気持ちのズレ

気持ちのズレ

あなたがこの世界に夢や希望を抱き、現実というものに縛られていなかった時。

あなたはこの世界と未来に、何を思い描きましたか。

そしてあなたが今いくつでもいいです。
現実というものに縛られているという感覚ができたら。

あなたは今。
思い描いた未来を歩めていますか。

派遣社員の私。

仕事一筋だった過去の自分が一番嫌悪した派遣社員。
正社員でいた頃は無理をして、自分に鞭打って遅くまで沢山の仕事をした。反動で体も壊したし精神も少なからず蝕まれた。

反動なのかなんなのか、それとも居心地が良かったのか。
上の立場に早々と上がって、部下が自分よりも長く勤続している歳上で。部下のミスは全て自分のもので、納期に追われる生活をして体を壊し会社から離脱した私は、自分の好きな場所が勤務地で時給もそこそこで。人の入れ替わりも激しくそこまで関わる必要もなく。そして何より責任のない派遣社員に落ち着いた。

1年近くその会社に勤務して、仲良くなれる人もいたし歳の近い人も沢山いて、ほぼプライベートに踏み込むような関わりもなく気持ちも楽に過ごせた。その中でも段々と詰められる成績不信に息苦しさを感じていた。そもそも成績不信ではなく、会社そのものが業績不振なのだ。大した職歴がない自分でも、名ばかりの大手企業の人事采配は如何なものかと呆れるほどだった。でも、それを正そうとは思わない。そんなことに精神を削っていられない。そんなふうに考える自分に嫌気がさす。

あぁ、いつから私はこんなに’’つまらない’’人間になってしまったんだろう。
また一つため息が出る。

仕事が終われば素敵な景色と好きなお店、適度に人がいない遠回りした帰り道で、お気に入りの大きくて綺麗な本屋さんに行って本を物色して。
併設した好きなコーヒーショップでコーヒーを買ってあてもなくタブレットやスマートフォンを眺める。素敵な空間で、ゆっくりした時間を過ごせる自分が好きだったから、モヤモヤを家まで連れ帰る必要はなかった。

それでも、終わりは来た。

どんなに自分が好きでも、居心地が良くても。
会社である以上は業績が必要で、業績をクリアしても自分より若い管理職にとって知識量や仕事の考えが自らより多い派遣社員は使いにくい。そんな理由で私ののんびりした時間に終わりはきた。

通告されて1ヶ月。
あっという間だった。親しい人にすら、1週間前に退職を伝えるのが精一杯だった。


そこから1週間。
驚くほど多くの人に感謝され、悲しまれ、自分のしてきた仕事の姿勢を褒められた。
さほどショックでもなかった私の心に何か痛むものが生まれた。
沢山の人と話し、沢山の人と笑って、一部の人とご飯を食べて、一部の人と仕事終わりにお酒を飲みに行くこともあった。だけど、そういうのって当たり前にある社交辞令だと思っていて正社員であったときは大きなイベントの時以外、重要視するものではなかった。

今まで、私はこんなに退職を悔やまれることはなかった。
それは、仕事をする上で必要なのは仕事だけだと、’’それ以外’’のことをないがしろにしてきた結果だと気付いた。派遣社員として仕事をする上で最低限自分のルールを貫き、それが煙たがられる結果だっとしても、同調してくれる人が沢山できて、何より’’それ以外’’を大事にした結果が、こんなにも大切に思われる結果になった。

最後の勤務が終わり自宅に着いてから長文で送られてくるメッセージに、涙が出た。
自分に嫌気が差す小さなため息は、もう止んでいた。
次に仕事が決まったら仕事は勿論、仕事以外の事を大切に、周囲の人と関わろう。


久しぶりに早起きをして、遅くに帰ってきて寝るだけだった自分の部屋を片付けた。
クローゼットからスーツを出した。
今日はクリーニングにいってスーツを出して、自分の好きな仕事、もしくは好きになれそうな仕事を探していこう。

嫌悪していた雇用形態に何かを教えられ、こんなはずじゃ無かったという自分の気持ちのズレに大切な事を気付かされ、前に進む勇気を貰った。

合理的な自分が、寄り道も必要だと考えるようになった。


気持ちのズレは時に必要なものなのかもしれない。

私は、前に進める。




fin.

気持ちのズレ

思いの丈を気ままに更新していきます。不定期更新です。
少しでも同調できたり、読んだ人の気持ちに触れられれば嬉しいです。

初めてまともに書いた作品なので色々と拙いですが、精進して行ければと思います。
閲覧ありがとうございました。

気持ちのズレ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-09

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