短歌集/花つつじ

窓すぎる ツツジが丘の花陰に
手を振り消えゆく 君が幻

(2022年謡止めの一首、また来年に)

ツツジ花 散りても尽きぬこの想い
きみ面影の傍らに咲く

夕暮れの丘に燃え行く紅ツツジ
君は夕空我はこの丘

我を捨て夕空に消えし君なれど
何故に振り向き我に微笑む

(2022/05/07)


撥を握り男勝りの雄姿なり
ツツジの空に放つ太鼓よ

雨上がり パートに出てゆく妻送る
ツツジの花にも涙のしずく

我はまた 百姓生まれの商売育ち
勤めの身にはなれぬ性分

妻もまたサラリー家庭の育ち故
商い人には慣れぬ身の上

赤と白 混じりてピンクのツツジの花よ
人の心はそうもいくまじ

(2022/05/05)


無念なり北の海に散りし人々
ツツジの花もこの雨に泣く

残された告白哀し縁の糸
来世で結ばん共に旅立ち

(2022/05/02)


もの思いに耽る乙女の行きすぎて
指に挟みしツツジ放ちぬ

認知を患いし人初夏の陽を浴び
今日も我が名を問うて去りゆく

西国の寺を訪ねて京巡り
疲れてなおも我に八つ橋 

このところ 日に三度も衣替え
ツツジ咲けども冬の日もあり

(2022/04/29) 


あの子が待ってる ツツジが丘のバス亭
思い切って言おうかな おはようって
 
あの子がいなくなった バス停
満開のツツジの傍で ベンチだけが雨に濡れている

(2022/04/25)


私の様に ほらツツジの花には棘がない
 でも食べないで 綺麗だけれど 毒がある

緑の野にどこまでも続く紅白の
ツツジの花の夢の回廊

日を浴びてなお鮮やかに嬰児の
背丈を覆うツツジ麗し

香ばしき屋台の煙の彼方には
紅白ツツジの源平合戦

鮮やかなツツジにカメラを向ける人
一昔前の僕を見るよう

衆目のツツジに移りし様を見て
蒼き桜の葉は騒ぎたり

(2022/04/24)



源平の争うが如く紅白の
 色競い合うツツジの花帯び

桜散り ツツジ咲きそろう町中を
 何事もなく人は過ぎ行く

同じ人 ツツジの花輪に囲まれし人
 砲火の雨に逃げ惑う人

(2020/04/22)


妻もまた ツツジの咲きし他国の丘で
我を想いて涙するかな

今生の別れとなるも ますらおに
生まれしからは 国守らんと

生きてくれ 君だけでもと 突き放す
さすがに我も 涙隠せず

砲声の中 我を残して妻の列車は 
夕日目指して消え失せにけり

(2022/04/18)

 

俄か雨に 濡れて落ち逝く 紅ツツジ
ひととせまでと 緑の幕引き

ツツジ花 赤白ピンクと萌えねども
実を残すことなく雨に散りゆき

我もまた 実らぬ恋に泣きぬれて
ツツジの花と 共に散りゆく

(2020/05/06)



山裾に 紅燃ゆるツツジ花
雨降り来れど なお勢いを増し

山影に隠れて咲くは紅ツツジ
燃ゆるその身を抱きて誰待つ

紅に燃えるさなかに身を染めず
白きツツジの花は輝き

紅ツツジ染めよ乙女の白い頬
今から囁く愛の言葉に

紅と白 混じりてピンクの恋の色
ツツジの花よ二人をそうして

この卵 私が焼いたの味はどう
ツツジの木陰であの子が言った

いいのかな 頷きそっと握った手をば
放さず歩いた紅ツツジの丘

誘えども つれない返事に川岸の
ツツジの花さえ知らぬふりして

赤白と色鮮やかに咲きそろう
清楚なツツジも毒をもつ身よ

君知るや 白き指にて紅ツツジ
手折りて見せる乙女心を


(2020/04/29)



主来ぬ 岸に真白きツツジ花
優しき雨に 何を偲ぶや

雨ごとにさらに色増すツツジ花
晴れの明日には如何に輝く

耳元で好きよと囁く君を背に
ツツジの丘を濡れて走りぬ

本当は ピンクが好きなの赤よりも
慌てて折し桃色ツツジ

(2020/04/20)


公園の遊具の影の幼子は
ツツジの花にそっと手を伸べ

彼の人の庭のツツジの生垣に
交わす手紙を挿して隠しぬ

密やかな 夜の雨戸の開け閉めを
知るはツツジの庭の花のみ

夕暮れて 雨戸の隙間の紅ツツジ
共に濡れなん寂しき一夜を

(2019/05/07)



幻の 君を抱きしめ見る夢に
永久に連なる紅ツツジの丘

薄紅のツツジのような美しき
妻を得た君 ホームレスの我

白き中に われ紅ツツジただ一輪
恋慕隠せぬ早熟の春

まだ青き蕾のはずが唇に
紅さす少女の春のときめき

濃い紅にいずれは白も染められて
浮世の春に咲く身の上よ

紅さして ときめく春に燃えつきぬ
我もかつてはこのツツジ花

櫻追い 散りたからとて舞い戻り
あと咲きツツジに寄る虫のよさ

(2019/05/04)


秘めし恋 恨み辛みを聞きながら
赤きツツジの燃ゆる夕暮れ

あれっきり何の便りも来ぬ人を
待つも悔しき紅ツツジの宿

喜びもわずか一夜の明けガラス
ツツジの陰に消えてゆくひと

(2019/05/04)



紅き中に混じりて我は真白なり
命燃ゆるも心清らに

たおやかな緑の髪に紅のほほ
白きリボンを風に吹かせて

眼を伏せる花の乙女を背において
駆け上がりたる緑風の丘

君が背に揺られ眼を伏せ登りたる
緑の丘の燃ゆるツツジよ

(2019/05/02)



幼き君を 涙ふきふき見送りぬ
紅ツツジの咲く春のあの丘

お下げ髪 振り向く君の肩に揺れ
結びしリボンの白きその色

時流れ 振り返りゆく面影を
偲べば時雨ゆく紅ツツジの丘

(2019/04/24)


霞去り 肌に心地よき 風渡り
陽のまぶしき朝にいざや目覚めん

我はツツジ さくら桜の夢覚めて
朝日まぶしき緑野に咲く

戯れに我に浮気の5月の風よ
くちづけすまじ命かけずば

(2019/04/23)


(これって、今風?)

このツーショット あなた何処見てるのよ
ツツジの花なんてごまかさないで

ツツジの花を撮る振りして
あの子の横顔にそっとシャッター押した

今日の君の態度と返信のメール
どっちがホントかはっきりさせてよ
あの紅白のツツジの花みたいにさ

ふと目に入ったふたりの姿
思わず隠れたツツジの花影

君に嫌われちゃったかも
返りの電車の 窓に連なる満開の
ツツジの花見ながら思った

想いがすれ違ったちぐはぐな一日
来なければよかった庭にツツジ咲いてた

新学期に咲く躑躅の花に
あの日の思い出甦る忘れたいのに

此の花なあにって聞く君の瞳に
僕はどう映っているのかな

これツツジっていうんだ綺麗ね
でも君の方がって言いたかった


(やはり、五七調の方が・・・)

橘の甘き匂いに二日酔い
醒ますはツツジの清楚な香り

行く春と夏の間にツツジ花
命溢れる季節の幕あけ

桜行き寂しき庭の鮮やかに
緑かき分け咲く躑躅花

初夏の陽の眩しき木陰に立ち寄れば
緑風清かにツツジ薫りぬ

遊び疲れ ツツジが丘の夕暮れに
見し街の灯よ 君の瞳よ

あどけなき君の笑顔は見えねども
ツツジの花は今もこの丘

葉桜の木陰に眩しき陽を避けて
座ればツツジの花頬に触れ

花濡れる ツツジの丘の通り雨
寄り添う木陰に我が心は震えて

制服の白きブラウス濡れ染めし
ツツジの雨の淡き想い出

花濡れし ツツジの傍を駆け抜けて
君は我が身を上着で包みぬ

新緑の光と影に鮮やかな
ツツジの花の帯は続きぬ

咲き初めし白きツツジの一枝を
微笑む君の緑の髪に

純白を好むと言いし老い人の
植えしツツジの花は開きて

若き母の 矢羽根の着物に通り雨
躑躅(つつじ)の丘を我と彷徨い


蒼き空に 縁の髪の乙女待ちて
躑躅(つつじ)の花に (ほほ)を寄せ合い


青き春に 柔らかき乙女の手をとりて
躑躅の雨に 濡れて走りぬ


淡き春に 桜の色の乙女ありて
縁の髪に触れ 萌えし日々


(たん)()の 躑躅の向こうに淡路島
輝く初夏の海と花々


淡ノ輪の 躑躅の花の雨あがり
淡路の島へ と虹の架け橋


泉州の 浅香野山(あさかのやま)の花つつじ
背丈(せたけ)(はるか)に越えて(つら)なり


浅香野に 源平乱れて躑躅花
張る陣幕の 長き連なり

短歌集/花つつじ

短歌集/花つつじ

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-05-04

Copyrighted
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