或る喫茶店にて

※縦書き推奨

緑の林檎がしゃくりと鳴った

傍らの猫がみにゃあと鳴くと

定刻を()らす鐘がからんと鳴る

逢魔が刻の朱い濃紺が射した

黒い影が歪に真直ぐ伸びる

思っておりました、ちょうど。

想って寄りました、ちょっと。

かたりかたりと風に揺られ蝶番

語り語りと喋々喃々

もう宵でしょうか。

もう良いでしょうね。

くゆらせた煙草の(けぶ)り三日月へ抜けゆく

洋灯(らんぷ)ちりちり(ひひる)呼ぶ

今宵も散り散り黒い濃紺

それでは、また。

それでも、まだ…。

どうなさいましたか?

月草の花飾(こさあじゅ)ふるると揺れた

左様なら。

さようなら。

独りぽっちに綺羅また舞い更けてゆく


―或る喫茶店にて

或る喫茶店にて

2012年10月20日 他サイトにて公開。

或る喫茶店にて

喫茶店、ことば遊び。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-08

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