恋に焦がされて
夜の匂いをかぐ。
眩い電灯。道路を照らす電灯。
バイクのテイルランプ。
あたしは彼の単車の後ろにまたがった。
すずしい風。
あたし達だけの世界
いつもの日常とかけはなれた、ロマンチックな世界
出来ることなら1970、80年代の頃に生きたかった。
あたしはその頃の事を知らないけれど今よりもたくさん子供がいて、あたし達みたいなのもいて、きっと“ホットロード”みたいな事もあったかもしれない。
今は平和。だけど、あたし達にはもの足りないの。
真っ赤な空と沈黙があたしを孤独にさせる。
「修司!」
単車にまたがったまま、ぼーっとしていた修司がこちらをみた。あたしは苦笑しながら
「あのね、あたしと同じ学校の子で単車に乗ってる子がいないんだ。」
と言った。
「、、、」
何も言わない修司に居心地が悪くなって
「あたし達って時代遅れなのかな。」
とぽつりとこぼした。
修司はそっぽを向いて
「そうかもな。俺ら生まれてくる時代間違ったのかもな」
と言った。
その横顔は寂しげだった。
チャイムがなり、ガタガタと音をたて人の集まりを作った。
結実が後ろに向いた。
「テスト、出来た?」
「うん、一応?」
最近の話題はもっぱらテストの事。あたしはこんな平和な生活してるけど、修司は今何してるか分かんない。仕事してるかな。
「そういえば、薫は夏休み予定あるの?」
生憎、修司とはそう言うはなしをしていないからあたしは夏は暇人だ。
「何にもないよ」
「だったらさ、海行かない?」
「海?」
「そう。私と夏海と穂香と由美で行くんだけど、一緒に行かない?」
3人とも少ししか話した事ないけど暇だし行こうかな。
「うーん。行く。」
「なら決まり。日にちとかはまた集まった時に話そ?」
そう言って由実は席を立った。
恋に焦がされて