仲良くしたいし...
「学校?まさか、教育を受けるところか?」

俺の言葉を途中で遮り、キョトンとした表情で、首を傾げる。
...い、いかん、こいつよく見たら可愛い...

「え?そ、そんな学校如きに...あんな勉強ばっかでつまらないところなんて...」
「調子に乗るな。」

いつのまにか彼女の手にはまたあの鎌が握られていて、俺を睨みつけている。

顔が整ったやつが怒ったら怖いよね。

「学校如き、だぁ? 貴様、教育を受けることのありがたみをすっかり忘れているのではないか?...考えてみろ。
仮に教育の無い世界がどうなっているか。...酷い物だ...」

なぜがとても悲しそう、そして酷く孤独を思わせるような声色で言う。

「だからこそ、私は常々平和な世界の教育に興味を持っていた...」

そうだ。
思えばこいつは俺たちとは違い、『死神』である。
俺には想像もつかないような、壮絶な過去を送ってきたのかも知れない。
彼女に何か言葉をかけたかった。
だが。
何を言っていいのか分からない。
こんな平和ボケした世界の住人が何を言えるって言うんだ。

「とにかく、嫌ならさっさと––––」

あいつがなにかを言おうとした。しかし言えなかった。
先程の『この世ならざる者』の体が
『死神』を両手で鷲掴みにしていた。

そしてワンテンポ置き、死神の体は化け物からの渾身の拳をモロに受け–––––


3.
「これって...ははは、夢だよな?」

いや、そうであってくれ。
そう願いたくなるほどの惨状。

瀕死、と思われていた化け物が放った拳の威力は絶大。
下向きに放たれたそれは、地面に大きなクレーターを作り、拳には返り血だろうか、真っ赤な色が。
「なんだよ...これ。お、俺死ぬのか...?」
頭の中を覆い尽くすたくさんの疑問。

「ま、まずは...逃げねぇとな、ははは...足もうごかねぇよ...」
思わず地面に座り込んでしまったっきり、どうしたのかまったく立つ事が出来ない。

化け物はゆっくりとこちらに近づいてくる。
時間は止まってくれない。死がゆっくりとゆっくりと近づいてくる。

怖くてたまらないのに、誰も見ていないのに何故か俺は叫んでいた。

「...はは...全ッぜん怖くねぇよ...ほら、かかってこいよ...!」

虚勢、というやつだろうか。
叫ぶ事で、己を鼓舞し、なんとか立ち上がろう、としたんだろう。
威勢はいいが、実力は...というキャラみたいだな、俺。

そんな思考が流れた瞬間

吹いた一陣の風と
「よくやった...後は任せろ」
という声を俺は確かに感じた。



「ギュオオオオオオオン!!!」
化け物の口から悲鳴だろうか、謎の音が発せられた。
「な、なんで...」
風と共に吹き荒れる言い様の無いオーラ。

みると、先程までの少し可愛気のある雰囲気など消え去り、まるで鬼神の如き気迫を放つ少女がいた。

ローブはボロボロになっているが、辛うじて使えるような状態。
だが、鎌は黒く美しいまま。

左脚の膝がありえない方向に曲がっている。
しかし少女は痛みを感じないのか、普通に歩き...いや、地面を滑って化け物に肉薄する。

そして、「はあっ!」と気合を入れた後、叫んだ。

「魔鋼烈波!」

その瞬間、携えていた鎌の周囲が歪んだ。そして少女が鎌を振り抜く、すると、なんと本来斬ったであろう範囲の何十倍もの範囲を斬り裂いた。

「ギュォアァ!」

堪らず化け物は横倒しに倒れる。

「天に逆らいし死霊よ!神を裏切りし悪霊よ!我らを侮辱せし怨霊よ!懺悔せよ!悔い改めよ!そして消え去れ!」

そしてトドメの一撃を振り抜こうとした。
が、そこで左膝の負傷が効いてきたのか体勢を崩し、倒れ込んでしまう。

...何やってんだよ、俺。
あんな偉そうに叫んだくせに何もできない。それが悔しかった。
「ギュゥゥゥ...」
唸るような声で、死神に手を伸ばす。

–––逃げるなら今だぞ

頭の中に誰かの声がながれる。

–––化け物の注意も逸れてるし、死神もこっちを構う暇などないだろう。

そうだ。
確かにもう自由に動ける。
逃げようとすれば逃げられるだろう。

–––そうだ。お前はここで死ぬ必要は無い。わかったらさっさと...

「ダメだッッッ!!!」

ビクッと震え、死神の少女がこっちを見てくる。
化け物も一瞬こっちを気にしたようだ。

–––バカめ。

そう言ったっきり、声は流れなくなった。

かわりに沢山のアイディアが頭に再生される。
–––落ちている瓦礫を投げる?

ダメだ、あんなデカイ奴に効くとは思えない。
–––まずは死神を助けて...

ダメだ、俺の力じゃ背負ってる間に殺される。
–––俺が引きつけて...

ダメだ、さっき叫んでもほとんど興味を示さなかったじゃないか。あいつら霊にとっては死神を喰らう事が目的だから俺よりあっちの方を優先するはずだ。
ん?まてよ...

–––魂は死神を襲う

ということは...

–––そして、死神の力を奪う

つまり...

考えがまとまり切る前に、気付けばもう走り始めていた。


4.

「バカッッッ!何故ここに来る!?この私と馴れ合ったつもりか!?」

死神が痛みに顔を歪めながら叫ぶ。
しかし、俺は止まらない。
不思議と、何をどうすればいいのか分かっていた。
走り寄り、彼女に跪く。

「な、なにを...?」
「いいから!...よし、多分これでいける...か?」
困惑する彼女には構わず、少女をジッと見つめる。
「ギュアアアア!!」
化け物は俺のすることに気が付いたのか、急に急いでこっちに向かってくる。

「おい、人間!逃げ...」
言い切る前に、俺は少女をだき寄せ、化け物に背を向けた。
そして次の瞬間、何か兵器を使ったかのような爆発が起きた。



「あれ?なんか変な音しなかった?」
「あっちの方工事とかしてたっけ?」
「あそこ、俺の同級生の通学路なんだよね」
「え!?大変じゃん!ってか朝も事故なかった?」


騒ぐ群衆の中、1人の白いフードを被った者が、ポツリと呟いた。
「あれほど忠告したのに。...まぁ、その選択で後悔しないことをいのるよ...」



視界が悪い。
メラメラと燃えさかる炎のせいだろう。

「き、貴様...人間...な、何をした...」

ローブが消え去り、ポンチョのような服を着た少女が震え声で言った。
「知らない。なんかこうなった。」
「わ、私に、その、なんだ...あー!もういい!」
「なんだってんだよ...あれ、俺、こんなローブ持ってたっけ...」
何故か俺はいつのまにか真っ黒いローブを身につけていた。

「そ、それは...!まさか!貴様ッ!?」
「あぁ、やってみようと思ってな。『◯リーチ』でも同じ様なことやってたろ?死神さん?」
「あ、あぁ、『ブ◯ーチ』なら私も知ってる...って違う!貴様はなんてことを...」

そう、俺があの時思いついた策は、
『死神の力を奪う』事。

あの一瞬
抱き寄せたと同時に俺は、死神の血液に触れていた。吸血鬼が血を吸うことで人間を吸血鬼に変えるという事を思い出し、試そうと思ったからだ。この騒動の中でいつの間にか出来てしまった擦り傷と血を触れさせたのだ。...かなりダメ元だったのだが。

まぁ無理でも自分を盾にするつもりだったのだが。

勿論本当に奪うつもりはない。
返せるんならしっかり返す。
...返せなかったらどうしよ...まぁ、力を奪い返させるなり、また色々方法はあるんだろう。

「ギィィュァァァ」

仲間外れが相当気に障ったのか、耳障りな雄叫びを放ちながら突っ込んでくる

「おいおい...元気だな」

先ほどの轟音は、俺が死神の力を奪ったときに、謎の黒いオーラが発生。そのオーラと、化け物の一撃がぶつかった音だろう。


「俺もこれで死神だからあれが使えるはずだ!くらえ!『魔鋼烈波』ッ!」

シーン...

あれ?どういうこと?
「...武器無しでどう使うつもりだ?」
「そ、そうだった...どうやるんだ?」
律儀に化け物はしっかり待ってくれてる。

「右手に魔力を溜める...といってもわからんだろう。とにかく...鎌を握ってる事をイメージしろ」

言われた通り、イメージする。
右手にすっげぇ禍々しいオーラを放つ鎌を持つ自分を。
「...!?」
少女の息を飲む音が聞こえる。顕現させられたのだろうか。
見ると...
「おい、なんで鎌じゃなくて剣が出たんだ?」
「し、知らぬ!...人間、貴様の思考に剣を持つ者への憧れがあったのか?」
ま、まぁ、キ◯トさんのファンだから...
「それが反映されたんだろう。まぁ、一度顕現させた武器の種類は二度と変わらんから良かったんじゃないか?」
「ギュオオォ...」
まぁ、そろそろやるか!

「喰らえ、『魔鋼烈波』ッ!!!」

シーン...

「...えー.....」
何だよ。何も出ないじゃねぇか...

「当たり前だ。これは我ら死神の技の中でも高難易度の技だ。とりあえず、練習用の技から...」
「そんな暇ねぇって!」

化け物が攻撃始めてきたから避けんので精一杯なんだよ!

「...不本意だが...おい、近う寄れ!」

『こっちこい』という風に手をヒラヒラさせる。

「無理無理!避けるだけで手一杯なんだって!」
「いいからッ!ジリ貧でやられるか、一か八かの勝負をするかだ!」

そんな言われたらまぁ...やるよなぁ...
ダッシュで彼女にむかっていき、お姫様抱っこの様な状態になる
「ば、バカ者めがぁ!!抱けなどと誰が頼んだ!?」
「語弊があるからやめろ!、で、何をすればいいんだ?」
近づくってんならこれでもいいだろう。

「まずは飛行だ!脚に魔力...いや、思いっきり力をいれて飛び上れ!」
魔力って概念はよくわからんが...
とりあえず飛んでみる。

「嘘だろ...」
「あぁ、これが飛行だ。」
「ひっく!!」

ジャンプは、最高地点に到達した瞬間自由落下を始める。しかし、何故か今回は落下せず、最高地点て浮いてる状態。しかし、跳躍しただけなので、低い。

「あ、お前地面滑ってるんじゃなくて、こんなしてた訳ね。」
「何をやってる!何回も跳躍し高いところまでいけ!」
「へいへい...」

言われた通り飛び上がっていく。

ビュン!

すぐそこを敵の右腕が通過。

確かに空中というのは避ける方向が増えるから回避しやすい。
...落ちないよね、これ

「...本当に不本意なのだ...くそ...」
少しそう呟いて、少女は俺の胸に額をつける。
「お、おい!?なにすんだ!」
「バカ者!...静かにしておれ。貴様、名はなんというのだ?」
「...『川上奏也』」
「わかった。...『我、冥界より出でし者なり。名はルミア。常闇の王、グラン・ベルゼブブに仕えしものなり。今、ここに玄界の住人、「川上奏也」と契約を結ぶ。』」
「は?契約?」

すると、黙っていろ。という風に睨まれる
...わかりましたよ...

「『合霊心会』」

まばゆい、いや、黒くどこまでも深い闇が視界を埋める。
その瞬間腕から重みが消え失せ、身体の内側が暖かくなる。

気付けば少女は消え去っていた。

「る、ルミアーーーーー!!!!」


「うるさい!!何故名前を知っておる!?」
「いや、だって、さっき言ってたじゃん...ってあれ?どこにいんの?」

頭に直接響く声。

どこにいるんだろうか。
と思った時、剣の中にこちらを睨みつける少女を見た気がした。

「貴様はイレギュラーとはいえ、普通の霊と実力は変わりない。だからこうやって契約を交わし、貴様と融合した。」
「融合?フュージョンみたいな?」
「...それとは違う。ただ、貴様の魔力に干渉し...なんというか、とにかくお前の魔力に私はなった、ということだ。」
「よく、分からない」

ただ、一つ言えること、...先程とは明らかに力量が違う。これなら『魔鋼烈波』も打てそうだ。

「打てんぞ。」
「あれぇ!?」
「貴様は天才などではない!自覚しろ!...融合している、という事は貴様の思考はこちらに筒抜けなんだぞ。」
「お前の思考は?」
「私の魔力は干渉してないからな。私自身がお前の魔力の状態と言えばわかるか?」

ズルっ!ズルすぎるよ!?

「ギュオ...ギャォォォ!!!」

完全に空気になっていた化け物が、頭上に玉を作る。
ちょうど、元気玉みたいな感じに。

腕がだんだん萎んでいってる、つまり、奴の魔力の最大のものだろう。

「見かけなどに騙されるな。所詮やつは人間を3人ほど喰らっただけだろう。」
「...喰われた人間は?」
「喰われて7日までなら大丈夫だろう。人騒がせ家出少年少女、無事発見というところか。...さて、迎撃だが...まぁ、脳筋タイプは決まってガードが脆いからこれで十分だろう。」

すると、俺の体が勝手にうごき、剣を構える。

「剣は初めてだ。」

ルミアはそう呟いて俺の体を操り剣を鞘から抜き取った。

「感覚を覚えろよ。『閃空斬』!!」

そう言い放ち、剣を振る。

すると、驚くことに斬撃が飛んでいき、化け物を深く切り裂いた。

「わかったか?次はお前が...何してる!?おい!、待て!」

なんでこうしたんだろう。
多分、凄くやりたかったんだ。
だってかっこよかったもん。
「『魔鋼烈波』」

ほとんど無意識につぶやき、剣を振った。

そしてその瞬間俺の剣からは禍々しいオーラと共に巨大な斬撃。

そして、化け物を完全に消滅させた。


5.A
物語なら、エピローグの部分だろう。

あの後、実はルミアが張ってくれてたという結界のおかげで、人目につくことは無かったが、轟音は響いていたようで。

だが、この結界というものがとても凄く、結界を解いた瞬間周りの壊れた建物も元通りだった。結界を張る前に戻しただけらしい。

そのルミアは、というと、戦いが終わった瞬間俺の視界を再び暗闇が包み、気付けば死神の力もローブも無くなっていた。

ただ、一枚の書き置き
それには

『お前が確かに霊にしては害はないのは理解した。恩も出来た。だから、上の者達にお前を生き返らせられないか掛け合ってみる。明日の朝、普通に起きられれば成功した、という事だ。』と。

ちなみに喰われていた人は、ルミアの見立て通り3人。男性2人に、女性が1人。失踪扱いだったようだ。とにかく無事だったようなのでよかった。

ちなみに俺は時々あれは夢だったんじゃないかと、思うことがある。

何回か、ジャンプをしたり『魔鋼烈波』と唱えたりした。
しかし、まったく発動しない。
何回か先生に、「大丈夫か?今日は保健室行ったほうが...」と、言わせた程だ。



今日の学校は散々だった。

妙な轟音がする、というから見に行ってみても、何もいやしない。

その寄り道のせいでこっぴどく叱られた。

...思えばあいつと出会ったのも遅刻で説教された帰り道だったな。
そう、そして、この辺りで戦って...

「喰らえ!『魔鋼烈波』!...出ないか。」


「何をやってる。武器を出さないと発動せん、と言わんかったか?」

聞こえるはずの無い声がした。

振り返った。

すると、いつもの様に黒いローブ姿の少女。

「なんだ、死神を見たかのような顔をして」

ニヤニヤ、と笑うそいつをみて、気付けば俺は駆け寄っていた。

「色々あってな。...しばらくこの世界に住むことになった。...知り合いがお前しかおらんから、な。...これからも、よろしく。だな」

そう言ってニカッ!っと笑う少女は、


死神のくせに、天使のように明るかった

–––了–––


5.B

「書き置きは、実はもう一つあったんだ」

再開する2人を見ながら呟く。

「読んでみようか。

『ありがとう』

だってさ。お熱いねぇ。」

ケラケラと笑う。

白いフードもユラユラと揺れる。

「え?何故ここにあるかって?だってさ、こんなの彼に読ませられないよ。ボクは彼に興味がでたんだから。」

うーん、と伸びをして、楽しそうに話す2人に背を向け、歩き出す。

「『死神』と、『普通の少年』が、ここからどういう物語を紡ぐかな。」

もう一度後ろを振り返り、呟く。

「奏也クン。
ボクは忠告したよ、それに...他の死神さんや天使達も来たらしいし。神だって君に興味を持ってるんだ。

...君はどこまで君でいれるかな」



仲の良さそうな2人が歩き出した時、既に白いフードの人物は忽然と消え去っていた。

–––了–––

目の前に死神がたっていた

感想、もらえたら嬉しいです

目の前に死神がたっていた

高校生男子、川上奏也はある日ひょんなことから死神と出会う。 その死神はどうやら奏也の魂を狙っているようで...? 死神の少女と、少年の織り成す物語。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-10

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