彼。

吾塚

SFではありません。

タイムマシン

タイムマシンが完成した!


 そう研究所に呼び出されたのは、これが初めてのことでした。


 莫大で巨額の研究費は親のお小遣いで、よくわからない白い建物―研究所―は親のクリスマスプレゼントです。彼の存在は親の道楽で、おそらく今回の研究も親の暇つぶしでしょう。


 私は彼の研究所に行きました。


 少し遠いので、買ってもらったばかりのランドセルが重かったです。


 扉を開けました。


「見てくれ、タイムマシンだ!」


 彼はにっこりと笑いました。


 何やら大量の電線やら機械が取り巻いていましたが、私はこの分野の知能を一切持ち合わせていないので全くわかりません。


「本当にタイムマシンなの?」


 私は訊きました。


「それを今から証明するんだよ」


 彼は答えました。


 彼は大きな箱を取り出して言います。


「初めから人間を飛ばして歴史を大きく変えてしまっては困る。帰れなくても困る。だからね、動物を送るんだ」


 彼は古い新聞のデータベースをディスプレイに映し出します。


 少し長い動物の名前を打ち込んで、一番古い記事をクリックします。それは、或る島にしか生息しないその動物を発見した時の記事でした。


「今から、この動物より強い個体を百匹、これより昔のこの島に飛ばすんだ」


「何が起きるの?」


「まあ、見てなって」


 大きな箱はタイムマシンに取り付けられて、消えました。


 何も起きません。


 ディスプレイを見ました。男性が登山に成功した記事です。


 何かを検索したようですが、データベースは0でした。


 彼は動物を送って、何を証明しようとしたのでしょうか。


 彼は首を捻りました。


「本当に成功したんだろうか。タイムマシンを戻してみよう」


タイムマシンには口を開けた箱が入っていました。中に偶然、送った動物が残っていました。見ると、見たこともない動物を捕食しているところでした。


「これはきっと、人類に発見されることなく、過去に絶滅した動物に違いない!」


 彼はようやくにっこりと笑いました。



「見ろ!実験成功だ!」






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透明人間

透明人間になる発明をした!

 

 そう研究所に呼び出されたのは、十年ぶりのことでした。確か、以前はタイムマシンを作っていました。絶滅した動物を見ることが出来ました。


 莫大で巨額の研究費は親のお小遣いで、よくわからない白い建物―研究所―は親のクリスマスプレゼントです。彼の存在は親の道楽で、おそらく今回の研究も親の暇つぶしでしょう。


 私は彼の研究所に行きました。

 

 彼と、彼の助手がいました。

「今から助手が透明人間になるんだ」

 彼の助手は沢山の機械に囲まれていました。

「昔のように動物実験はしないの?」

 私は訊きました。

「そうしたら透明人間じゃないじゃないか」

 彼は笑いました。

 そういうものなのかもしれません。生憎と、私はこの分野の知能を一切持ち合わせていないので全くわかりません。

 彼の助手は機械に飲まれて見えなくなりました。機械が元に戻ったとき、人の姿はありませんでした。

「このペンが持てるか?」

 彼が言うと、彼の手のペンは宙に持っていかれました。

「持てます」

 彼の助手の声がしました。

「実験成功だ!」

 彼は笑いました。

 

 

 数日後のことです。

 珍しく忘れ物をした私は、再び研究所に行きました。

 扉を開けると、泣き声と叫び声がしました。

 彼ではありません。彼はもう次の研究に取りかかっているようです。

 そして、一本のナイフが宙に振りかざされました。

 何もないところから赤い血飛沫が噴き出す…それは不思議な光景でした。

 笑い声がします。

 ああ!赤だ!あかだあかだあかだあかだあかだあかだあか……

 ふつり、と笑い声が止みました。

 透明人間はそうして自殺しました。

 

 きっと、笑いながら死ねるのは幸せなことなのでしょう。






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老いない薬


老いない薬を完成させた!
 

 

 そう研究所に呼び出されたのは、二十年ぶりのことでした。以前は透明人間を作っていました。不思議なことに血は赤かったです。


 莫大で巨額の研究費は親のお小遣いで、よくわからない白い建物―研究所―は親のクリスマスプレゼントです。彼の存在は親の道楽で、おそらく今回の研究も親の暇つぶしでしょう。


 私は彼の研究所に行きました。

 扉を開けてみました。

 彼の手には、透明な液体が入ったフラスコがありました。

「老いて死んでしまっては研究が続けられない。だから老いを止める薬を作ったんだ」

 彼はいつもより興奮しているようでした。

 私が何か言うよりも早く、彼は透明な液体を飲み干しました。

 彼はその場に倒れました。

 老いないということは、成長しないということです。

 爪も髪も伸びません。

 細胞が死ななくなるということは、新しい細胞を作らなくなるということです。血液が死ななくなるということは、新しい血液を作らなくなるということです。

 一年経っても十年経っても三十年経っても、彼は確かに老いませんでした。時が止まったように老いませんでした。

 しかし、二度と目を覚ますことはありませんでした。

 私はこの分野の知能を一切持ち合わせていませんが、彼の代わりに私が言いましょう。

 

 

 実験は成功したようです。

 

 

 

(終わり)

彼。

2012年10月30日 他サイトにて公開。
2015年5月9日 修正。

彼。

「タイムマシンが完成した!そう研究所に呼び出されたのは、これが初めてのことでした…」 「私」が見る「彼」の研究、「あなた」には、どう見えますか?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-09

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  1. タイムマシン
  2. 透明人間
  3. 老いない薬